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HERBIE HANCOCK 「RIVER:THE JONI LETTERS」     2007

『アコースティック・ジャズの一つの到達点。
盟友のシンガー・ソングライター、ジョニ・ミッチェルへの渾身のトリビュート作、
最新版「ザ・ニュー・スタンダード」と言うべき、ハービーの新境地。』

 初期のジョニはどちらかというとフォーク系のSSWでした。
それがいつからジャジーなエッセンスを得たのでしょうか?
ここまでがフォーク、ここからがジャジー・アレンジ、という線引きは難しいけど、
あえてターニング・ポイントを挙げるとするなら、
74年の「コート・アンド・スパーク」あたりでしょうか。
以降、「夏草の誘い」(1975)、「逃避行」(1976)、「ドンファンのじゃじゃ馬娘」(1977)、
「ミンガス」(1979)、「シャドウズ・アンド・ライト」(1980)あたりの70年代後半の
アルバムは、当時の "クロスオヴァー・サウンド" 真っ只中とも言えるでしょう。

 ハービー・ハンコックによるこのトリビュート・アルバムには
ジョニの楽曲が9曲、他にデューク・エリントン作の「ソリチュード」、
マイルスでお馴染みのウェイン・ショーター作「ネフェルティティ」の2曲が
なぜか付加されています。
ゲスト・ヴォーカリストとして、当のジョニを始め、ノラ・ジョーンズ、ティナ・ターナー、
コリーヌ・ベイリー・レイ、ルシアーナ・ソウザ、レナード・コーエンを迎えています。
しかし、展開されてるサウンドはハービーのアコースティック・ピアノが主体で、
あくまでもハービー・ハンコックのジャズ・アルバムです。

 興味深いのはプロデューサーがあのラリー・クライン(ジョニの前夫)で、
ラリーの現妻のルシアーナ・ソウザが参加していること、
そして時を同じくして、ルシアーナの「THE NEW BOSSA NOVA」というアルバムを
現夫のラリーがプロデュースしており、そこで前妻のジョニの「Down To You」を
カヴァーしている...ああ、ややこしい! これも何かの因縁でしょうか。

 ヴォーカリストの人選はハービーなのかラリーなのか、はわかりませんが、
ジョニへのトリビュート以前に、ハービーのアルバムですから、
ジョニを意識させるようなヴォーカリストである必要もなく、
ジョニの詩からインスピレーションを得たハービーのジャズ・サウンドに
合えばいいわけでして...。

 この中で、一番ジョニを意識しているようにも聴こえるルシアーナ・ソウザの
「Amelia」、ルシアーナのヴォーカルに絡むハービーのピアノと
ウェイン・ショーターのサックスが絶妙です。
インストとのコンビネーションという点で、ワタシ的にはベスト・トラックです。
そう言いながら、皆、ピタッとハマッてる...。