『自己のトリオに鬼才スタイグのフルートを加えた、ビル異色の傑作。
「枯葉」や「ソー・ホワット」などが、
ダイレクト・デジタル・マスタリングでいっそうスリリング!』
どうもジャズ・フルートって言うと、あまり好印象を持ってなかったのですが、
このジェレミー・スタイグは別格。気迫ならぬ "鬼迫" あふれるプレイには脱帽です。
モンク作の「Straight No Chaser」、
ウィスキーをチェイサー(添え水)なしで飲むことなのですが、
この曲に限ってスタイグがフルートを吹くときはエヴァンスは弾くのをやめるんですよね。
まさにピアノというチェイサーなしに展開されるわけですが、
その分、エディ・ゴメスのベースがいつになくでしゃばるんですよ。
これがまたカッコいいんだなぁ...。
エヴァンスも右手だけで弾いてるようなところもあるし、
曲全体のバランスはたしかにヘンなんだけど、逆にメリハリがあって面白いです。
エヴァンスの「枯葉」といえば、あのスコット・ラファロ在籍時の演奏が筆頭ですが、
ここでの「枯葉」もそれには及ばないもののなかなかの好演、
スローな「Lover Man」「What's New」、オリジナルのブルーズ「Time Out For Chris」も
素晴らしいのですが、やっぱり圧巻はラストの「So What」。
モーダルな感じのエヴァンスのソロが絶品でうっとりしていると、
スタイグのソロも徐々に昂ぶりをみせ、ハミングのような唸りも出る始末。
なぜかここでもエヴァンス弾くのをやめちゃいます。
ゴメスのソロもアグレッシヴで聴き応えあり。
アルバムを聴き通しちゃうと、エヴァンスの露出度が思ったよりも少ないのに気付きます。
スタイグに「花をもたせた」感があるものの、要所要所でハッとするトリッキーなフレーズを
効果的に聴かせ、スタイグの魅力を上手く引き出したエヴァンスでした。