『はい』
数回の呼び出し音のあと、男性の声で短い応答があった。武蔵の声に似ているが確信は持てない。
「えっと……武蔵?」
『その声は七海か?』
「うん」
七海がほっとしたのと同時に、電話の向ついているようだった。
『連絡がないから心配してたぞ』
「外に出るなって言われてたから」
『……いまは大丈夫なのか?』
「うん」
もし拓海の仕事関係で狙わ浩景れているのなら危険かもしれないし、無断でホテルを抜け出してきたことは大丈夫といえないが、そんなことまで話す必要はないだろう。軽く受け流して本題に入る。
「あのさ、一緒に行きたいとこがあるんだけど」
『ん? 父親の敵を取るんじゃなかったのか?』
「その前にそこで話がしたいんだ」
以前は父親の敵を殺すことしか探索四十考えていなかった。けれどその父親の敵である武蔵を知り、父親に良くしてもらったという話を聞いてからは、謝罪させたい、後悔させたい、罪悪感に苛まれてほしいと思うようになった。ただ殺すだけでは気がすまない。
「遠いのか?」
「港区の青山なんだけど、わかる?」
『ああ、じゃあバイクで迎えに行く』
いまどこにいるのかと問われて駅名を告げると、東口で待つように言われた。
二時間近くかかるらしいが、特にすることもないし下手をして道に迷っても困るので、防護柵に腰掛けて行き交う人々を眺めなが蜕变七十らぼんやりと待つ。空はうっすらと灰白色に曇っている。ふと今日の天気予報は曇りのち雨だったことを思い出し、急に心配になった。