2023年7月23日 編集長 松本 徹
コロナも落ち着き久しぶりに海外に行って来た。サウンドファンの新製品はベトナムで生
産する事が決まった。その準備でホー
チミンに行って来た。
ベトナムと言えばどうしても戦争の事
を思い出してしまう。17年間続いた
この戦争は僕達に多くの疑問と現実を
叩きつけた。この頃僕は岩国市で生活
しており、岩国は多くのストレスを抱
えたアメリカ兵と共存していた。当然
この町も奇妙なパワーを抱えて、方向
性を見失っていた。京都から来た大学
生が喫茶店をオープンさせて、ここを
拠点に反戦運動を繰り広げていた。ホ
ーチミンの戦争博物館で生々しい写真を見ながら岩国の事を思い出しながらなぜか目まい
がした。 「地獄の黙示録」も岩国の映画館で見た。その映画館も今は岩国から姿を消した。
ストーンズの歌と戦争と共産党。上手くかき混ぜると名作が生まれる。日本だって戦争の
反省から二度と戦争は行わないと誓ったはずだ。しかし一向に戦争は無くならない。なぜ
なのだろうか?僕は中国で本当の自由と命を重みを考えた。それからサンパウロで幸せに
ついて考えてみた。あれから3年以上が経過したが答えは見つかっていない。いや一生答
えは見つからないのかもしれな
い。 ホーチミンの中心部にあるホ
テルから工場のある工業団地迄
車で約1時間。 道路はバイクと車
が溢れ渋滞が続く。 夕方になると
決まった時間に大量の雨が降り、
決まった時間になるとぴたりと
止まった。 ホーチミンではバイク
の事をホンダと呼ぶと教えて貰
った。 今頃ホンダにいたらベトナ
ムに転勤になっていたかもしれ
ない。 そんな事をふと考えてみた。
仕事は順調に終わり、 あとはこの
新製品がヒットしてくれることを祈るだけだ。車でもテレビでもスピーカーでも何でも売
れないと話にならない事を今迄嫌と言うほど見て来た。その半面に爆発的に売れると凄い
ことになることも経験して来た。製造業の使命は開発した商品を全世界で販売し、多くの
お客様に感動を与える事なのである。だから当然品質は一番重要なファクターであり、感
動を与えられる商品なら多少コストが高くても売れるのだ。そんな商品はこの世の中に多
くあり、高くても必要なら買うのだ。設計品質、製造品質。品質には色々な品質があり、
僕に与えられた使命はこの品質と言う商品を多くの人に届ける事なのだとあらためてホー
チミンで思った。
中国の文化とフランスの文化を上手く取り入れながら発展して来たこの町は今製造業でも
大きな発展を遂げようとしている。しかし考えてみると製造業は人件費を抑えるために、
人件費の安価な国に工場を建てて、人件費が上がるとまた新たな国を探す。それをこれか
らも繰り返し発展する事にな
るのだろうか?日本はバブル
弾けて以降給料は殆ど上がっ
ていないのに、製造費は今で
もびっくりするほど高いのだ。
日本の技術が衰退を続ける今。
もう一度復活して欲しいもの
だと成田空港に戻る飛行機の
中で考えてみた。