私は最近起こるブレーキとアクセルの踏み間違いの交通事故に関して、私の個人的見解を述べます。なお、これは専門家としての意見ではなく私が大昔の若い頃、自動車に少しだけ詳しかった素人の意見であり推測ですので予めご承知おきいただきたく思います。

私は昭和63年末まで7年間ほど大手自動車メーカーの車体設計部で主に内装部品の設計を担当しておりました。しかし現在は、自動車や機械とは全く関係のない小さな会社を経営しております。

その会社で一昨年秋にプリウス(新車2017年式)を購入し、運転するたびに当時から少し違和感がありました。

弊社の購入したプリウスは、燃費は想像していた以上に素晴らしく優れ(平均27km/l)、走りも満足しており、私や社員が2年半程利用してきましたが、これまでブレーキとアクセルの踏み間違えなどの問題は全く起きておりません。

以下述べることがこれまで報道されてきた交通事故との因果関係を実証するものではないとは思いますが、私なりに少々調査した内容及び感じたことを報告します。

 

私の当プリウスを運転したときの違和感は、ブレーキペダルがやや遠い、左にレイアウトされているなと思うことでした。

私は運転するときに通常、右足踵をアクセルペダルの数センチ左において、ブレーキペダルを踏むときは、主につま先側を左に回転するように移動しペダルを踏むのですが、ブレーキペダルが遠く感じる、踵を中心として右足つま先側を左へ回転させてもブレーキペダルを踏みづらいという感覚がありました。

右足で踏むのに、ブレーキペダルがちょうど体の中心付近に位置しているように感じました。

ただしそれは微妙な感覚で、自動車の設計などの仕事を昔行っていなかったらおそらく気づくことはないかもしれない、というレベルでした。

そこで、私はアクセルペダルとブレーキペダルの位置について、私の身近にある数車種のみについてペダル周りの測定をすることにしました。

 

            h1                h2      w

カムリ     177      99           50

ベンツC200        153                58           50

BMW525i     130                57           50

レクサスIS300h  178                55           55

プリウス          205      90           50

 

以上は全て右ハンドル車です。因みに

h1はブレーキペダル右端から右ダッシュサイドの内張り表面までの空間の長さ(mm)、

h2はアクセル中心から右ダッシュサイド内張り表面までの空間の長さ(mm)、

wはアクセルペダルの幅(mm)の測定結果です。

メジャーで計測していますので若干の誤差はあります。

私がプライベートで乗っていた(または今も乗っている)車なので測定車種が少なく、しかもほとんどがFR車なのですが、他に測定できるFF車が無かったのでご容赦ください。

 

これを見ておわかりのように、プリウスは極端な数字ではないものの、アクセル、ブレーキとも左側(車のセンター側)にレイアウトされているのがわかります。(h1の長さが長いほどブレーキペダルが左にレイアウトされているものと考えられます。)

しかし、プリウスのみ極端にレイアウトが異常と言えるものではないように思われますが、私が測定した車でh1が200mmを超えているのはプリウスのみでした

弊社社員の何人かが運転しても全くその違和感がないというものもいれば、私と同じようにそう言われればブレーキペダルがやや遠いと感じるものもいる程度です。

私は運転時、右足の通常の位置で、加速中は右足つま先小指辺りがダッシュサイド内張り表面あたりに置くことが多く、そうするとブレーキングの動作に160~170mm程度右足を左に移動しないとブレーキを踏み込めないということになるためか、やや操作しづらいと感じます。

また今回、測定したものは右側のダッシュサイドの内張りとの空間長さですが、本来はシート中心のヒップポイント(設計上の運転者が着席するお尻の中心、通常シートの中心)からのX(車の幅)方向の長さを測定しないと、運転者が正常に着席したときのペダルの適正な相対的位置は評価できないと考えます。

しかし、このような簡易的な測定ではありますが、その傾向は概ねつかめるのではないかと考えました。

 

私は、この数年のブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故原因は、上記ペダルレイアウトによるものと確信しているわけではなく、その原因の一部である可能性があるのではないか、また上記ペダルレイアウトと下記の複合的な要因が影響して事故が起きているのではないかと考えています。

ただ、人間の感覚は人によって異なるものの、30~40mmのX(車の幅)方向のレイアウト差というのは、時として運転者によっては大きな影響を与えてしまうものではないかとも考えます。

ご存知のように、マニュアル車が多かった時代はクラッチペダルが左側にあったのでブレーキ、アクセルペダルとも右にレイアウトせざるを得なかったものの、現在ほぼAT車ばかりとなり、両ペダルが昔の車より左にレイアウトされる自由度が大きくなり、実際に多くの車で両ペダルとも左へレイアウトされる車が増えたのではないでしょうか。マニュアル車時代にアクセルとブレーキの踏み間違いの事故は無くはなかったでしょうが、今よりずっと少なかったものと思われます。

左足は使わず、同じ右足で全く性格の異なる両ペダルをしかも手探り、いや足探りでブラインド操作することは、ただでさえ危険なことと思われるのに、両ペダルのレイアウトが左にいけばいくほど危険が増幅しているように思えます。

 

以下これも推測ではありますが、運転者のシートへ座ったポジションが良くない方向(お尻の位置がセンターより右側に座る、お尻の位置はセンターではあるけれども右側へ少し回転して座る、高齢者で認知症や右足の特に足首や膝の柔軟性に問題がある)等が重なってしまうことで、ブレーキペダルが相対的に運転者の右足から更に遠く離れてしまうことがペダル誤動作の事故原因に関係しているように思います。

