『大瀧詠一が打ち出す新しい企画!!
多羅尾伴内樂團の哀愁さうんど第一弾!!』
ジャケがまた面白い! 完全防寒のファッションに丸眼鏡で餅を焼いてるんですよね。
これは彼の敬愛する名プロデューサー、ジャック・ニッチェの「THE LONELY SURFER」の
パロディですね。(写真下)
さて、このLPを買った当時はもちろん「ナイアガラ・ムーン」や
「Go!Go!ナイアガラ」などの流れを多いに期待して聴いたのですが、
「何これ!?」的な驚きと落胆が入り混じった複雑な気持ちで聴いてました。
なぜならば、唄がない、曲も書いていない、演奏にも加わっていない...
まったくプロデュースに専念したアルバムだったからです。
その上、やってることがエレキ・インスト、それもスティール・ギターの入ったやつ。
大瀧さんのレコードの中では最もターンテーブルに乗らなかったレコードでした。
しかし後年、このレコードの種明かし的な背景を知り、浅はかだった自分の無知を恥じ
悔い改める次第でした。(爆)
60年代のスプートニクスなどのような北欧風エレキ・インストなのですが、
もちろん「さすらいのギター」や「霧のカレリア」のような北欧モノもあるんですが、
サーフィン・インストの「霧の彼方へ」やカスケーズの「悲しき北風」
そして日本の「雪やコンコン」(原題は「雪」、歌詞は"こんこん"ではなく"こんこ")
「雪の降る街を」あたりを何の違和感もなく北欧風にまとめあげるなんざぁ、
さすが大瀧師匠! 的な絶賛と敬服に意識が変わったのです。(笑)
北欧エレキ・インストの売りは何と言っても「哀愁感」だと思うのですが、
カスタネットや鈴などを使って、いろんなジャンルの素材をみごと哀愁サウンドに
アレンジしてるところが凄い!
「悲しき北風」には後に小林旭でヒットした「熱き心に」の、
そして「雪やコンコン」に使われた3連符のリズムは後の「君は天然色」へのプロセスとして
興味深いモノがあります。おまけにエンディングのブルーズ風のエルヴィスもどきは
大瀧師匠の得意とするところでしょう。
もっと掘り起こせば、いろんなモノが見え隠れしてくるかも...。
さて次回の「70’s」はボブ・マーリィ&ザ・ウェイラーズの「ライヴ!」(1975)
を予定しています。