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矢野顕子 「JAPANESE GIRL」     1973-1976

『あなたはもうアキコ・ヤノを聴きましたか?』

 ワタシが大学生だった頃、本作をリリースしたばっかの矢野さんがラジオ番組に出演され、
インタビューを受けていたのですが、そのレスポンスがほとんど「はい」とか「ええ」など
素っ気無い返答ばかりで、何なんだ、この女!?とか思っちゃいましたが、インタビューの
合間にかかる曲、「うわぁ、すごいヒトが現れたもんだ!!!」的な感動と共に、
頭がショック状態になったのを今でも忘れません。

 当時、自らピアノを弾いて唄う女性、例えば、キャロル・キングや五輪真弓さんなどとも
全然違う...まずコードが変!!複雑!!そして声もぶりっ子ぽく聴こえる瞬間もあるけど、
まわりの誰とも違うスタイル、まさに昨今の「ワン&オンリー」というコトバは実はこの時代に
すでに存在し、それは矢野さんを形容するコトバではなかったんだろうか、
と錯覚しちゃうくらいです。

 当時はリトル・フィートの存在すら知らず、それはあまり意識しなかったのですが、
アメリカに渡って現地のミュージシャンとレコーディングした、それもデビュー作...
というだけでも驚嘆に値する事件でした。(ワタシの中では)

 早速レコードを買うと、タスキにはしっかり日の丸のデザインが。見開きの歌詞カード、
表表紙には小さく「Thank You」、裏表紙は「ありがとう」の文字が。
レコードはA面がリトル・フィートを従えた「AMERICAN SIDE」、そしてB面が「日本面」と
なっており、76年の2~3月に日本面を録音し、すぐさま渡米、同じ3月にAMERICAN SIDEを
レコーディングという離れ技。(B-1の「大いなる椎の木」のみ73年の録音)

 へヴィーなリズムのA-1「気球にのって」、変拍子のA-2「クマ」(ローウェル・ジョージが
尺八を吹いてます)、しかしジャズ界は別として、こんな変拍子をやる女性は日本には
いなかっただろうに...。そして転がるようなリズム感のA-3「電話線」、
津軽民謡の「ホーハイ節」ここまでアレンジしちゃうか!? リッチー・ヘイワードの
重いドラムスも印象的です。この曲を「日本面」ではなく「AMERICAN SIDE」でやっちゃうところが
素晴らしいですね。

 対する「日本面」はつづみや琴、太鼓など思いっきりジャパニーズな楽器をフィーチャーし、
ワタシ的には「AMERICAN SIDE」よりもこちらの方をよく聴いたような気がします。
何と言っても「へこりぷたあ」と「丘を越えて」でしょう、ハイライトは。
「へこりぷたあ」はもちろん唄ではちゃんとへりこぷたーと唄ってます。
つづみの「いよお~ポン」の音がベースになっている面白いアレンジです。
ちなみにアレンジにクレジットされてる小東洋はご主人の矢野誠さんの変名ですね。
また名曲「丘を越えて」ではびわや太鼓の音の合間を縫う駒沢さんのスティールや、
あがたさんがユニゾンでつけるコーラスも効果的です。

 若干21歳の女の子が作った名作、早くも「才女」の片鱗が覗えます。

 さて、次回の「70’s」はピュア・プレイリー・リーグを予定しています。