よく「無人島へ持って行くアルバム」とかっていう例えがありますが、
「電気も通ってない無人島で、どうやってレコード聴くんだよぉ!」的な
非現実的な発想ではなく、誰もがいづれ訪れる死期に際して
「棺おけに入れて欲しいアルバム」・・・これも棺おけと共に燃やされてしまう、
「あの世に持って行くアルバム」・・・持って行くというだけの満足感でしかなく、
実際、あの世で聴けるわけでなし。
それでは「葬儀で流して欲しいアルバム」とか
「死期が近づいた時に枕元で聴きたいアルバム」とか、いろんなこじつけを考えますが、
ここは素直に「あの世へ持って行くアルバム」ということで...。(笑)
なお、アルバム・タイトルの前の番号は好きな順番とか、優先順位とかは関係なく、
ランダムに載せて行きたいと思います。
『マーク=アーモンドよりのメッセージ
このアルバムは、マーク=アーモンドの復活をこころから望んでくれた、
世界中の友人たちに捧げるものです。
皆さん、本当にありがとう。
今、マーク=アーモンドは、あなたがたのこころに訴えかけます。
1976.5 カーメルにて』
マーク&アーモンドに初めて出逢ったのは72年の「供廚任靴拭
もちろん日本ではリリースされてなくて、輸入盤のLPを買ったのです。
当時はほとんど情報がなく、LPに針を落とすと出てきた音が
牧歌的なアコースティック・サウンド。
「こんなはずじゃなかったのに...」と思いつつ聴き進んでいくと、
ドラムレスのサウンドに、急にドラムスが加わり、エレピのソロ、
そしてジョニー・アーモンドのサックス・ソロ、「これはまさしくジャズだ!!」
ティム・ハーディンあたりがジャジーなフォークだ、と思ってたところに
この衝撃的なサウンド。
あの世に持っていくのは「供廚、この「TO THE HEART」か、悩ましいところですが、
1アーティスト、1作品という暗黙のルールがあり、
でもマーク&アーモンドとトム・ウェイツ、ニール・ヤング、大瀧詠一あたりは
複数持って行ってもいいかな?なんて思ってる次第です。(笑)
マーク&アーモンドを知らないヒトがこのアルバムを聴くと、
きっとアメリカのバンドだと思うでしょう。
この時点ではAORとかフュージョンとかいう言葉はまだなかったし。
実はジョン・マーク&ジョニー・アーモンドは英国人なのです。
さかのぼって、ジョン・メイオールのブルーズ・ブレイカーズに二人が在籍してた頃、
意気投合し、発展したのがドラムレスのマーク&アーモンドというユニットでした。
ドラムレスでフォーキーな「MARK=ALMOND」、
ミンガスのところにいたダニー・リッチモンドというドラマーを得て
フォーク・ジャズ・スタイルを追求した「MARK=ALMOND 供廖
そして「RISING」「73」をリリース後、活動休止、この「TO THE HEART」で
見事復活した、というわけです。
A-1「New York State Of Mind ~ Return To The City」、
あのビリー・ジョエルの名曲をウィスパリング・ヴォイスで唄うジョン・マーク、
イントロのトミー・アイアのエレピ、間奏のジョニー・アーモンドのサックス・ソロが
絶品です。
本作の特徴はオリジナル・メンバーのトミー・アイア(kbd)が復帰したこと、
そして何よりも、ドラムスにビリー・コブハムとジミー・ゴードンという
ジャズ・ロック界とロック界の売れっ子二人を招いたことでしょう。
1曲を除いてコブハムが叩いているのですが、
A-2「Here Comes The Rain」での速射砲ドラミングや
B-2「Busy On The Line」のパワフルなドラミングを聴くと、
ちょっとミスマッチかな?とも思えるのですが、
ジョン・マークの囁くようなヴォーカルを引き立たせる、という点では
メリハリがあって良かったかもしれません。
一方のジミー・ゴードンはトラフィックやデレク&ドミノスなどで叩いてたヒトで、
B-3「Everybody Needs A Friend」ではジョン・マークのヴォーカルや
ジョニー・アーモンドのサックス・ソロを盛り上げています。
このヒト、ホントに盛り上げ方を知ってる数少ないロック・ドラマーですね。
結成当時からフォークとジャズのクロスオーヴァーを目指したマーク&アーモンドですが、
本作を境に、以降はフュージョン・タッチへと移行するのも時代の流れだったのでしょうか。
さて次回の「あの世アルバム」はART FARMER & JIM HALLの「BIG BLUES」を
予定しています。