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  George WestwoodとBreakfast meetingを終え、私は、渋谷・宮益坂の事務所へTaxiで移動した。夕方のアメリカン航空出発便をGrab(間に合うように)するために、Pile-up(残務)の整理に取りかからねばならなかったからだ。 


 Fei Feiには、浅草見物とか、夕飯を、六本木に連れて行けとか、ぶうぶう文句を言われたが、その代わりに、Fei Feiも連れてゆくことで、何とか、すねた猫をなだめすかすことができたと思う。Fei Feiの兄も、休暇なので、追っ付け、San Franciscoで合流することにした。 これから、私には、いや、正確には、私とFei Feiには、重要なMissionが待っている。今回は、遊びで、Californiaに飛ぶ訳ではない。 松下が大学に留学中の娘のところに泊めてもらっている、その理由を知りに。 娘がトラブルに巻き込まれたのは、間違いないが、その詳しい状況は、まずは、現地で松下とface-to-faceで膝をまじえて話さなければ、始まらない。 


欧州と米国の外資系企業で主に戦略立案と実施する部隊を統率するMarketing部門での勤務後、コンサルタント業務をなりわいとして、独立起業して、欧米での人脈・友人からのクライアント紹介も含めて、順調な受注、売り上げを達成できてきているので、そろそろ、assistant(※)でも、雇おうか、その方が、電話の取次ぎとか、手紙の発送とか、日常の雑務で時間をConsume(浪費)することもないだろうと、思い始めていた矢先の、≪松下の失踪≫だった。いや、正確には、松下は、失踪したわけではない。 ただ、いつも来るべき夜に、来るべきBarに現れず、大阪で弁護士をやっている弟からの電話で松下とその晩は会えないことを知らされ、ANAホテルで弟と飲み、また、西麻布のDead End Barに戻り、飲み直したところまではよかった。。。


 思えば、米国勤務時代も、そうだったが、私の人生はにぎやかな人生だったといえるだろう。波乱万丈という表現でもよい。 


残務整理をしているとき、Fei Feiから事務所に電話があり、"Guess what ? I came to get two American Airline tickets to Bay Area!! ". と言われた。 San Francisco周辺のことをBay Areaという。海や湾のそばだからという単純な理由で、Simpleだ。


"Good girl, sweetie. See you, later, probably at 1:30 p.m. ANA Limo Bus Stop toward Narita Airp. Right ?"

"Yep. No Problem. But, be sure to take me to Asakusa, when we come back to Tokyo. Right ?"

"Sure, Count on me! "


それから私は、手早く、仕事を片付け、事務所をダブルロックし、ノートPC入りBrief Caseを携え、ANAホテルに向かった。 今日は、ANAホテルは、これで2度目だ。昨晩から数えれば、3度目だった。。。


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※解説: 欧米では、最近こう呼ばないと、女性蔑視となる可能性もあり、また、秘書が必ずしも女性だけとは限らないので。実際にJin(私)の米国勤務時代のGroup Secretary(部門付き秘書)たちは、女性2人と、男性1人だった。

≪To be continued.......≫

Sportsbar K


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  George Westwoodとふたりだけで、2階のCafeに座り、GeorgeはAmerican-styleの朝食を頼み、私も同じものを頼んだ。 ただし、GeorgeはOrange juiceを、私は、Grapefruit juiceを、それぞれ注文した。20代のウェイトレスは、明るく、"Sure, anything else ?"と言い、Georgeが、"That's fine, thanks."とこたえた。 Georgeは、よくみると、TVのインタビューでみたときよりも少し若く見えた。あごひげとくちひげを生やしていたが、童顔のせいかも知れない。 それでも、私よりは5つ年上だったが。


「Jerry, 単刀直入な質問で申し訳ないが、この2~3週間、私の元妻であるMeredithから電話があり、話したことは?。。。」


私は、水を一口飲んでから、息を整え、それからゆっくりと話した。

「こうして初対面の相手に、Privateな質問をするのが、アメリカ流なのか? まあ、いいだろう。いいや、この10年間、一度もない」 私は、うそをついた。待てよ、私はうそはついていない。先ほどFei Feiから受け取った手紙は別にしてという意味なのだから。


「手紙もか?」

「いいや。なぜ?」

「そ、そうか。実は、Meredithとは正式に離婚が成立したものの、双子の息子達とは、3ヶ月に一度会う約束をしていた。 しかし、私の撮影のスケジュールが立て込んでおり、映画を撮り終えて以来、連絡がとれないでいる」

