「ディグニティって、何だっけ・・・」
本を読んでいたウチの親爺が不意にポツンと呟いた。声がいつもより暗く、しわがれている。
吾輩は思わず親爺の顔を見た。やっぱり暗い。鬱になる・・・間違いない。吾輩はそれとなく親爺から遠のく。なるべく関わりたくない。
「何を消失せしめたってんだよっ!」
親爺の声が荒々しくなってきた。いよいよ来たらしい。
ウチの主人はカタカナに腹を立てている。本が好きでしょっちゅう読んでいるのだが、その本にちりばめられているカタカナ語が気に食わないのだ。誰もが知っているようなカタカナ語にも躓く。いくら覚えてもすぐに忘れる。中学校の頃からずっと変わらないらしい。「ディグニティ」の前は「ビューロクラシー」だった。つまりウチの主人には威厳がないのである。


