素材革命が脱炭素に希望の光を 

連日の猛暑が続いています。日本の各地で39度を超える猛暑が記録されています。この暑さは日本だけでなく、世界中に訪れています。地球温暖化による気候変動の危機は何年も前から警告が発せられてきましたが、いよいよ現実味を帯びてきました。

 

地球を温暖化させるCo2など温室効果ガスの年あたり放出量は、2019年をピークをつけ、2020年はコロナ禍のせいか、少し減少しましたが、大気に滞留しているガスの総量は今も増え続けています。仮に2050年に温室効果ガスの放出をゼロにできたとしても、それまでの間、毎年ガスを放出し続けるのですから、地球の大気中の温室効果ガス濃度は上昇し続けます。

 

このことから、温暖化のトレンドは少なくとも2050年まで悪化の一途をたどります。現在の日本の夏の気温はまだ40度未満にとどまっていますが、30年後、一体どこまで上がっているのか、考えるのも恐ろしいくらいです。脱炭素の達成は必須であり、一刻の猶予もありません。

 

この脱炭素ですが、エネルギー問題さえ解決できればそれでOKだと思っている人がいたら、それは間違いです。そんなに甘くはありません。EPAのデータによると、温室効果ガスの原因をセクター別に見た時、エネルギーは25%であり、農業牧畜関連が25%、産業関連が21%、運輸関連が14%、建物が6%、その他10%となっていました。

 

 

エネルギーの脱炭素を達成しても、温室効果ガス放出は、全体の4分の1しか減らないのです。農業牧畜関連の影響はエネルギーと同じくらい大きく、大問題ですが、産業関連の21%も重要で、頭の痛い問題です。中でも、プラスチックに関しては、一体どのように解決すれば良いのか全くわかりませんでした。

 

プラスチックはゴミとして海に流されると海洋生物の生態系に悪影響を及ぼすので、最近はすっかり悪者扱いです。しかし、プラスチックという素材は大変便利で優れたものであり、我々の生活には欠かせないものです。身の回りにはプラスチック製品が溢れており、プラスチックのおかげで文明的な生活を送れているといっても過言ではないでしょう。今やプラスチックなしでは生きていけません。

 

プラスチックの脱炭素を進めるには、温室効果ガスを出さない代用品が必要ですが、そんなものがあるのでしょうか?このように考えていましたが、週刊東洋経済の記事を読んでいて、LIMEXという素材があることを知りました。このLIMEXは、日本のTBMという会社(2011年設立の新しい会社です)が開発したもので、紙とプラスチックの代替となるものです。

 

LIMEXは主要原料が石灰石であり、石油由来のプラスチックの使用を大幅に減少させることができます。しかも、使用済みの製品を回収すればマテリアルリサイクルが可能です。石灰石は世界中に豊富に存在している資源であり、日本にもあります。会社のホームページによると、LIMEXの製品はプラスチックに比べて20%から60%くらい(成形方法や比較対象のプラスチックの種類によって異なります)温室効果ガスを削減できるとのことです。

 

TBMという会社は環境問題、社会問題に真剣に取り組んでいます。工場で使用する電力は100%再生可能エネルギー由来のものだそうです。横須賀市と連携し、市内の家庭から出るプラスチックゴミ(従来は燃えるゴミとして焼却されていたもの)を集めて横須賀にあるリサイクルプラントにてマテリアルリサイクルに取り組んでいます。ホームページによると以下の通りで、プラスチックゴミをLIMEX製品に作り変えることができるとのこと。

 

LIMEXは主成分となる炭酸カルシウム等の無機物と熱可塑性樹脂から構成される複合 材料ですが、その主要構成素材である無機物と熱可塑性樹脂を分離することなく既存の設備で再生利用が可能である ため、LIMEX 製品は単一素材で設計された製品と同様、再資源化が可能です。

 

 

LIMEX、素晴らしい素材ではありませんか。なお、LIMEXは紙の代替も可能なので、森林資源を保全することにも寄与します。

 

前述の通り、脱炭素を達成するためには、エネルギーや運輸部門だけでなく、さまざまな業界に変革を起こす必要があります。LIMEXはプラスチックの脱炭素という、難易度の高い課題に対して解決法を提示し、大きな希望を抱かせてくれる素晴らしい素材です。そして、それを開発したのが日本のスタートアップだ、というのはとても嬉しく、誇らしく思います。LIMEXとTBMを皆で応援しましょう。