 

これらの条件が重なってしまったとき、運転者はこれまでの経験により、自分の運転姿勢がペダルに対してどのような相対的位置にあるかを正確に把握することが困難な状況となり、このあたりがブレーキであろうと危険な判断を無意識に行い、いやブレーキペダルがきっとここにあるはずだと誤った確信をすることにより、アクセルペダルを踏み続けてしまう、と思えてなりません。

上記の通り、計測した車種は少ないですが、欧州車は2車種共両ペダルはしっかり右側にレイアウトされているからか操作しやすく、これまでこれらの欧州車がペダルの踏み間違えで暴走したというニュースはあまり聞きません。欧州車、中でもドイツ車は、車づくりにおいて日本車より歴史が少し古いからか、人間工学的にも守るべき基準をしっかり守って設計しているような気がします。

 

ところで、2016年末福岡でタクシーのプリウスが大きな病院に突っ込み複数の死傷者がでてしまう悲惨な事故が起きました。このタクシーの運転手は事故現場の数百メートル手前で路上左側に駐車して公園の公衆トイレに行き、車に戻ると右ドアを完全に閉めない状態で徐々に発進して加速してしまいブレーキが効かなかった、とドライバーは証言されているようです。

これも想像ではありますが、運転手は公衆トイレに立ち寄った後、シート右側に着席または右を向いて着席してしまい、また運転席側のドアをしっかり閉めずに車を発進させ、運転手の注意が散漫であったことや、やや左に遠いブレーキが更に遠くなってしまったことで、この位置がブレーキのはずだと思い込みアクセルを踏み込んでしまったのではないかと推測します。タクシーの運転手であるプロドライバーでもちょっとしたミスで重大事故を起こしかねないものです。

 

私は、自動車会社として当然法的な責任は全てクリアされているものとは考えますが、上記のような仮説に基づいた検証・実験を行っていただき、必要と判断されるなら早急に対策を行っていただきたいと考えます。

(既に一部車種については、アクセルを誤って踏み込んだ場合の急発進の防止装置などについては対策されているようですが)

 

以下は私のアマチュアの勝手な対策案です。

プリウスの場合、右ハンドル車でアクセルペダルをあと25~30mm、ブレーキペダルをあと40mm程度それぞれ右側にレイアウト(またはブレーキペダル踏み面を右側に40mm拡大)すればブレーキの踏みやすさと両ペダルを踏み間違う危険性はかなり改善されるものと考えます。

人によっては、ブレーキとアクセルペダルを右側に近づけることでより誤動作がかえって多くなるのではないかと考えがちですが、それは逆かと思います。運転者は並んだペダルの左右どちらかがブレーキかアクセルかわからなくなる危険よりも、上記の理由で運転者の過去の記憶や行動により、このあたりがきっとブレーキであるはずだと思い込むことによる誤動作の方がずっと危険であると思います。

更に、ブレーキペダル面とアクセルペダル面の踏み込まない時のY(車の前後)方向のオフセット量がプリウスはやや少ないと思われるので(少ないと両ペダルの種類を足の先で区別する認識を行いづらいと思われるので)、これをあと15mm程度多く(もちろんブレーキペダルを運転者側へ)オフセットさせた方が、それぞれのペダルを異なるものだと認識しやすくなると思います。

また、以下はやや細かい点ではありますが、両ペダルを踏み込んだときにできるだけ同じような感覚で踏めないようにする、欧州車や国内高級車は一般的かと思いますが、アクセル(吊り下げ式)とブレーキ(吊り下げ式)のストローク支点を変える(アクセルペダルの手前下端をフロアに接地させ、ここを支点としてペダルが動く構造へ変える(アクセルペダルをオルガン式へ変更する)ことで踏み込むとアクセルペダル上側がより多く動く回転運動となるので、両ペダルを踏み込んだ時の感覚がブレーキペダルと区別されやすくなります。これはメーカーにとってコストアップの構造なのかもしれません。

私見ではありますが、これらの対策を行うことにより、このような事故の起きる確率は大きく減少するものと考えます。 

 

最後に、このブログをお読みいただいている皆様が既述の内容に関連して、運転されるときのご注意点を少し書きます。

自動車を運転する場合、発進前にシートベルトを締めますが、そのとき同時にシートに対するポジション(自分がシートの真ん中にきちんと座っているか)をしっかりチェックしてください。

右ハンドル車の場合、間違ってもシート中心より右に座ったり、右へ向いて座ったりしないように気をつけてください。

特にブレーキペダルレイアウトが左寄りの車についてはより注意が必要かと思います。

自分は若いのでペダルの踏み間違えなど絶対ありえない、などと過信しないでください。

いろいろな良くない条件が重なってしまうと、ペダルの踏み間違えによる暴走は誰にも起こりうると思います。

身近な高齢者ドライバーにも運転を始めるときのシートに対するポジションをチェックすることの重要性を教えてあげてください。

もちろん高齢者で、運転が危険と思われる方には運転免許返納を勧めることも大切かと思います。

 

お読みいただきありがとうございます。

被害者にとっても加害者にとっても大変不幸になる悲惨な交通事故が、この世からなくなることを願っています。