朝7時半に起床。
福岡で目覚める朝の匂い。
今年初めての出社となる本日。
空は清々しいほど澄み渡り、気持ちの良い日差しが降り注いでいた。
そんな晴れやかな天気に迎えられて、私は会社へと向かった。
午前9時。
いつもより少し早く会社に出社する。
とそこに、いつもは遅れてくる厳しい先輩が
髪を短くして事務所を掃除していた。
「明けましておめでとう。今年もよろしくな。」
意外なほど澄み渡った先輩の声に、私は少し驚いた。
ー年の初めなんだから、心機一転新たに仕事をしていこうじゃないかー。
そんな言葉を、先輩の姿は物語っているようだった。
新たなる年は、新たなる気持ちで。
何事も初心を忘れず、新鮮な姿勢で向かっていこう。
先輩の姿を見て、私も気持ちを引き締められた。
そして徐々に社員がオフィスに揃いだし、新年最初の挨拶が行われた。
私は今年の抱負を「自分の意見を持って仕事に取り組んでいきたい」と発表した。
何事も受け身ではなく、自分から考え、向かっていけるような仕事をしたいと考えたからだ。
そうして福岡での挨拶が終わり、
私は再び東京へ向かうため、全員に挨拶をしてまわった。
その全員が私に「頑張れよ」と激励をしてくれた。
みんなの温かい声に後押しされて、私は福岡空港へと向かったー。
空港に着いて、時刻は午前10時40分。
みんなと話をしているうちに、ずいぶん時間が過ぎてしまった。
私の乗る便は11時に出発予定。
重い荷物を抱えながら、私は急いで搭乗口へと向かった。
ゲートに向かい、
大都会へと向かう道を再び歩き出す。
残り一ヶ月となった東京生活。
きついことも、辛いこともあるけれど、
自分の人生の糧となるようにしっかりと頑張っていこう。
空は澄み渡り、これから始まる新たな生活を祝福してくれるようだった。
私はしっかりと前を見据え、描き続けた理想へと向かって一歩ずつ足を踏み出す・・・・・
ビーーーーーッ!!
「すみません。ちょっと荷物を拝見させていただいていいですか?」
・・・・どうやら荷物検査に引っかかったらしい。
そういえば鞄の中にキーケースを入れていたのを思い出した。
「すいません。もう一度荷物を通させていただきますね。」
・・・まったく空港の警備というのは融通が利かない。
キーケースを取り出し、再び荷物をコンベアに載せる。
これで安心して夢へと向かう空の旅が・・・・
ゥビーーーーーーーーッ!!
「・・・すいません、他に金属類の物が入っているようですので少し調べさせていただきます。」
・・・キーケースの他にも金属類が入っているようだ。
何人かの警備員が集まりだし、私のバッグの中を調べ出す。
私が爆弾テロを仕掛けそうな人物に見えるわけでもあるまいし。
まったく、空港というのは本当に面倒だ・・・
と、
一人の女性警備員がバッグから取り出した物を熱心に眺めている。
・・・・そういえば、外ポケットにライターを入れていたのを思い出した。
しかしその警備員は不思議そうに何度も
“それ”を眺めている。
何がそんなに不思議なのか、それはただのライターじゃないか・・・
しかし
警備員の持つ
“それ”を見て、私も言葉を無くした。
ゲェーーー!!
そこに出てきたのは、まさかの
「三国志ライター」!!
しかも、あろうことか。
キャラクターはシブ値100%の黄忠!!
やべぇ!!ドン・○ホーテで衝動買いしたのを忘れてた!!
「あの・・・これなんですか?」
「・・・ライターです。」
「一応、規則としてライターは機内に一つしか持ち込めないことになっているのですが、誰かお連れの方はいらっしゃいませんか?」
「・・・いえ、僕一人です・・・。」
「では、お見送りにきた方とかはいらっしゃいますか?」
「・・・・いません。」
「そうですか、困りましたね・・・。」
黄忠ライターを持ったまま真剣に考え込む女性警備員。
困りましたは僕のほうだ!!
「あの・・・いいですそれ。たいしたものじゃないし、処分してください。」
「え・・・でも一応、預けておけばまた福岡に来たときにお引き取りできますが・・・。」
「いえ、いいんです!
ちょっとおみやげとして持って行こうと思っていただけなんで・・・。」
「お、おみやげですか?!」
・・・・・しまった。
自分で使うと恥ずかしいので、思わず嘘をついてしまったが・・・。
こんなのおみやげとして持って行く方がずいぶん恥ずかしい!(爆)
何度も
「黄忠ライター」を見ながら困惑する女性警備員。
というか、三国志を知らない人が見たら、
ただの弓を持った変態オヤジにしか見えない。
「老いて益々盛ん」というキャッチコピーが、ますます怪しさを引き立てる・・・。
気が付けば、私の後ろには長蛇の列が・・・。
私の乗る便のフライト時刻も、刻一刻と迫ってきてる。
もはや一刻の猶予もない!
「あの、それもういいです!そちらで処分してください!」
「いいんですか?一応手続きをしていただければ郵送もできますけど・・・」
「いえ、結構です!ほんとたいしたものでもないですから!」
「でもおみやげということは・・・ずいぶん大事なものなんじゃないですか?」
「あの、それ・・・
もう全然大事じゃありませんから!!(泣)」
・・・・かくして私は泣く泣く黄忠ライターを手放したのでした。
というか、
人として大事な物を失った気がします・・・。
日々空港で働いている皆様。
快適で安全な空の旅を提供し続けるために
これからもがんばってくださいね!!
(涙をこらえながら)