香港の旅人が“和歌山”を選ぶ理由。
和歌山をよくわかっている旅人たち和歌山城で最初の一息を受け取るなら、西の丸の紅葉渓庭園がよい。池畔に置かれた庭石は、ほのかに青い。紀州青石──紀ノ川流域の緑泥片岩で、京都や奈良でも滅多に見られない色だ。庭の奥には茶室・紅松庵があり、表千家に近い手前で点てられる薄茶が、旅の速度をゆっくり落としてくれる。この庭には、ときおり欧米の旅人が現れる。コーヒー片手に本町を歩き、雑賀橋で川を眺め、気づけば天守の白壁の近くまで来ている。名所を“踏破”する旅ではなく、歩いて確かめる旅。地方都市の余白を、自分のペースで拾い上げるような歩行だ。一方で、香港の旅人もまたこの庭に姿を見せる。ニュースでは、ときおり「日本への渡航を再検討すべきだ」、という声も聞こえるが、それでも彼らは言う。「和歌山には行きます。旅は“場所”より、時間の置き方だから」多くは五回以上の来日経験を持ち、すでに旅の勘所を理解した人々だ。城に上がらず、まず和歌山駅で買い物をし、和歌山電鐵に乗り換えて、貴志駅の“猫駅長”に会いに行く。白浜を急がず、名所の数ではなく、旅の密度を選ぶ旅。そのあとバスで黒潮市場へ向かう。海の匂い、マグロの包丁の音。欧米の旅人が街とコーヒーで旅を整えるなら、香港の旅人は海と食で旅の芯をつくる。そして白浜の湯に沈み、なかにはチャーター機で香港へ帰る者もいる。大尽の旅であり、和歌山をよくわかっている旅だと思う。旅とは、名所を数える行為ではない。時間をどこへ置くかという決断である。青石の庭で一服し、街を歩き、猫駅長に会い、黒潮を食べ、温泉に沈む。旅を続ける意志を確かめる場所として、和歌山は静かにその役目を帯びつつある。"旅"をよくわかっている人たちの紀州旅行|JewelFire紀州の旅の入口として、まずは"紅葉渓庭園" 和歌山城で、最初の一呼吸を受け取るなら、 西の丸の"紅葉渓庭園(紅葉谷)"がよい。 紅葉谷庭園 去年はここで、将棋の竜王戦の翌朝、記念撮影してました。 池畔に置かれた庭石は、ほのかに青い。 紀州青石──紀ノ川流域の緑泥片岩だ。 京都の名園にも、 奈良の古刹にも、 ほとんど見られない"青"。 土地の影を、 その…note.com