LTspice(LTスパイス)はご存じの通り、リニアテクノロジー社の回路シミュレータで、先駆け的な存在だそうで、トラ技などでも多くの方が使っているようです。

最近は多くのディバイス・メーカーがそれぞれに出してデータを公開しているようですが、LTを含めてほとんど自社ディバイスのデータだけなので、数社のディバイスを混ぜて使う場合に、皆さん苦労なさっているようです。
いわばメーカーからすれば「囲い込み」が目的なのでしょうが、データ・フォーマットなどを統一して頂けると、素人にも使い易いのだが・・・。
今回もLM358、2SK30、2SA1015、2SC1815などは、こちらの「r271-635」さんのサイトからデータを拝借した。

余談はさておき、今回計画したキーヤーの主にアナログ回路部分をシミュレートしてみることにした。まずは、シミュレーションする回路をすべて入力して、キーイング操作やスイッチ操作を自動化??(一定周期で繰り返す)しておきます。

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回路は前回説明したので省くが、V1、V2、V7はそれぞれDC電源で、-15V、+15v、+5Vです。

600Hzと1KHzの周波数を切換えるスイッチ「SW」を「TR-SW」と称して、「V3」のパルス発生器(FRQ-CON)でリレーのようにTR-SWを入り切りする。約4秒間隔でデューティ50%とした。
手動のキー入力は「KEY-SW」として、「V6」のパルス発生器(EXT-KEY)で、同じようにスイッチングする。実際のオペレーションでこんな早いキーイングはないだろうが、約60m秒間隔で20m秒のキーイングをする。

そのほか「V4」は400Hzの正弦波発生器でRX-Audoの代わりに入れてある。PIC-01、-02は「V9」「V10」で、PICからの信号でのシミュレーションを行うが、現状は出力=Lにしてある。

以上、LTSpiceに組み込まれている「Voltage」ディバイスは、電源そのものとして使う以外に、回路試験のための信号発生機器と考えれば良いでしょう。

以上、この回路のシミュレータのデータは、以下URLで開けます。但し、LTspiceがインストールされていること、上に記載した未登録のディバイス(LM358、2SK30・・・)のデータを組み込むことが必要です。


それでは実際のシミュレーション結果。まずウィーンブリッジの発振だが、FRQ-CONのDCレベル(緑)とOSC-OUT(赤)のACレベルを5秒間確認する。

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約2秒で周波数が変化した部分をアップで見ると、FRQ-CON電圧の立ち上がり2V近傍で、周波数が変化しているのがわかると思います。更に2秒経過後に元の周波数に戻ります。

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周波数のシフトは、周波数、振幅共に違和感なく、スムーズに変化しているようです。

OSC-OUTをFFTで見ると、以下の通り。

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一応、0.5KHzの上の方、1KHzチョット上に0db近傍のピークがある。高次高調波も含まれているが、いずれも-30dB未満なので、良いのではないでしょうか?

次にキーイングのシミュレーションを見てみます。EXT-KEYのキー入力(緑)、FET-GATEのFETゲートの電圧(青)、LINE-OUTのキーインク後の出力(赤)を立ち上がりから250m秒を見てみます。

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電源立ち上がり35m秒後にウィーンブリッジのAGCが調整前で、一旦振れているが、一回目のキーイング以降の波形は安定している。

キー入力はTTLレベルで多少(5m秒)スロープを設けてある。これに対してFETのアナログスイッチは約2.5V近傍で、FETのゲート電圧が10V近傍まで上がって、キー入力がOFFになると、シッカリVss-15Vまで下がっています。
ウィーンブリッジ出力は約2Vrms前後でしたから、ゲートが±10V以上レベルシフトしているので、発振信号に影響を与えることはないでしょう。

最後に、キーオンの瞬間の過渡特性を見てみる。

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ゼロクロスではないので、スタート位置は不定になるが、波形が暴れている様子もないので、何とか使えそうな領域だ。

その他、各スイッチのタイミングを変えたり、PC-OUTへのミキサー加算回路のシミュレーション、電源電圧の変動などもシミュレーションしたが、長くなりすぎたので割愛した。

年末でもあり、しばらく仕事でキーヤー関連はQRT。次の作業は年末年始のお休みに出来るかな?