「成瀬は都を駆け抜ける」宮島未奈

 


成瀬シリーズの第3作目です。

続き物って、私の中では第一作目が一番よかったなーってなることが多いんですけど、この本に関しては断然、3作目のこちらが推し!でも、1.2があってこその3なので、ぜひ全部読んでほしい。

 

1作目の読書感想文はこちら…

https://ameblo.jp/jellyfish-2020/entry-12920074285.html

 

さてこの本、本屋さんでずらっと陳列されていてパラパラと手に取って、この部分まで立ち読みして購入することを決めました。最初の話、失恋したと語る坪井に対していう言葉がとってもいい。

「わたしは、早田くんがいたから生きてこられたの」

こんなことを言ったらみんな大げさだって笑うだろう。だけど、わたしにとってはまぎれもない事実だ。わたしの歩いてきた道を振り返れば、どこにだって早田くんとの思い出が残っている。

成瀬さんはピースをやめ、笑みを残した穏やかな顔でうなずく。

「きっと、それが彼の役目だったんだ」

「役目」

わたしは思わず声に出していた。こっちに向かって静かに手を振り、脇道にそれていく早田くんの姿が見える。投げ出したのでも逃げ出したのでもなく、役目を終えた。そう思ったら早田くんへの感謝がこみあげてくる。

 

なんて的確な。なんて素晴らしいアドバイス。

嫌味でもなく、同情しすぎるわけでもなく、ただ、ただ、前向きな言葉をかけてあげる。

そんな場面が、本書には何度も出てくる。

 

あぁ、成瀬、大人になったな。

こんな言葉をかけてくれる友人が私にもいたら。と思わされる。

そして、登場する成瀬の両親に、子を持つ親として学ばされるシーンも多い。

 

成瀬を否定せず、もっとこうしなさいあぁしなさいと言うこともなく「そういう子なので」とありのままを受け止めている両親。それを受けて「自由」に育っている成瀬。

これまで当然に、娘のことをすべては理解できないところもあって育児には葛藤したであろうシーンも共感でき、それでも「そういう子なので」と他者として尊重している姿が本当に素晴らしい。そうなのです、誰でも、自分の子であれすべてを分かることなんて不可能だし、こうしなさいと変えることも不可能。そこをきちんとわきまえて、尊重することってなかなか親にはできない。

成瀬が突然島崎を呼び出したときは「あかりが呼び出したんでしょう」と交通費を渡すようなきちんとしたところも本当に素晴らしいお母さま。

 

突然出会ったYoutuberにも変わらぬ態度で接し、「しね」という書き込みには「まだ死なない」とマジレスする強さ。

いつも冷静なところも、賢いってすごいわーと思わされるし。

 

お母さんが成瀬の受け答えに対して大人になったなって感じているシーンがあったけれど、それも同感で本当に、人の気持ちにも寄り添えるし常に前向きなことばっかり言うの、すごく素敵。

「ぼきののか」の最後のシーンでは

「また落ちたらどうしよう」

わかばとぼき友に誓った手前、落ちるわけにはいかない。余裕のないあたしとは対照的に、成瀬は悠然とうなずく。

「不合格だったらまた受ければ大丈夫だ」

「でも、配信で絶対合格しますって言っちゃったし…」

「今回とは言ってない。いずれ受かればいい」

 

「大丈夫だよ~絶対受かるよ!」なんて不確定なことは言わず、もしもに対する答えと、今の悩みに対する的確な答え。

それに対して

「成瀬氏はああ言ってますが、ののか氏も実践問題でコンスタントに7割以上取れているので合格する可能性は高いです」「わたしもそう思います。落ち着いていきましょう」

と、事実データを基にして答えてくるメンバーも本当に素敵。

頭いいひとの集団ってこんな感じなの?

なにかと学びのある本だわ…。

 

作者の宮島未奈さんも京都大学のご出身なんですね。

 

京大生ってノリで簿記2級とか受けてもほぼ満点合格できるんだ…って感動。

頭いい人って考えることが違うわ~。

成瀬の詰め込みすぎの1日のスケジュールもストイックだし、やっぱりストイックな人じゃないとあぁはなれないよね。

これに影響を受けて自分を律することができる人になってほしい…という意味も込めて、ぜひ子どもたちに読んでほしい本です。

 

最後、島崎も、過去の登場人物もみんな出てくるラストもとっても良かったし、友達なんて少なくても本当に心底理解してくれる人がいるって、強いなって思うし、そういう理解者は自分の信念を貫いていることで憧れてやってきてくれることもあるんだろうなって思う。

 

明日から期末テストの息子、終わったら読んでくれないかな~。