退職により退職金をもらった。大事に使うべきだが、気持ちは大きくなりがちだ。
退職の記念に何か欲しいと思って何を買うか考えた。以前から鉄瓶が欲しいと思っていたことを思い出した。どうしても必要というわけではないが、伝統工芸の品物に関心があったし、鉄瓶でお湯を沸かすとお湯に鉄分が染み出して体に良い、とか、お湯の味がまろやかになる、といったことを聞くと欲しいなと思えてくる。
鉄瓶といえば南部鉄器だろう。他に思いつくものはない。そこで南部鉄器のことをネットで調べてみた。ウィキペディアによると奥州市と盛岡市の2系統あって、この2つを南部鉄器と言っているらしい。最近南部鉄器の鉄瓶は人気があって、物によっては2〜3年待ちという物もあるとか。本当にそんなに人気なのだろうか。百貨店へ行けば売ってると思っていたので驚いた。とにかく百貨店へ行ってみる事にした。
百貨店に行くと、鉄製のポット(急須)はカラフルなものが一杯売られているが、鉄瓶は少ない。急須もお洒落だし、お湯が冷めにくいと言った特長はあるが、鉄分が染み出すと言ったメリットはない。欲しいのは鉄瓶(湯沸かし)である。かつ、「伝統的工芸品」の物が欲しい。「伝統的工芸品」とは「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」に定められた要件を満たす物であり、平成30年11月現在、経済産業大臣が指定する「伝統的工芸品」は全国に232品目あるとのこと。伝統的工芸品産業振興協会
百貨店を探しているうち、銀座三越で山形鋳物の鉄瓶を見つけた。山形鋳物のことは全く知らなかったが、見た目は良さそうだったので、もう少し調べてみることにした。南部鉄器と同様、伝統的工芸品に指定されており、歴史も古く、技術的にも優れているようだ。知名度では南部鉄器に劣るが山形鋳物の品質は大変優れており、高い評価を得ている。ややマイナー嗜好の私は俄然山形鋳物への興味が湧いてきた。鉄瓶といえば多くの人は南部鉄器を思い浮かべるだろう。ならば私は山形鋳物の方を購入したい。皆が欲しがるものではなく、あまり知られていないが実は優れている、といいう物が好きなのだ。
そういえば、タジン鍋もエミールアンリを選んだ。以前、タジン鍋に関心を持ってネットで買ったのだが、その時、ル・クルーゼではなくエミールアンリを注文したのだ。フランスのキッチンウエアといえば、多くの人はル・クルーゼを思い浮かべるだろう。だがエミールアンリの歴史も古いしその陶器で出来たキッチンウエアはとても美しい。そのタジン鍋は気に入っており、朝食のおかずはいつもタジン鍋を使って作っている。
話が逸れた。ネットで調べて考えた末、やはり山形鋳物の鉄瓶を買いたいと思ったが、再度比較のためいくつか百貨店や伝統的工芸品を扱っている店青山スクエアなどを歩いて回った。でも銀座三越で見た山形鋳物の鉄瓶が一番良いな、と感じて結局銀座三越へ行って購入した。
今回、買い物をきっかけに、鉄瓶のことや伝統的工芸品のことなど知らなかった事を色々調べて知ることができた。とても興味深く思ったし、楽しかった。毎日鉄瓶でお湯を沸かしているが、お茶を飲むとまろやかな感じがする。何より鉄瓶は素朴なデザインだが渋くて良い。見ているだけでも満足感がある。買って良かった。