私は株式投資を通じて、人生において重要な多くの事を学んだように思います。その一つに「損切り」に対する気持ちのコントロールがあります。このブログ上で、投資においては感情をコントロールすることが重要だと記載しました。感情のコントロールの例として、「損切り」に対するマイナスの感情、損切りをしたくない、という気持ちをコントロールすることが挙げられます。

投資家に限らず多くの人は損切りを嫌がります。損をしたくない、という気持ちはとても強力で、これを克服できる人は稀かもしれません。私も長い間、損切りができませんでした。これまでの投資で失敗を数多く繰り返してきましたが、それは損切りを素早く行えなかったことが原因です。持株が下落しているのに損失を出すのが嫌で、いつまでも売却せずに放置し、その結果傷を深くして、どうしようもない状態になってから渋々売却して後悔する。そんなことを何度も繰り返しました。

この、損失を出したくない、あるいは、損失を確定したくない、という感情は株式投資だけではなく、あらゆる局面でみることができます。例えば、昨年の2月から3月頃、新型コロナウイルスが流行し、政府が緊急事態宣言を出して、人出が減って、多くの飲食店が被害を被りました。あの時、早めに店を閉めて飲食業から撤退した人は損切りができる人です。

ですが、多くの飲食業経営者は店を畳むという決断をすぐにはできなかったと思います。今でも我慢しながら飲食店の経営を続けている事業者は数多いことでしょう。店を続けたいという経営者の心理はもっともです。自分の人生をささげてきた店を手放すのと株を売却するのとでは重みが全く違います。そんなに簡単に店を閉めることなどできないでしょう。ましてや、飲食店の経営者は何の落ち度もないのです。感染症の流行など予想できるはずはないし、経営者の努力では如何ともし難いことです。

今の時点で、飲食店の事業を継続するか、それとも飲食業から撤退するか、どちらが望ましいかなど誰にもわかりません。政府は早期にワクチンを摂取して感染症の流行を抑えようとしています。うまくいけば今年の秋には流行が抑制されて、飲食店に客足が戻ってくるかもしれません。でも、それは1年先か、2年先になるかもしれません。難しい選択です。

株の売買に話を戻すと、損切りとは、将来どうなるかわからない状態で損失を確定させることであり、それはなかなかに難しい行動です。私のいう、感情のコントロールとは、こういった難しい状況において、冷静に、理性的に行動すること。です。

株式の価格変動は、自分が過去、いくらで購入したか、という点など全く関係なく生じるものです。そして、基本的には将来の見通しに基づいて変動するものです。ですから、自分が購入した株の価格ではなく、将来の見通しによって判断する必要があります。将来の見通しが悪化して、株価が下落すると思うのなら売却すべきです。これができる人が感情をコントロールできる人です。

感情をコントロールし、平気で損切りできるようになると、理性的に行動できるようになります。自分の状況を客観的に見つめ、判断できるようになります。株を購入したのは過去のことで、過去の出来事を遡って修正することはできません。株価が下落していたとしても、その損失を無かったことにはできません。今からできることは、その株を保有し続けるか、売却して別の株を購入するか、のどちらかです。今保有している株よりも、より望ましい株式があるのなら、躊躇なく乗り換えるべきです。冷静に考えれば当たり前のことですが、感情をコントロールできないと、このような行動は取れません。

「感情をコントロールすること」これは、人生の様々な場面で必要とされるスキルだと思います。ですから、是非身につけることをお勧めします。別に株式投資でなくても良いのですが、株式に投資すると、損切りをすべきかどうか、迷うケースが度々生じます。ですから、投資を通じて感情コントロールのトレーニングをすることになります。実践的なトレーニングです。やってみると分かるのですが、決して簡単ではありません。でも、これができるようになると得るものは大きいです。投資により自分の資産が増えるというメリットがありますが、それだけではなく、というか、それよりも重要な物を得られるでしょう。