NPO JCPのブログ

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人類共通の遺産を護り、育み、次世代に伝えていくために組織されたNPO法人 文化財保存支援機構の活動をお伝えするブログです。

平成30年度もNPO法人文化財保存支援機構をよろしくお願い申し上げます。

私たちは、皆様とともに
文化財を通した社会貢献の使命を果たすべく、
被災地支援の活動を行ってまいります。



HPは→http://www.jcpnpo.org/ / 2011年4月以前のブログは→http://blog.canpan.info/jcpnpo/


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本日は、油彩画の修理と仕様設計2日目です。

 

午前の講義は、Tokyo Conservation 株式会社ディヴォートの尾形純先生による「光学資料で読む保存修復と絵画の技法と材料」です。

 

 

制作のための技法材料が作品の状態に大きな影響を及ぼし、これらは劣化の原因を探るための情報となる。描き手でなくとも修理の実務に携わる者として修理対象の構造を理解することは重要です。

油彩画には仕上げにワニスを施すことが多く、修理では旧ワニス層の除去そして新規ワニス層の塗布が行われます。絵具層とワニス層の区別がつきにくい技法で描かれたものもあり、現代において自由な技法で描かれた絵画も増え、修理事例は多種多様です。古典技法に学び、新たな作品を作っていくのと同様に、油彩画の歴史を白色顔料と有色下地層の変遷で学びながら、作家によって異なる絵画の構造そして絵具層を見極める心構えについて学びました。

先生は描き手と修理技術者の両方の視点から、多角的に油彩画について講義してくださいました。

 

 

午後の講義は、東北芸術工科大学芸術学部文化財保存修復学科講師の中右恵理子先生による「油彩画の補彩について」のワークショップです。

 

 

補彩とは、絵画の劣化損傷により、絵具層の剥落、欠損部などがある部分に、充填材を施し、その部分が作品の鑑賞の妨げにならないよう色彩を補うことです。絵画の美的価値を回復するための処置であるこの理論は、時代によって変遷を遂げています。今回のワークショップでは、線描による補彩を行いました。線描による補彩は、オリジナリティーの重視という近代的な修復に対する考えに基づき、オリジナルの絵画と修復箇所を識別できるようにイタリアで考案されたものです。

 

 

手板には、上下を色面で挟まれ充填されているマスがあり、上下の色面の高さに合わせて充填部を削ります。ここでの色面は絵画のオリジナル部分ということなので、傷つけないよう慎重に行います。次に補彩に入ります。材料は可逆性のある水彩絵具で、赤系、青系、黄系の三原色を中心に、絵具は混色せず細かい線で充填部を埋めていきます。近目では各色の線が判別できますが、遠目では色面に見えます。これが修復箇所を識別できる補彩です。

なかなか苦戦している受講生も多く、大変貴重な経験になりました。

 

 

本年度実践コース全4回の最終日をむかえ、当機構理事長の三輪嘉六先生に閉講のご挨拶をいただきました。

 

 

本実践コースは、基礎概論、考古遺物、レスキュー、油彩画とテーマ別に行い、考古遺物と油彩画では、修復技術者として現場で必要となる仕様設計に焦点をあて講義を行いました。これから技術者を目指す人、博物館・美術館の職員、学生と様々なバックグラウンドをもつ受講者の皆様にとって有意義なコースとなっていましたら幸いです。

 

来年度の実践コースについては現在企画中です。当機構HPに随時アップしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします!!

 

当ブログをご覧いただきありがとうございました。

 


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実践コース4回目「油彩画の修理と仕様設計」コースは、東京国立博物館平成館小講堂にて12月16日から17日まで2日間行われます。今回も全国から16名の受講者が集まりました。

初日の模様をお届けしたいと思います。

 

午前の講義は、東京国立博物館学芸研究部保存修復課保存修復室室長の土屋裕子先生による「企画競争を見据えた油彩画の仕様設計について」です。

 

 

油彩画の基本構造をはじめ、現在の東京国立博物館に至るまでのトーハク油彩画コレクションの種類についてご説明いただきました。隣接する旧工部美術学校(東京芸大)関連の作品、コレクターからの寄贈品、管理替え作品等々、膨大な収蔵品があることがわかります。歴史資料に近い作品群を多く含み、これらの列品調査を通して見えてくる作品の来歴や状態について書かれた実際の記録カルテを拝見しました。また、修理の考え方や処置方法について、館内常設展の油彩画作品を実際に見ながら学びました。

 

 

