
最近ある書店でたまたまこの本を見つけた時は、本当に驚きました。昔と同じ和田誠先生の表紙絵で、すっかり忘れていた40年以上前の記憶が逆流し、タイムトリップしている感覚に陥りました。
1967年から1973年にかけて虫プロ商事が発行していたCOMという雑誌をご存じでしょうか?
手塚治虫「火の鳥」、石森章太郎「ジュン」、永島慎二「フーテン」、トキワ荘関係者が持ち回りで連載した「トキワ荘物語」などマンガ史に残る作品が連載され、また、多くの頁を割いたマンガの投稿コーナーからは、岡田史子、宮谷一彦、竹宮恵子、青柳裕介などをはじめ、諸星大二郎、村上もとかなどそうそうたる作家達を輩出した、まさに伝説の雑誌なのです。当時のマンガマニア、マンガ家志望の青年達はみんなこの雑誌を読んだと思います。何といっても雑誌の謳い文句が「まんがエリートのためのまんが専門誌」ですからね。
私は、創刊号が出た時小学生で最終号が出た時は高校生でしたが、一貫して熱烈な読者だったんです。手塚先生の作品が読めることも大きかったですが、新人作家の斬新な野心作も大変刺激的でした。もっとも、よくわからなかったものも結構ありましたけど。とにかく毎号毎号隅から隅まで熟読したものです。実際にマンガを墨汁で描き始め、中学、高校とマンガ研究会みたいな事をやり始めたきっかけはこの雑誌の影響でした。
COMは、1972年に一度普通の青年誌にリニューアルされた後、1973年8月にまた以前の体裁で復刊第1号が発行されましたが、虫プロの倒産などもあり、結局第2号は発行されずそのままになっていました。「COM40年後の終刊号」は、リニューアル前の最後のCOMが発行された1971年からちょうど40年の今年、往年の編集者、作家、読者達が集いCOMの総括号として、まとめられたものです。貴重な証言、懐かしい話などが掲載され、少なくとも昔の読者にはうれしい本です。逆にCOMを知らない人にはよくわからないと思います。多くの関係者がすでに故人となられ、このような企画を実現する最後の機会だったかもしれません。
当時、私は、ようやく待ち焦がれていたCOMが復刊されて狂喜しましたが、その後告知もなく出なくなってしまったので、失望とフラストレーションに陥っていたのですが、この本のおかげてようやくすっきりした感じです。
実家には、COMのバックナンバー全号揃って保管されているので、帰省した折に久しぶりに通読してみようと思います。
それにしてもいろんな事が起きるものですね。