「なるほど。それで、日本には、何を? 次の作品の打ち合わせに?」

「封切り前の、プレミア、記者会見、パーティ出席のためだ。それを利用して、君を探し当てた。迷惑だったかな?」

「とんでもない。でも、いつでも必要なときには連絡してくれ。私のBusiness Cardを渡しておくよ」そういいながら、私のオフィスの名刺を裏返し、英文の方をみせながら、伝えた。

「ありがとう。助かる。もし、仮に、あくまで仮の話だが、Meredithから連絡があったら、私のメールアドレスかVoice message box(=留守電)に、連絡を送ってほしい。お願いできるね?」

「No problem and got you.」

その日は、短い朝食で終った。 Georgeが、「Would you like to have some more coffee ?」ときいたが、

「I don't think so. But thanks, anyway...」と、丁重に断り、東京での良い滞在をと言い、ANAホテルをあとにした。


≪To be continued.......≫



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George Westwoodと、溜池のANAホテルのロビーで待ち合わせていた。 Georgeが指定していたとおりに、きっかり、11:30に。 英語でいえば、11:30 Sharpだ。 相手は恐らく時間に正確なはずと考えた。世界的な売れっ子映画監督の3人のうちのひとりなのだから。 そんな売れっ子が、この私とLunchを食べながら折り入って話したいことがあるとの電話を、昨晩、突然もらった。 Chineseのかつての米国企業時代の同僚Fei Feiは、私の家においてきた。 いや、正確にに言うと、置いてきたはずだった。。。 


というのも、チェックイン&チェックアウトのカウンター前の植え込み越しにみえるソファから、私を、いたずらっぽく監視している視線に気付いたからだった。 "Jesus Christ!"と、私は心の中で思いつつ、Fei Feiに向かって、やれやれしょうがない子だという意味で、頭を横に振った。 Fei Feiは、にっこり笑い返していた。 


やがて、2mを超えるレスラー風の白人二人にエスコートされて、客室階のエレベーターホールから、Geogeが私に向かって、歩いてきた。私は、時計をたしかめた。約束の時間の実に10秒前だった。 


「Jinいや、Jerry、急に呼び出してすまなかった。さ、さ、2階に席を用意してある。行こうか」

「オ、オーケイ。その前に、この二人の紳士を紹介していただけますか?」

「おまえたちは、もう引き下がって良い。すまなかった、私のボディガードだ。さあ、2階へ」

私とGeorgeは、ゆっくりとANAホテルの2階へ、エスカレーターで上がっていった。 その間、ゆっくりと時間が流れていた。まるで、滝の流れ落ちるような感触で。。。


To be continued.......



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 Meredithの歌う曲の中で、一番好きだった、あるいは、今でも気に入っている曲を選ぶのは難しい。でも、あえて、どれが好きかときかれれば、私は迷わず、≪I'm in the mood for love.(恋の気分で)≫とこたえる。 大好きな10曲の中から、なぜこの曲なのかは、明確な裏付けがある。 いや、あったというべきか。 当時のMeredithと私との間に。。。


Bobの紹介で、初めてMeredithと会ったとき、心臓の鼓動が早くなり、Jazzの名曲中の名曲Take Fiveを初めて聞いた瞬間のように、そして、Bosa Novaの名曲、ワンノート・サンバのメロディとリズムで、頭の中が一杯で、表現する言葉すら失い、2時間以上、地球の自転と世界時間が止まったように思えた。 


そのSan FranciscoのBarで、ほかの客は誰もいなくなり、唯一、私とMeredithと、Bobと、店員だけになると、さきほどまで演奏していた、Aflo-AmericanのPianistが、≪I'm in the mood for love.≫を、絶妙のTimingで、Intro.を弾き始めた。 それに合わせて、Meredithが私に、「Danceしない?」ときいた。 私は、Bobの顔をみた。 


Bobは、何も言わず、肩をすくめて、ただ笑みを浮かべるだけ。 


やがて、私は勇気を振り絞り、優しく、そっと、左手で、Meredithの右手を捉えた。 私の右手は、彼女の腰に、Meredithの左手は、私の右肩に柔らかく添えられた。 そして、曲の進行が進むにつれて、私たちの距離は徐々に縮まってきていた。 Meredithの息使いと、heart beatも、聞こえてくる距離だった。 二人とも、ほろ酔い気分で、 回りの出来事は一切Shut-outされたかのごとく、何も見えなかった。 時々、互いに見つめ合うとき、Meredithは、はにかんだような笑みと白い歯を私に見せた。 そして、また、私の右肩に、左の頬を預けもたれかかってきた。 そうこうしているうちに、二人きりで、Meredithのアパートで、踊っているような錯覚にとらわれた。

 私は、夜の波間に静かに揺られるヨットのように、スローステップを繰り返していた。 Meredithは、それに呼応するかのように、私に身を任せていた。 今にして思えば、それが、すべての始まりであった。。。


《To Be Continued...》



Meredithが最初に私に言った言葉を今でもはっきりと覚えている。


"Hi! Glad you invited me to a nice bar, 'Cause I was missing a glass of beer. Especially after singing hours long, getting thirsty..."


