今日のニュースは、豊洲市場の百条委員会で持ちきりだったようですね。
お店に出る前、ラジオで聞いていて気になりました。
何でも、浜渦さんという、東京都の元副知事が、すごい剣幕だったそう。
おや、カウンターに座っているお客様たちも、ちょうどその話をしているようですよ。
「さっき夕方のニュースをテレビで見てたらな、なんだ、あの浜渦って爺さん、自己弁護ばかりしやがって」
「まあまあ、彼にだって立場というものがあるでしょうから。自己弁護がその下にいる人たちを守ることにもなるんですよ」
「だからって、全部東京ガスのせいにしていいって訳じゃないだろう」
「確かにそうかもしれません。でも、僕らの会社にもありませんか?ちゃんとした契約を交わす以前からの繋がりが、結果、形になる仕事って」
「どういうことだ」
「例えば、今あなたの下で働いている僕が、今の会社を辞めて別の仕事を始めたとします。でも、あなたとは今日みたいにたまにお酒を飲みに行く。そこで、僕が新しいプロジェクトの出資先に困ってる、なんて話をしたとします」
「ふんふん」
「優しいあなたなら、きっと『俺が出資してやろう』って言い出すでしょう」
「それが『水面下』だって言いたいのか」
「そうです。だってもしかしたら、公開入札にかけたら違う会社さんと契約してたかも知れないでしょう」
「なるほどな」
「結局、人間社会なんてほとんどが『水面下のやりとり』で成り立ってると思うんです。そして、そういったやりとりがうまくいった物事が社会を作り、動かしていく」
「たとえそれが間違っていたとしても、ってことか」
「そうです」
「怖いもんだな。ところでお前、俺の会社を辞めるのか」
「はは。まさか。例えばの話ですよ」
私としたことが、つい耳をそばだててしまいました。
このお客様たちが何年先も飲みに来てくれるように、私も水面下で頑張るとしましょう。
今日も、ここではジャズが流れています。
(※この物語はフィクションです)
お店に出る前、ラジオで聞いていて気になりました。
何でも、浜渦さんという、東京都の元副知事が、すごい剣幕だったそう。
おや、カウンターに座っているお客様たちも、ちょうどその話をしているようですよ。
「さっき夕方のニュースをテレビで見てたらな、なんだ、あの浜渦って爺さん、自己弁護ばかりしやがって」
「まあまあ、彼にだって立場というものがあるでしょうから。自己弁護がその下にいる人たちを守ることにもなるんですよ」
「だからって、全部東京ガスのせいにしていいって訳じゃないだろう」
「確かにそうかもしれません。でも、僕らの会社にもありませんか?ちゃんとした契約を交わす以前からの繋がりが、結果、形になる仕事って」
「どういうことだ」
「例えば、今あなたの下で働いている僕が、今の会社を辞めて別の仕事を始めたとします。でも、あなたとは今日みたいにたまにお酒を飲みに行く。そこで、僕が新しいプロジェクトの出資先に困ってる、なんて話をしたとします」
「ふんふん」
「優しいあなたなら、きっと『俺が出資してやろう』って言い出すでしょう」
「それが『水面下』だって言いたいのか」
「そうです。だってもしかしたら、公開入札にかけたら違う会社さんと契約してたかも知れないでしょう」
「なるほどな」
「結局、人間社会なんてほとんどが『水面下のやりとり』で成り立ってると思うんです。そして、そういったやりとりがうまくいった物事が社会を作り、動かしていく」
「たとえそれが間違っていたとしても、ってことか」
「そうです」
「怖いもんだな。ところでお前、俺の会社を辞めるのか」
「はは。まさか。例えばの話ですよ」
私としたことが、つい耳をそばだててしまいました。
このお客様たちが何年先も飲みに来てくれるように、私も水面下で頑張るとしましょう。
今日も、ここではジャズが流れています。
(※この物語はフィクションです)
