今日の新聞では沖縄復帰50年を迎えて、関連する記事が多く記載されていました。私はたまたま先月、沖縄へ1週間ほど旅行に行ったこともあり、沖縄の問題を身近に感じています。毎朝NHKの朝ドラを見ていることも影響しているのでしょう。

 

先月の旅行では、レンタカーを借りて、沖縄本島の北は辺戸岬、大石林山から古宇利島、沖縄美ら海水族館など、中部は海中道路、アメリカンビレッジなど、そして南部ではニライ橋カナイ橋、おきなわワールド、平和記念公園などを見て回りました。

 

ホテルは、前半はハイアットリージェンシー瀬良垣に泊まり、後半はアメリカンビレッジにあるレクー沖縄北谷スパ&リゾートに宿泊しました。

 

欲張ってあちこち見て回ったのですが、辺野古基地の現場や普天間基地のそばに行く時間はありませんでした。それでもアメリカンビレッジに泊まって、中部周辺をドライブすると、嘉手納基地の横を何度も通りますし、米軍施設をあちこちで目にしました。

 

観光目的の旅行なので、風光明媚な観光地を中心に見て回ったのですが、平和記念公園の資料館で見た内容は強く記憶に残りました。太平洋戦争で犠牲になった沖縄の人々の苦難、特に日本軍の兵士が沖縄の人々に対して行った暴虐な振る舞いの数々は、私があまり認識していない事でした。沖縄の人々が日本政府や本土の日本人に対して恨みや不信感を持つのも無理はありません。やはり現地を訪れてこそ分かることがあるのだと思いました。

 

アメリカンビレッジは元米軍の飛行場でしたが、返還され、アメリカの雰囲気を醸したリゾート地域として開発され、ホテルやレストラン、ショッピングセンターができています。米軍基地が近いこともあり、近くの海岸では米軍の関係者と思われる多くの外国人が散策やピクニックなどして楽しんでおり、また、レストランの客も外国人が数多くいます。まさにアメリカンな雰囲気たっぷりです。

 

先月沖縄へ旅行した体験を背景にして、沖縄復帰50年を機に、2点感じたことがあります。

 

1点目は、平和記念公園の資料館で記録されている沖縄の犠牲に関して、その詳細があまり日本人に知られていないという点です。もっというと、明治以降、日本政府が進めてきた他民族(アイヌと沖縄)の同化政策の負の部分を隠してきた、あるいは触れないようにしてきた、という点です。

 

誰しも、自らが犯した過ちには触れたくない、忘れたい、無かったことにしたい、という気持ちが働きます。権力を持つ人であればなおさら、自分の過去を美化したい、失敗は隠したい、ましてや犯罪行為は無かったことにしたい、そのように考えるのは当然でしょう。そしていつしか過去のマイナスの部分は都合良く忘れてしまうのです。

 

加害者側が犯した行為を忘れたとしても、被害者側はいつまでも覚えているものです。人間とはそうしたものでしょう。残念ながら過去を修正することはできません。無かったことにはできないのです。しかし、修正できない以上、いつまでも過去の出来事にこだわっているのは生産的とは言えません。我々は過去に生きているのではなく、未来に向けて生きているのです。過去を忘れず、しっかりと認識した上で、より良い未来を形作るにはどうすれば良いか?そのような前向きの態度こそ重要であり、未来のためにこそ、過去の歴史を知る意味があるのだと思います。

 

2点目は、沖縄の発展に関してです。今日の新聞でも記載されていますが、沖縄の県民所得は最下位だとのこと。沖縄のインフラ整備は進んできたし、観光業は発展したとのこと。確かに立派なホテルが次々と作られてきました。先月の旅行でも感じましたが、道路は道幅が広く運転しやすい。あちこちで新しく、かなり大きなショッピングセンターを目にしました。つまり、これまでインフラは発展したけれども、必ずしも所得の増加に結びついていない、ということですね。

 

当面、沖縄の米軍基地がなくなることはないでしょう。米軍基地の存在は多くの悲しい事件を引き起こしてきたのだから、沖縄の人々が嫌がるのは無理ありません。しかし、嫌っているだけでは前向きとは言えません。先月、アメリカンビレッジを訪れて、日本にいながら感じられるアメリカンな、独特の雰囲気を味わいました。これは他県には無い、沖縄独特のものです。これをうまく活かす方法があるのではないか。アメリカのカルチャーと沖縄の文化と融合して新しい付加価値を生み出すことができるかもしれません。

 

沖縄は本土から遠く離れているので、物流に費用を要するし、土地が狭いし、水も不足しているので、製造業の立地には向いてないと感じます。一方で、上海、台湾、香港、フィリピンなどとの距離は近いので、この立地を活かす方法があるのでは?と考えました。米軍が基地を沖縄に置いているのは沖縄が地理的に重要な場所だからでしょう。その立地を活用して経済発展に繋げる道があるはずだ、と。

 

最近、日本経済は成長力が衰えていますが、お隣中国の経済は大きく発展しています。中国経済の発展を支えているのは上海や香港など海沿いの都市です。また台湾の経済成長も著しいものがあります。これらの都市と地理的に近い沖縄は、経済発展のポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。シンガポールが東南アジアの中で地理的な利点を活かして発展したように、沖縄も工夫次第で発展する可能性があると思います。

 

沖縄が復帰して50年、今でも沖縄には多くの米軍基地が残されていますが、ロシアが突然にウクライナに侵攻した事態を目の当たりにすると、単純に沖縄から米軍基地を返還させることがベストとは言い切れません。本土の人間として、私は沖縄県が米軍基地を受け入れてくれている事に感謝しつつ、沖縄の文化、経済発展を祈念いたします。