国内外の美術館・博物館への貸出依頼も多く、展示のために「安全に取り扱える状態にする」ための作品に対する処置が多いとのことですが、解体を含む修理を行うとなった場合に、東京国立博物館で採用されている「企画競争」に参加するための、見積もり仕様(人工等)を受講者が修復業者の視点で考えていき、修理業界をリアルな視点から学ぶ貴重な講義となりました。

 

 

 

午後の講義は、有限会社修復研究所21の有村麻里先生による「油彩画修理の現状と課題」です。

 

 

有村先生には、現在まで携わられてきた多くの修理事例を紹介、ご説明していただきました。作品発見時の状態は重要で、思ってもみない場所から発見されることがあります。下記画像のキャンバス木枠(作品は取り外して処置済み)は家の軒下から発見されたため雨水や土埃などによる損傷劣化が著しい状態でした。

 

 

修理事例のスライドを見て、油彩画では修理工程ごとにしっかりと全体撮影をして画像記録を残していることがわかりました。高島野十郎(たかしまやじゅうろう)作品群の赤外線写真では繊細な下書き線が確認され、一部作品の火災による被害状態は絵具の熱反応を含み複雑な損傷を生み出していました。

行政・民間を含む様々な作品修復を請け負う有村先生が経験したお話を通して、損傷事例を詳細に学ぶことができました。

現代では、ミクストメディア的な様々な材料を使用した作品も多く、その対処方法も課題です。基本的な調査を行い、作者の意図を正確に読み取り、合わせて材料に対する知識や理解を深めることが不可欠であるとお話いただきました。

 

 

先生方、ありがとうございました。

 

 


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本日は、「文化財レスキュー」3日目です。

 

午前1回目の講義は、独立行政法人国立文化財機構文化財防災ネットワーク推進室長の岡田健先生による特別講義「文化財防災の考え方と救出保全活動のための備え」です。

 

 

「文化財防災ネットワーク推進室」は、東日本大震災における文化財救出の対応をふまえ、文化庁と連携した防災ネットワークの構築、必要な人材育成、情報収集・分析・発信を行い、有事に迅速に対応する体制を構築するために国立文化財機構に設置されました。

先生には、実際の災害現場の経験をお話いただき、同じ現場は二度無いけれども、現場に被災文化財レスキュー経験者がいるかいないかでも、状況はかなり変わります。そして、熊本城天守は未指定文化財ですが、熊本市民にとってはシンボルであり、国をあげての修復活動が注目・実現しています。レスキューにおいて、損害があったことへの記録はもちろん行われますが、損害がないことへの記録と評価も行なうべきではないかなど、今後の様々な展望もお話くださいました。

 

 

午前2回目の講義は、国立歴史民俗博物館研究部特任准教授の天野真志先生による特別講義「自然災害への備えと緊急時対応〜課題と可能性〜」です。

 

 

歴史資料ネットワーク(通称:資料ネット)は、地域に伝来する歴史資料の保存・継承活動を行っており、東日本大震災以降、災害対策を含む活動組織として認知されています。

専門家、ボランティアがそれぞれに役に立てる方法とは?資金ゼロベースでもできる段階的コンサベーションの実現に向けてなど、広域ネットワークという社会的潮流の中で、資料ネットが今後どのようにアプローチしていくのか。先生がリアルタイムに考えるボランティアをベースとした組織ならではの課題と可能性についてお話いただきました。

 

 

午後の講義は、一般社団法人RQ災害教育センター理事・事務局長の八木和美先生による特別講義「東日本大震災、熊本地震における災害救援活動と地域の文化の復興」です。

 

 

RQ災害教育センターでは、被災地でのボランティア活動を円滑に進めるための拠点として、近年では大規模な被災に見舞われた殆どの被災地に設置され運営されています。本コースは文化財レスキューをテーマとしていますが、RQ災害教育センターは広義のボランティア支援組織です。

「災害教育」とは?

前代表者が災害現場で活動する参加者たちの「強い学びを得る事実」について名付けました。定説はまだありませんが、「貢献の感情を人格的成長の資源として捉え、教育体系に位置づけるための取り組み」と定義し、RQ災害教育センターの活動映像とともにご紹介いただきました。後半は、先生から「今、ここ(東京藝大上野公園)で災害が起きたらどうするか話し合ってみましょう」と、班に分かれ意見を出し合いました。急でしたが、災害とはそういうものであり、意識的にでも日頃の備えが大事なのだと改めて感じました。

 

 

文化財レスキュー3日目の最後はディスカッションです。

受講生からは多くの質問が出ました。多かったのが、文化財レスキューで自分のアンダーグラウンドを活かすことができるのか?

