本家"SINGING COWBOY"のジーン・オートリーのベスト盤ですが、
彼のヒット曲として有名な「ボタンとリボン」や「赤鼻のトナカイ」などは含まれてません。
ロイ・ロジャーズにはトリッガーという愛馬がいましたが、このジーン・オートリーには
チャンピオンという愛馬が恋人でした。
元々は歌手だったオートリーがハリウッドへ向い、映画スターとしての地位を確立したのですが、
特に大成功した映画はなかったようです。(日本では1本も公開されてないそうです)
片岡義男さんのエッセイ集「5Bの鉛筆で書いた」の中の
「土曜日の午後の映画館では、歌をうたうカウボーイの西部劇で、子供たちがおおさわぎだった。」
というエッセイで、「シンギング・カウボーイ」の由来みたいなのを書いていらっしゃいます。
それによると、1930年代のなかば、マンネリがもたらした西部劇の最初のスランプ期に
発掘されたのがこのジーン・オートリーだったのですが、ジーンは表情の変化に乏しく、
全体的な雰囲気が何となくおっちゃん臭かったので片岡さんはあまり好きではなかったそうです。
そのジーン・オートリーが一時的にリパブリック・ピクチャーズという映画会社を離れた時、
その代役として活躍したのがロイ・ロジャーズです。
「ロイ・ロジャーズが愛馬トリッガーにまたがって現れると、子供たちは大かっさいした。
悪役が登場すれば、セロハンの袋からゼリー・ビーンズをつかんでスクリーンに投げては
野次り罵倒し、射ち合いになると、それぞれ持参したロイ・ロジャーズ・キャップ・ガンで、
男のコたちは場内を走りまわりつつ、椅子のかげからスクリーンの悪役を撃つのだ...。」
(片岡さんのエッセイから引用しました。)
日本でもお馴染みの「Blueberry Hill」や「Red River Valley」
「South Of The Border」など、ワタシらが口ずさめる唄もあり、
またジミー・ロヂャーズを偲んで唄った「The Life Of Jimmy Rodgers」では、
ヨーデルも披露してます。ロイ・ロジャーズ同様、この時代のシンギング・カウボーイには
ヨーデルは欠かせないアイテムだったのかも知れませんね。