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ダメおやじ、BARレモンハート、寄席芸人伝など素晴らしい作品を世に送り出された古谷三敏先生は、昭和30年代前半に手塚先生のアシスタントをされていました。赤塚先生をお手伝いされていたのは有名ですが、手塚先生とも大変ご縁があったんですね。この本も、「僕だけ知っている手塚先生」物のひとつですが、古谷調のマンガとイラストでよりリアルに当時の手塚先生を感じられるところはとてもありがたい本です。
 
手塚先生のエピソードだけでなく、ご自分のこともいろいろ書かれています。仕事の区切りに手塚先生からいただいたお小遣いで、まずランチを食べてから映画を見て、ハイボールを飲んで、ラーメンを食べて、銭湯にゆったりつかって幸せな気分で自分の部屋に帰るという一日を描いた淡々とした情景描写は、古谷先生独特のペースで読んでいるこちらもほのぼのと楽しくなります。そして、どのエピソードにも手塚先生への確固とした想いが刻まれているように感じます。古谷先生は、奥が深い方なので底知れないところもあるかもしれませんが、その奥底ではとても暖かいものが湧き出ているだろうと思います。
 
この本の最後では、これだけはお話しさせて欲しいと前置きをされて、赤塚先生の事に触れられています。古谷先生は12年も赤塚先生をサポートされていたんです。生半端な関係ではありません。年齢も近い赤塚先生の訃報を聞かれた時の古谷先生のお気持ちは如何ほどだったでしょうか?
 
もうひとつこの本で紹介したいところがあります。それは、本の奥付に印刷されている検印用紙の小さなイラストです。若い頃の手塚先生と古谷先生のお顔が並んで描かれています。最後までとても暖かい気持ちにしてもらえる本でした。