私が出た高校は男子校だった。だからこそ、いろいろな蛮勇ができたのかもしれない。女の子がいたらもうすこし小奇麗なかっこをして顔くらい洗って学校に行ってただろう。

その頃は学区はなく県内どこからでも好きな高校に進学できた。このため、遠くから出てきた生徒は、下宿で生活することになる。このような生徒は全体の2割くらいはいたと思う。自分の田舎では全校一番の秀才ですましていたかもしれないが、下宿をはじめて奔放な生活をし始め本性があらわになる。

下駄で登校したり、冬になると綿入れを来て授業を受けている者もいた。制服はなく服装は自由だったのだ。中には、朝寒いのでパジャマの上に学制服を着て来るやつもいた。悪いことに長髪がはやっていた頃なので床屋にもいかず、風呂にも入らず「オレは一週間風呂に入っていない」などと自慢する者もいた。

その割にみんな思春期なので女の子には興味があり、それなりに憧れの彼女はいたようだが、そんな不潔なやつに女の子が振り向くはずがない。おかげで女性はますます信仰の対象となり、学校の部室にヌードポスターが貼ってあったり、平凡パンチやプレイボーイなどの青年誌があちこちにたくさん秘蔵されていた。

わが柔道部でもよくわからないしきたりがあった。なんといっても部歌が猥歌(わい歌)だったのである。本当は昔からのちゃんとした部歌があったのだが、どういうわけか私がいた頃の柔道部では、なにかというと部歌と称する猥歌を神妙な顔をして歌っていた。おかげで私なんかは、正式の部歌を覚えずに卒業してしまった。私は主将だったんですが。。。

夏と春には恒例の合宿があり学校の教室に一週間ほど泊まり込んで稽古にはげむのだが、夏合宿の最終日の前日の夜には恒例の初恋談義が始まる。これは、新入生たちが順番に自分の初恋について語るのだ。話しているほうも、聴いているほうも浅い経験をせいいっぱい背伸びして女の子について夜通し語るのだ。
だいたいが、片想いか、振られた話で、順番が来たやつが、自分の悲劇を語り始めると、先輩たちはうれしそうに「かわいそ~」などと合いの手を入れたりする。非常に稀ではあるが彼女がいるやつがいたりするとみんながっかりした。中には稽古でそいつをしごいたりする先輩がいたりする。とにかく、こうして夏の夜をもんもんと過ごすのだ。

なんだかんだ言っても、みんな女の子に興味があったのである。女性は偉大なり。。。