イメージ 1

あの世アルバム 6 ART FARMER & JIM HALL 「BIG BLUES」 1978
 
 よく「無人島へ持って行くアルバム」とかっていう例えがありますが、
「電気も通ってない無人島で、どうやってレコード聴くんだよぉ!」的な
非現実的な発想ではなく、誰もがいづれ訪れる死期に際して
「棺おけに入れて欲しいアルバム」・・・これも棺おけと共に燃やされてしまう、
「あの世に持って行くアルバム」・・・持って行くというだけの満足感でしかなく、
実際、あの世で聴けるわけでなし。
それでは「葬儀で流して欲しいアルバム」とか
「死期が近づいた時に枕元で聴きたいアルバム」とか、いろんなこじつけを考えますが、
ここは素直に「あの世へ持って行くアルバム」ということで...。(笑)

 なお、アルバム・タイトルの前の番号は好きな順番とか、優先順位とかは関係なく、
ランダムに載せて行きたいと思います。



『黄金コンビが生みだす芳醇なジャズの香り。
大人の風格と落ち着きあるプレイの中にキラリと光るロマンチシズム。
この深い味わいこそジャズを聴く喜び・・・・・。
シング・ジャーナル主催第12回('78年度)ジャズ・ディスク大賞最優秀録音賞受賞!!』

 邦題は「ビッグ・ブルース~なき王女のためのパヴァーヌ」。

 過去に "アート・ファーマー・クァルテット・フィーチャリング・ジム・ホール"
というのもあったし、CTIといえば、ホールの「アランフェス協奏曲」てのもあった。
だからこの「BIG BLUES」には驚かない! という決意を抱いていたにもかかわらず、
これを聴いた時にゃぁ、ビックラこいた!

 ファーマーのフリューゲルホーン、ホールのギターに加え
マイク・マイニエリのヴァイブ、マイク・ムーアのベース、
ドラムスはお馴染みスティーヴ・ガッド、もちろんプロデュースはクリード・テイラー。

 ワタシにとって、本作の存在意義はA-1「Whisper Not」に尽きます!
ベニー・ゴルスン・チューン、ジャズ・メッセンジャーズやジャズテットによる
2管、3管の名演も数多く、もちろんゴルスンやファーマー名義もあり、
しかしここでの1ホーン&ギター、おまけにピアノではなくヴァイブ入り、
ワタシ的には「CTIのおしゃれ感」に抵抗を感じることも多々あったのですが、
このアルバムに関しては、なぜか手放しで喜んじゃうんですよ。

 チラチラと香ってくるフュージョン・テイストもなんのその...。
レコードの音が良かったということもあるし、サウンドもクールだし、
マイニエリ&ガッドの起用も大正解! ということで、◎

 さて、サブタイトルにもなってる「なき王女のためのパヴァーヌ」、
ラヴェル作曲のピアノ曲ですが、この時期のCTIにはけっこうこの手の
クラシック・チューンを取り上げたアルバムが多く、ひとつのトレンドだったのでしょう。

 どの曲も、「誰が」ということではなく、5人が等辺の五角形を形成しています。
人気という点ではホールが抜きんでていたのですが、
当時の日本公演ではファーマーをメインに訴求したせいもあってか、
二人はギクシャクしてた...という説もありますが、
そんなことはこれっぽっちも感じさせない名盤であります。


 さて次回の「あの世アルバム」は BERT JANSCHの「MOONSHINE」('73)を予定しています。