「愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春」(小学館)の10巻を読みました。藤子不二雄(A)先生がビッグコミックオリジナル増刊で連載している作品で、トキワ荘時代のエピソードにからめて当時の世相、マンガ界の様子などが綴られています。私は、時折刊行される単行本で読んでいます。ゆっくりと淡々と出版されていますが、この作品の内容を勘案すると作品を噛みしめるには良いペースだと思います。
トキワ荘に集った若者達は、当時まだまだ未開拓だったストーリーマンガという新しい分野を一緒に進んでいき、現在のマンガアニメ文化興隆の基礎作りに大きな貢献をすることになりました。今振り返ると本当にすごい事をなさったわけだが、実際にそのウエーブの中で一生懸命マンガをカリカリと描いていた彼らは、すごい事をやってやろうとかよりも、素朴に好きな事を続けていたのだと思います。
とにかく、みんな若くて、厳しいけどとても楽しい生活だったようです。トキワ荘関係者は、トキワ荘から出た後もすばらしい思い出の宝物として記憶の宝箱に入れ大事にしているようです。時折その宝箱から出して当時の思い出をご自分の発表媒体で披露されていますが、いずれもトキワ荘時代を想いたっぷりに描いていますね。もちろん、藤子不二雄(A)先生の場合も例外ではありません。
手塚治虫、寺田ヒロオ、藤子F不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、森安なおや、などかつての住人の多くがすでにこの世を去ってしまいました。期せずして残されてしまった藤子不二雄(A)先生は、天国に行ってしまった仲間の思い出も含めて「愛…しりそめし頃に…」を描かれていると思います。
懐かしくて、懐かしくて、しかし、もう戻らないあの時代と仲間達。。「愛…しりそめし頃に…」というタイトルに先生の万感の想いが込められているように思います。