以前(3年ほど前)私がコンサルティングしていた先の、とある国内大手食品メーカーの経営者N氏に言われた言葉。

(N氏)「山田さん、出してくれたレポートなんだけどね。内容は分かるけど面白くないな」

(私)「具体的にはどういったことでしょう?」

(N氏)「選択肢は書いてあるんだけどねえ。答えが欲しいんだよ、答えが!!」

(私)「・・・」

これは、全役員同席のもと開かれたコンサルティングプロジェクトの最終報告会の場で実際に交わされた会話です。

このときまだ私は青かったので、経営者とは「意思決定をする人」という認識をしていました。
もちろん、本来あるべき姿、役割はこうであると確信していますし、その考え自体は変わっていません。

ただ、世の中にはそうでない経営者もいて、しかもそういったタイプの経営者は上場、非上場や規模の大小を問わず存在するとこの時に気がついたのです。

それ以来私は常に「答え」(もちろん、伝え方は「推奨案」)を明確に伝えるようにしています。

それまでも「明日から何をすれば良いのか」という具体的な打ち手の選択肢とそれぞれのメリット、デメリット、費用対効果(金額)を精緻に出していたのですが、横一線で提示する(「あとは経営者として意思決定してください」というスタンスの報告)のをやめたのです。

その途端、コンサルティングの仕事はそれまでより一層うまくまわっていきました。
結局、経営者に限らず多くの人は、自分がマネジメントしている組織の意思決定をし、その結果組織として迎える結末の“責任を引き取る“ことを「怖い」「できれば回避したい」と思っているため、常に「誰かに決めてもらいたい」という誘惑に駆られている、ということです。

これ自体は人間の弱さ故でもありますし、即座に否定するものでもありませんが、組織のトップたる者が責任回避の姿勢をとっていたらその組織はどうなるのでしょう?

「(トップとして)指名されたのに断るのは格好悪いし、出世のゴールだから…」

結局、言葉は悪いですが「サラリーマン根性(リスクは他人にヘッジし、組織の中での自分の出世しか興味がない、という気質)」しかない人が経営者をやっても、その組織の末路は悲劇しかない、という自明の理に行きつくことでしかないのですが、これに気が付いている人が当事者(経営者やその周り)の中に果たしてどれくらいいるのでしょうか。。

上記の典型例ともいえる会社を間近に見ながら、思わずそう考えずにはいられなかったのですが、もしあなたのいる会社の経営トップに責任回避の兆候が見え隠れしたら、間違いなくその会社に未来はないので今すぐ新天地へと移ることを真剣に考えてください!