ドナウ川クルーズの旅(メルク修道院)
国境の街パッサウを過ぎて、船はオーストリアに入り、八日目の朝メルクに到着しました。メルクにはメルク修道院があります。ガイドブックによると、バロックの至宝と言われる華麗な建物だと書かれています。実際、修道院というより宮殿といった方が良いくらい豪華で立派な建物でした。
ガイドツアーで中に入ると美しい室内に多くのお宝が飾られていました。マリーアントワネットがウィーンからパリへと嫁ぐ際に、このメルク修道院へ立ち寄ったそうです。
この修道院には貴重な写本を多く所蔵する有名な図書館が付属しています。ウンベルトエーコの「薔薇の名前」という小説をご存知でしょうか。中世の時代、修道士が図書館で写本作業に没頭する中で起きた殺人事件を捜査する話ですが、話の中で盛んに宗教議論が語られ、その理解が難しい小説です。この舞台になったのがメルク修道院だそうです。私が小説を読んだ時に想像した修道院よりはるかに華麗な建物でしたが、通常では訪れることがないでしょうから、クルーズに参加した甲斐がありました。
午後、船に戻り、またドナウ川を下ります。この日の午後は、ドナウ川クルーズのハイライト、といって良い、ヴァッハウ渓谷を通過します。
渓谷と言っても、多くの日本の渓谷よりも川幅が広く流れは緩やかです。川の両岸は谷になっていますが、傾斜がそれほどきついわけではありません。船のデッキから河岸を眺めていると、次々と古い建物や城跡、美しい村が現れます。リバークルーズの醍醐味を味わえる、楽しい午後でした。