ナビゲーションシステムに表示した広域地図を、

適当に指で触れて目的地を設定し、そこへ車を向かわせる。

あてがあって、あてがない旅。

目的がある訳でもなく、行き着く先に何かを期待している訳でもない。

行き先で素敵な発見や、出会いがありますように。

新しいもの好きなボクは、ネットブックが欲しくて、アルバイトを始めた。

昼間は学校があるから、夜間の警備のアルバイトを内緒で頑張った。

目標額の6万円を手にした日、その資金をポケットにつっこみ秋葉原へ走った。

リサーチ済みのお店に着くやいなや、もう一度持ってきたお金を確認する。

あれ?無い…。

全てのポケットを探してみたけれど、鞄の中も探してみたけど、跡形もなく消えていた。



それから数日がすぎた。あの事件の事はもう気にしていない。

くよくよしても仕方がないし、きっと、あの日に買うべきではなかったのだろう。

そんな気持ちでいたある日「ピンポン!」と呼び鈴がなった。

急いで玄関のドアを開けると、そこには満面の笑顔で彼女が立っていた。

「お誕生日おめでとう!」

ボクの顔を見るや、そう叫んで大きな包みを差し出した。

「早く渡したくて、この数ヶ月落ち着かなかったんだから~」

ボクは突然のプレゼントに驚きながら、

「ありがとう!今日はボクの誕生日だったんだ!数ヶ月も前から準備してくれてたの?」

と感動の気持ちを彼女に伝え、包みを開けて更に驚いた。

とっても嬉しくなって、彼女をギュッと抱きしめた。

そこには、あの日欲しかったあのネットブック、acerがあったから。

そういうことだったのか。

神様が本当にいると感じた瞬間だった。
ボッサが流れる、ちょっと洒落たカフェに入り、通りに面した窓際に座る。

カフェオレを注文して、窓から通りの向こうに目をやると、

この通りに似合わない、ねずみ色の古く小さなビルが目に入る。

そのビルの入口の立て看板に目をやると、

「文化教室:火・水…生け花」

と書かれていてカッコ書きで、「未生流」と書かれている。


小さな声で「すえなまりゅう?」と呟くと、

テーブルを挟んだ向こう側で彼女が吹き出し「みしょうりゅう」だと教えてくれた。

そういえば昨年、

誕生日に贈った花束が、可愛らしい彼女の部屋で、見事に生けられていたのを思い出した。

「覚えてる?私は池坊よ。」

そのひとことで「いけのぼう」という単語が、

生け花の流派のひとつなんだとはじめて気がついた。

優しい時間がゆっくりと流れてる。