まるで映画のワン・シ-ンのように。思えば、この数年間というもの、

何度も何度も私は再生ボタンを押し続けていたのかも知れない。

ときにはスロ-モ-ションにし、あるときは、目を閉じて、Mere.(Meredithの愛称)が親しみをこめて私をみるBlueの瞳にとらえられ、すぐには返答することができなかった。。。


「どうした、Jerry、あいさつしろよ」Edから促(うなが)されて、


ようやく私は、Mere.の顔と、Edの顔を、交互にみた。  Meredithは、肩をShrugし、そのあと、握手を求めてきた。これほど柔らかく、優しさを感じさせ、包み込まれるような手に触れるのは、そのときが、私の人生において、初めてだったろう。


"Hi, I'm Jerry. nice to meet you..." Meredithの金色の髪が少し波打ち、そして、少女のような笑みをみせた。。。 その瞬間を、恐らく、私は、一生忘れないだろう。


プルッ、プルッ、と、2回、突然私の携帯が鳴り、またもや、現実に引き戻された。

"Hello?" 私は、ゆっくりと、静かに応えた。まだ、夢から覚めていなかった。

"Hello, I'd like to speak with Jerry."

"This is he. May I ask you who you are, sir ?"

"George Westwood. Nice talking to you. "

George?? 思わず、私は、耳を疑った。 なぜ? いずれは、話さなければならなかったが、

これほど早くとは、予測していなかった。

"Geor,...George? What can I do for you ?"

"Well, I'm Ex-husband of Meredith, as you may know.

Could we have luncheon meeting at ANA hotel, tomorrow ?"

"Well, well, I'm a bit confused. Why will I have to ?"

"You'll see(← それは、会えば、わかる)." そこで、通話は、ゆっくりと切れた。

着信番号を調べたが、ANAホテルの代表番号に似たナンバーだった。


Fei Feiが、彼女の兄との会話を終え、携帯を手に戻ってきた。 

"What's up ? Jerry ?"

私は、Fei Feiの目をみた。  Fei Feiは、私の先ほどまでの電話の相手を、瞬間、察したような表情をした。 

"What's going on ? That's I would like to ask someone."

私は、頭を振った。 Fei Feiは、信じられないという感じだった。私も、信じられなかった。。。


<To be continued...>




cockpit2



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 FeiFeiが私のラーメンを、うまそうに、すすっている間、私は、再び、米国時代の恋人、Meredithのことを想い出していた。 


 かつて、愛しあったgirlfriendの思い出にひたることで、傷をいやしているのかも知れない。 私も、例外ではなかった。 あるいは、いくつかの情景、デートの何気ない会話、ときには、ちょっとした口論、仲直り、お互い、ともに笑い、映画に一緒に行ったときはともに涙を流し、けんかをしても、それが、遠い過去のように、秋風と波打ち際の水泡にきれいに洗い流され、一年中で一番さわやかで、のんびりとした時期をむかえ、やがて、何千キロも離れていても、お互いを思いやる気持ちといとおしさがつのる日々、そして、走馬灯と、流星が通り過ぎ、今の私と、今現在のMeredithがいる。


 Meredithは、私に、何を伝えようとしているのだろうか?  もし、彼女の手紙の行間に隠された《何か》を読み取ることができれば、今日一日の出来事に、論理的な、いや、この際、論理的でなくても良い、何かしらの説明かヒントを与えてくれさえすれば、謎を解くことが出来るはずだ。 


 もう一度、私は、Meredithと、最初に出会ったBarでのひとときに、思いをめぐらすことにした。 理由は分らないが、なぜか、そうすることによって、≪松下≫が、San Franciscoに突然飛んだわけも、わかるような気がした。 ちょうど、霧と小雨でおおわれた、赤いGolden Gate Bridgeの欄干が、徐々に、晴れ上がって、姿を現す、秋の朝に、それは、似ていて。。。



