現在経営を支援している靴の会社では、自社で店舗を運営し、仕入れた商品や自社商品を売る「直営事業」と大手靴メーカーや大手小売チェーンの自社ブランドを製造受託する「OEM事業」の2つの事業を手がけています。

この2つの事業は似ているようで、性質が全く異なります。

どちらも、最終的に靴を履く消費者に支持される商品を作らなければならないのは、(至極当たり前ではありますが)共通事項なのですが、前者がまさしくその消費者だけにフォーカスすれば良いのに対して、後者は直接の顧客である靴メーカーや小売チェーンの担当者の意向や会社の事情も汲み取らなければいけません。

「最終的に消費者に向けて商品を作るのだから同じじゃないの!?」
と思うかもしれませんが、買い手(消費者)と作り手の間に1階層挟むだけで、情報がうまく共有できなくなるから不思議です。

ここで、「出来る」OEM企業と「出来ない」OEM企業との差が出て来ます。

とにかく目の前にいる(お客である)靴メーカーや小売チェーンの担当者になんでもかんでもお伺いをたて、少しでも商品を作るための情報が欠けていると「それだけの情報では作れません。もっと具体的にどんな商品が欲しいのか言ってもらえないと...」と相手からの情報をひたすら待つだけの「指示待ち君」。

または、自社で過去作った商品(サンプル)を並べて「どれにしますか?」一辺倒の「独りよがり君」。

大抵はこの2つのパターンに陥りがちです。

ここで(靴の製造を受託する)顧客企業からの信頼を勝ち得るには「(顧客企業の靴を買う)消費者目線」と「顧客企業目線」で適切と思われる商品の的を絞り、顧客企業に対して「常に半歩早く提案していく」姿勢と「全てお膳立てする」対応が必要になります。

当たり前ですが、まず相手の企業が運営するお店と商品を見る。
その上でうち(自社)が製造受託することで、今より何がよくなるのか(単に同じ品質でコストを下げられるのか、または本来そのお店の世界観から見て、あれば売れるデザインの靴を実現できるのか等)、そのメリットを明確にする。
その上で顧客企業が抱える事情(いつまでに納品して欲しいのか、どれくらいのデザイン数を店頭展開しなければならないのか等)を汲み取って提案する。

書けば当たり前の事なんですが、日常に放り込まれると、時間がなかったり、面倒だったりで、どこかのステップを飛ばしがちです。

これらの事を地道にやって行くだけでも、まだまだ勝負出来る(製造受託出来る)業種は靴をはじめまだまだたくさんあるように思います。

「(受注が減って)厳しい、厳しい」と愚痴りがちになったら、いきなり精神論で個々の営業マンを詰めるのではなく、本当に相手の立場で考えているか、必要な作業を徹底し切れているか、という視点で業務を見直せば、必ずや光明が見えてくると思います。

写真はOEM提案のため、とあるアパレルブランドのお店を視察した時のもの
photo:01



photo:02