リジューの聖テレーズは祈りによって多くの奇跡を起こしてきましたが、その中でも特に大きな奇跡について紹介いたします
その奇跡は1910年ごろにイタリアのガリポリにある女子カルメル会修道院で起こりました
その頃、このカルメル会修道院は大きな財政の危機に見舞われており、多額の借金を抱えていた上に修道院の建物はかなり老朽化していて建て替えが必要になっていました
多くの場合、食事の時間にも食べる物がなく、修道女たちは食堂の代わりに聖堂に行って、全人類のために食べ物(ご聖体)と避難所となられた方のもとで聖なるロザリオを祈っていました
この毎日の祈りの中で、修道女たちは若くして聖性の香りを放ちながらこの世を去ったフランスのカルメル会修道女・幼きイエスのテレーズに三位一体への神への取次ぎを求めてノヴェナ(9日間の祈り)を祈ることにしました
当時、修道院の院長であったマリー・カルメラ修母は借金などの修道院の多くの問題についての心労のために病気になり、床に着いていました
彼女はその時に起きた出来事についてリジューのカルメル会に手紙で報告しています
「1月16日、私は非常に気分が悪く、また深刻な悩みの内に夜を過ごしていました
時計がちょうど朝の3時の鐘を打った時、私は少し呼吸を楽にするためにベットに身体を起こし、それから眠りに落ちました
夢の中で、私は毛布が持ちあげられ、誰かが手で優しく触れるのを感じました
私はそれが、私を介助に来てくれた姉妹(修道女)のうちのひとりだと思いました
「毛布を取らないでください
私に空気を当てないでください
私は(全身に)汗をかいているので、(空気を当てて身体を冷やすのは)よくないことです
死んでしまうかもしれません」
すると、聞いたことのない声がこう言いました
「いいえ、私の姉妹よ
こうすることは良いことですし、あなたの命を奪うこともありません
聞いてください
主は天にあるものも、地にあるものも、そのどちらをも利用されます
ここに500リラ(リラはイタリアの通貨)があります
それであなたは修道院の借金を払うことができるでしょう」
私が修道院の借金は300リラであることを伝えると、その声はこう答えました
「それは(残りの200リラは)余分ですが、あなたのこの修室にお金を置くことはできません(※修道院の修室にお金を置くことは禁じられていた)
ですから、私と一緒に来てください」
私は
『どうすればこんな(病気の)状態で起きることができるだろうか』
と考えました
すると、彼女は私の考えを見抜いたかのように笑って言いました
「バイロケーションが起きるでしょう」(※バイロケーションとは2か所に同時に存在することができる超自然の恵み)
すると、私はすぐにその若い姉妹と共に修室の外にいる自分を発見しました
その姉妹のヴェールとマントから天の光が輝き出て、私たちが歩いていく廊下を照らしていました
彼女は私を一階にある部屋に連れて行き、修道院の借金を記したノート(会計のノート)の入った小さな箱を開けさせました
それから彼女は私に500リラを渡しました
私は驚きと喜びと感謝で彼女を見つめ、こう言いました
「私たちの聖なる母さま(アビラの聖テレサのこと)!」
すると彼女は優しく言いました
「いいえ、姉妹よ
私は私たちの聖なる母さまではありません
私は神のはしため、リジューのテレーズ修女です
今日は天国と地上で、イエスのみ名のお祝い日です!」
驚きと感動で、私はもう何を言ったら良いのかわからなくなりました
私のヴェールに手を置き、それから私を優しく抱きしめた後、天使のようなこの姉妹は立ち去って行きました
「待ってください」
私は言いました
「あなたは道を間違えるかも知れません!」
すると彼女は天使のような微笑みを浮かべて答えました
「いいえ、いいえ
私の姉妹よ、私の道は正しいです。
私は間違っていませんでした!」
私は目を覚ましました
私は疲れ果てていましたが、自分を鼓舞して立ち上がり、歌隊所に行ってご聖体を受けました
姉妹たちはいつもの違う私の様子を見て、医者を呼んだ方が良いのではないかと言いました
それから私が香部屋に行くと、香部屋の係の2人の姉妹が私にどうしたのか、と尋ねました
この2人の姉妹も(様子がおかしいのを見て)、医者に来てもらうようにと言いました
それをやめさせるために、私は夢で見たことに圧倒されているのだと答え、簡単に夢の内容を説明しました
2人の姉妹はその箱を開けに行くように言いましたが、私はその夢がとても信じられない、と答えました
けれども結局その姉妹たちの説得に応じて、私は部屋に行ってその箱を開けてみました
すると本当に、奇跡的にその箱の中に500リラを見つけたのです!」(1910年2月25日の手紙より)
※ 1911年1月16日(ガリポリでのテレーズの示現1周年記念日)ガリポリの近郊にあるナルドの司教ニコラス・ジャンナタシオは、テレーズが示現の中で立ち去る時に言った「私の道は正しい」という言葉は、
帰り道を間違えて迷うのではないかと心配したマリー・カルメラ修母を安心させるために言われただけではなく、それ以上にテレーズが強く提唱した「信頼と委託の道」という霊的な意味で受け取られるべきである、という公式な見解を発表しました
ガリポリのマリー・カルメラ修母の写真と
リジューカルメル会への手紙