《To Be Continued...》




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 その時、突然、FeiFeiが、言った。 


「わたし、ラーメンか、おでんが食べたかったのに。。。」

「Say that again, will you (何だって) ?」

「ラーメンよ、日本のとっても、おいしいやつ!」

「い、いまから?」

「そうよ」

「明白了(min pai ra-: わ、わかった)。 今から、ぼくが作るから。 馬上回来(ma shan hoi rai 少し待って)」

「O.K. I will wait for yours. While you cook it, I will call my brother」

「Yep. Take your time(ごゆっくり)」


 それにしても、ものすごい食欲だ。 やはり、外国人のPowerはちがう。 Fei Feiの兄は、現役の陸軍特殊部隊にいる。 通常は、横須賀にいる。 Gulf War(第一次中東戦争)にも参戦した猛者で、沖縄にも、一時期駐留していた。 もし彼が来れば、鬼に金意棒だ。 まあ、あの屈強なBody Guardに対抗するためには、万全な防備体制にしたいと思う。 その方が、得策だ。


《To Be Continued...》




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 私は、同封されていた写真3枚を、一枚、一枚、ていねいにみた。 

Meredithは、今ごろ、どうしているのかと、この1ヶ月間ほど、気になっていた矢先だった。


  最初の写真には、別れた夫Georgeとの家族写真、そして、2枚目に、Meredithの妹Julieと両親の写真、だが、私は、3枚目の写真で、釘付けになり、思わず、凍りついてしまった。 さっきまで、私とフェイフェイを尾行していたと思われる、≪ロシア人とレスラー風の屈強な男≫が、Meredithと子供とGeorgeと、Half Moon Bay(カリフォルニア州)のBeachに立っている姿が。。。


私は、その3枚目の写真をみて、ようやく、合点がいった。 


  紛れも泣く、彼らは、元・夫GeorgeのBody Guardだった。 そして、Meredithと子供たちを、かつて、守っていたかも知れない。ということは、待てよ、Meredithが来日することを、見越して、GeorgeとBody Guardsたちも、あとを追跡するようにして、飛んできたということか?  「まだまだ、謎があるな」 私は、独りごとを言った。 だが、解けない謎ではないはずだ。 世の中に、およそ、人間関係で、解けない謎はないというのが、私の持論だった。。。 


《To Be Continued...》




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 George Westwood --- それは、私のかつての恋人Meredithの、別れた元・夫の名前だった。 偶然の一致とは思えなかった。あまりにも、突然、いろいろなことが、夕方の大粒の雨のように降りかかってきたため、私は、ばらばらのジグソー・パズルを前に、困惑していた。  


 私は、ウイスキー・グラスをサイド・テーブルに置き、ゆっくりと立ち上がった。西麻布のBarで篠原から受け取ったMeredithからの手紙を、玄関のハンガーに掛けたジャケットの胸ポケットから取り出し、再び、ソファに戻った。 まだ、開封していなかった手紙に、今回の一連の出来事を紐解(ひもと)く、何かヒントとなるものが、この手紙に隠されているとしたら、どうだろう。私は、レター・オープナーで、慎重に、開封した。 


 封筒の中からは、Meredithからのメッセージが7枚の便箋にわたって、ていねいにタイプされていた。 最後には、Meredithの自筆のサイン。 そして、"Lots of love"と、これまた彼女の筆跡で書かれていた。 ≪Meredithより、愛をこめて≫と。 


 私がじっくりと読み終えたときに、フェイフェイが、目の前に、心配そうに、あるいは、いたずら子猫のような丸い瞳で、私を見つめていた。 「どう? 久しぶりのMeredithからの手紙。 もしかして、またデートの申し込み?」
 私は、すぐには答えず、ひとつ深呼吸をした。 「どうかな? でも、近況を知らせる手紙で、今月中に子供をつれて、来日すると書かれている」
「えっ? 本当? 」
「ああ、間違いない。読んでみてくれ」
「いいの? 読んじゃって」
「No problemだ。但し、やきもちは焼かないでくれよ」 私が、いうと、いたずらっぽく、フェイフェイは、笑った。そのあとは、真剣な表情で、Meredithの手紙を、読んでいた。 その間、お互い、一言も、話さなかった。 

 私は、同封されていた写真3枚を、手にしていた。 その写真を、ながめながら、しばし、甘い恋人時代の想い出にひたることにした。。。


《To Be Continued...》


「フェイフェイ、先にシャワーを浴びてきていいよ。 ぼくは、Bose(*)のスピーカーで、Jazzでも聞いているから」 

「ありがとう。今日は、いろんなことがありすぎて、疲れたわ。シャワーのあとは、ベッドで横になってもいい?」

「Of course. Why not ? ぼくも、へとへとだ。 やれやれ~」

私は、言いながら、柔らかいソファに、どっかり、腰をおろした。


そして、ソファの左横のBoseのPower Switchを、軽く押した。 あとは、自動演奏にされる設定にしてある。 と、突如、映画≪Body Guard≫の主題歌が、ゆっくりと、流れてきた。 甘いメロディー、ただし、力強いハートを湛(たた)えた、Whitney Houstonの歌声。。。 思わず、酔いしれた。


