ビッグコミックオリジナルで連載されていた「PLUTO」が終了し単行本の最終巻である8巻(小学館ビッグコミックス)が出たのを機会に、あらためてこの作品を読み返した。この作品は、手塚治虫の鉄腕アトム、地上最大のロボットをモチーフにして浦澤氏が新しく創作したものだが、なかなか読み応えがあった。

ストーリーの大きな流れは、原作に沿っており、モンブラン、ノース2号、ゲジヒト、ブランド、ヘラクレス、エプシロンが順に出てくるのはとても懐かしく、わくわくした。アトム、ウランは完全に人間の子供としてかわいらしく描かれているが、手塚先生のアトムがそのまま現われるより説得力があった。大昔の実写版アトムが出てきたら、確かに無理があっただろう。ロボット差別、地域紛争などを盛り込んで、最後は、アトムがプルートのツノを持った有名なラストシーン。原作を読んだ時感じた、「アトムが一人だけ残ってしまいかわいそうだな。。。」というのと同じ感じがした。途中話がいろいろな方向にふくらんで、どうなるかと思ったが、さすがにうまくまとめられていると感心した。

実は小生、浦澤先生の作品はほとんど読んでいない。「YAWARA」などの有名な作品があるのは知っているが、読んでいない。たぶん主に活躍されたのが、1989年つまり手塚先生が亡くなられた後で、私が今のマンガをほとんど読むことをやめたことが大きな原因だと思う。他の作品を読んでいないので、軽率な分析はできないが、子供をとてもいきいきいと描ける人だと思った。この作品のアトムを見ていると、あたかも、私のせがれに見えてしまう。作中でときどき親が子供に愛情をそそぐシーンで出てくるが、子供を持った人はみんな同感するだろう。そして、その気持ちが強いほど世界が平和に、みんな幸せになって欲しいという思いが湧き上がる。
それだけで、私は、この作品と作者が好きになった。
(続く)