
私が読んだ本:寺田ヒロオ「暗闇五段(上下)」(ゴールデンコミックス、小学館)
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五船十段のもうれつ道場で育った倉見は五船十段の一人娘オニ姫の婚約者で、若先生として道場の跡継ぎとして将来を嘱望されていたが、これを妬む熊手五段の策略で深い谷川に落とされ記憶と視力を失い、あちこちを放浪する身となってしまう。その後、倉見の純粋な気持ちに動かされた後援者の支援のもと身体にしみこんだ柔道の技を頼りに暗闇五段として武者修行の旅に出て、しだいにその名をとどろかせるような存在となる。ラストは、再び熊手の謀略で谷川に落とされそうになったショックで記憶と視力が回復。日本王者戦で熊手五段を破りオニ姫と再会しみんなに祝福されるシーンで終わる。
寺田ヒロオ作品の主人公は、正々堂々、正直一路であくまでまっすぐな生き方が特徴であるが、この作品の倉見はその典型的な例である。主人公と悪役熊手の生き方を対称的に描き、また、若先生を慕う少年達、倉見を想うオニ姫の気持などを、抑えられた表現で淡々と描いている。今のマンガ作品には見られない表現手法だが、じんわりと読者の心に響いてくる。
寺田ヒロオは、商業主義が徹底され、刺激的で売れれば何を描いても良いというモラルハザードになっていくマンガ界に失望しマンガ活動を休止する。(といっても昭和40年代なので、今よりはずっとのんびりしていたのですが。。。)
「スポーツマン金太郎」「もうれつ先生」「背番号0」など明るく夢のある作品群の多くは絶版となり、今読むことは難しいが、若いマンガファンには、このようなマンガもあったことを忘れないでいただきたい。復刊が望まれる。
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今でも読める本:絶版?
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