ソファの右横のマガジン・ラックから、「世界の特殊部隊」という雑誌を、おもむろに、取り出した。

「さっきの金髪のクルー・カットは、ロシア軍特殊部隊を思わせるような体つき、そして、歩き方だった。確か、ドキュメンタリー映画でみた記憶がある。 でも、私の、単なる思い過ごしであれば、いいが。。。」

私は、そう思いながら、ページをめくり始めた。 やがて、14ページ目のロシア特殊部隊の写真で、私の手がとまった。 


「待てよ、そうはいっても、だれかのBody Guardの可能性だって、残されている。 私たちが、ホテルを立ち去るとき、何か、たったひとつのミスをしてなかっただろうか?  あるとすれば、彼らの会話をききとるべきだったかも知れないことか。。。 そうだ、フロントに電話すれば、何か、分るかも知れない」


私は、フェイフェイのバッグを開け、ルーム・キーの入った袋をみつけ、そこに書かれている≪全日空ホテル≫の電話番号をみながら、携帯に、打ち込み、通話ボタンに人差し指で、触れた。通話音が、2度鳴ってから、フロントの女性がこたえた。 


「お待たせしました。全日空ホテル赤坂でございます」

「あ、すみませんが、30分ほど前に、ロシア系の白人で、金髪のクルー・カットのお客さんが、チェック・インしませんでしたか? あ、私の名前は、ジミー倉田と申します。日系アメリカ人ですが、友人のロシア人をさがしているのですが、まだ、連絡とれなくて、困ってるので。。。」

「かしこまりました。 それでは、誠に恐れ入りますが、ご友人様のお名前を、お教え願いますか? 」

私は、考えた。 ここは、勘に頼るしかあるまい。

「ええと、アレキサンダーだったかな、あとは、ミハエルは?」

私は、自分の思いつくままの名前を、適当に並べた。

「は、少々、お待ち下さい。 ..................... あ、ございました。ミハエル様ですね。Last Nameは、おわかりになりますか?」

「たしか、イワノフか、スミノフ。。。 ん~と、わからない。 たぶん忘れたんだと思う」

「ミハエル・コワルスキー様でしたら、いらっしゃいますが.............. ご友人は、この方でしょうか?」

「あ、そうそう、彼だ。 まちがいない。 チェック・インしてますか?」

「いいえ、コワルスキー様は、George Westwood様の付き人と、うかがっております。ですので、チェック・インされたのは、Westwood様だけでございます」

「Geo、George 何だって??」 

「Geoge Westwood様です。 映画監督の。。。」

私は、一瞬、耳を疑った。 なぜなら、それは、私のかつての恋人Meredithの、別れた元・夫の名前とおなじだったからだ。 

「George Westwood様です。 名字が、Westwood様で、First nameは、Geroge様です。 お友達のミハエル様で、お心当たりは? よろしいでしょうか? そうでございますか。 はい、それでは、お部屋に、おつなぎいたしましょうか?」

「あ、いや、いいんだ。ありがとう。 きっと、彼も、疲れてるだろうから。。。でも、そうだね、あとで、かけ直すかも知れない。 どうもありがとう。 助かりました。 では」

「よろしゅうございますか? それでは、お待ちしております。 本日は、お問合せ、誠にありがとうございました」  

携帯の終話ボタンを押し、私は考えた。 なぜ、Georgeが、東京にきているのだろう? 撮影の仕事か? それなら、なぜ、私たちのクルマを付けてきた? 説明がつかないのでは。。。?


やがて、FeiFeiが、バスルームから出てくる音がした。そのあと、ドライヤーで、髪を乾かす音がした。 なつかしい、アメリカ西海岸の香りのするシャンプーが、バスルーム脇の洗面台から、漂ってきた。。。


「Jerry... , could you please give me bath towell ?? Would you, please ?」

「Su,... Sure! Of course, why not ? 」私は、少し、上ずった声で応えた。

「But,... you'd rather find out just above mirror, though...」

「Yep. あったわ。 ありがとう」

FeiFeiのお風呂上りの姿を、想像して、私は、少し、とまどった。 だが、そして、もっと大事なことを、そのとき、思い出した。 FeiFeiから、西麻布のBarで受け取った、Meredithからの私あての手紙が、玄関のハンガーに掛けたジャケットの胸ポケットに、入れたままで、まだ、開封せずに、読んでいなかったことを。。。


《To Be Continued...》