現状では、現場に入った人が自分の本来の専門を活かしての活動ばかりではなく、総合的判断力を求められること、分野相違による共通言語の問題、何でもやるという意識の重要さがあげられました。

 

 

また、実際にボランティアに参加している方からは、応急処置作業について次の段階(技術的な高み)へ行くことは可能か?との質問も。これは資料ネットでも抱えている一つの問題点のようで、ボランティアの方が活動しやすい方法・道具を工夫しているようです。

今回も時間いっぱいの議論を終え、その後も受講者と先生方の交流が続きました。

 

 

先生方、受講者のみなさん ありがとうございました。

 

次回の実践コースは、「油彩画の修理と仕様設計」をテーマに12月16日(土)~12月17日(日)の2日間、場所は東京国立博物館で行う予定です。まだまだ受講生募集中です!


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本日は、「文化財レスキュー」2日目です。

 

午前の講義は、白岩修復工房の白岩洋子先生によるWS「保存へと導くための写真技法の識別」です。

 

 

写真は私達にとってとても身近なものですが、その歴史や種類の多様性については意外と知らない人が多いのではないのでしょうか?

今回の先生のワークショップでは、写真の歴史を学び、実際の写真資料を見比べながらその特徴を見極め、識別に挑戦しました。様々な文化財にも通じることですが、対象の材料や劣化状態を認識した上で対処法を検討します。その第一歩を学ばせていただきました。

 

 

班毎に異なる写真を選び、識別しました。写真の構造が違えばその劣化状態にも特徴が表れます。

 

 

そして、写真に対するオリジナルと複製の概念が、他の文化財とは違うことにも改めて気付かされました。その価値は一様ではなく、レスキューの現場では、たった一枚の家族の写真が救われることでその人にとってはなにものにも代えがたい文化財が守られることになるのです。とても印象深いお話でした。

 

 

 

午後の講義は、国文学研究資料館准教授の青木睦先生によるWS「アーカイブズの初動レスキューとタイムライン」です。

 

 

日本人は、基本的に外部からの支援を受けることに慣れておらず、災害時もそうなのだという。“支援”は“受援”するための心構えであると青木先生は最初にお話してくれました。

 

レスキューは「初動対応」が重要です。先生が現在まで携わってきたレスキュー事例のうち4件について、受講生が自分達だったらどうするか?現場の状況を想像しながら、先生のレスキューフロー図も参考に話し合いました。その後、各班ごとに発表を行いながら先生のアドバイスを受けました。

 

 

 

先生はご自身の経験から、役に立つ沢山のレスキュー道具をご紹介してくれました。レスキュー用ものが市販されているわけではありません。ローコストで既製品のものを現場に役立つように工夫するのも重要です。アイディア満載です!

 

受講者には実際のレスキュー現場に参加している方も多数おり、熱心に意見交換もしていました。

 

 

 

先生方ありがとうございました。

 


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実践コース3回目「文化財レスキュー」コースは、東京藝術大学の中央棟講義室にて9月29日から10月1日まで3日間行われます。今回も全国から16名の受講者が集まりました。

初日の模様をお届けしたいと思います。

 

午前中の講義は、東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻教授の桐野文良先生による特別講義「被災文化財レスキューにおける保存科学の役割」です。

 

 

天災が起き、レスキューという現場での保存科学の役割と関わり方についてご講義下さいました。先生が手に持っているものは、江戸大地震出火瓦版、安政の大地震の被害調査状況など記したものです。被災により情報が錯綜する中、正確な情報を伝える・得る事がまず大事である。現在にも通じる事です。そして、先生が携わっている大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト(GEM)についてもお話いただき、その後2班に分かれて文化財保存学専攻保存科学研究室と敷地内陳列館で開催されていた「台湾文化を後世へ伝える」展の見学を行いました。

 

保存科学研究室の見学

陳列館展示の見学

 

 

午後は、東京都立中央図書館資料保全室の見学です。

 

 

「災害から資料を守り、救うために」というテーマで、資料保全専門員の眞野節雄さんに中央図書館での資料防災マニュアルについてご説明いただきました。

 

 

やはり資料にとっての大敵は水です。その中で、近現代の書籍等に一般的に用いられている“塗工紙”の特性とそのレスキュー事例について、映像を交えながらご説明いただきました。特別に書庫も見学させていただき、実際の資料保管状況について学ぶ貴重な機会を得ることが出来ました。

 

 

 

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