出逢い。
雨の日だった。
最後の客を見送って、あたしは店の看板の電気コードを抜こうとした、その時だった。
「あっ、あのぉ~~~麗乃さんという子は、ここのお店の子でしょうか・・・?」
「あぁ、麗ちゃん・・・ いますけど先週辞めました。」
「あっあっあっ え~っと う~んと・・・ すいません、すいません」
悪い癖なのだが、職業柄足元から人を見てしまう。
というか相手があまりにも背が高かったから140cm台の私には圧迫感がすごかった。
どこのだか分らないが、雨と泥で薄汚れた白いウォーキング用のスニーカーに、だぼだぼのジーンズ。きっとウェストにはゴムが入っているはず。
萌え系のアニメの絵が描いてある白いTシャツに、何でか分らないけどスーツのブレザー。
そして、牛乳瓶の底みたいな眼鏡に肩までかかる黒い髪。
アポロ帽。某電気屋の紙袋。
眼鏡のフレームが顔の半分を占めていたので、その時は顔の表情までは見受けられなかったが、あたしの目の前にいる大男は間違いなく世間ではオタクと呼ばれている人だった。
あたしは男に言った。
「麗乃は、もうこの業界には多分いないと思いますよ。良かったら他にも可愛い子たくさんいるので是非今度来て下さいね。」
”泡姫天国 スカーレット 新橋店 瑠璃子”
そう書いた名刺をいつもの営業スマイルで男に渡した。
男は名刺を珍しそうに見た。そしてポケットから定期入れを出すと大事にしまった。
そして何か言いたそうに唇を動かしたかと思うと、回れ右を向き駆け足で夜の繁華街に呑み込まれていった。
これがあたしと男との出逢いだった。