目次
第1章 女性が男性以上に便秘になりやすい理由とは
第2章 機能性便秘と器質性便秘とは
第3章 便秘になりやすい生活習慣のチェックリスト
第4章 便秘の程度はどれぐらい?
第5章 便が出なくなった10の理由とは
第6章 便秘に悩む人にお肌のトラブルが多い理由とは
第7章 腸が衰える3大原因
第8章 まとめ
第1章 女性が男性以上に便秘になりやすい理由とは
少し古い話になりますが、1989年に行われた厚生労働省の調査結果では、便秘がちである、もしくは便秘であると認めている人は、1,000人あたり女性46.7人、男性18.6人という結果が出ています。
このデータから分かるように、便秘といえば女性の方が男性の倍以上いるということですが、女性に便秘が多いというのには理由があります。
女性の体を管理するいくつかの女性ホルモンの中に、黄体ホルモンというものがあります。
この黄体ホルモンは排卵から月経までの間に多く分泌され、腸の平滑筋という筋肉の刺激感受性を低下させることで、便のもとになる大腸の内容物を吸収します。
このため、黄体ホルモンの分泌がはじまると、腸の蠕動(ぜんどう)運動が抑制されることで便秘がちになってしまうのです。
※蠕動(ぜんどう)運動とは腸の中の内容物を前へ押しやる筋肉の収縮波を伴う運動
女性が便秘になりやすいもう一つの理由に、筋力が弱いということがあります。
女性は一般的に男性よりも筋力が弱いので、排便の際に使われる腹筋や横隔膜の筋力が弱いということが挙げられます。
第2章 機能性便秘と器質性便秘とは
便秘には「機能性便秘」と「器質性便秘」と呼ばれる二種類の便秘があります。
機能性便秘とは病気以外の理由で腸の働きが低下する、もしくは、腸がどんなに働いていても、便そのものに原因があって出なくなってしまうものです。
これは、日常の生活習慣が原因となる部分が大きく「習慣性便秘」とも呼ばれています。
「機能性便秘」=「習慣性便秘」 機能性便秘に対して、器質性便秘というのは、大腸内に何らかの疾患、もしくはその他の身体的な原因により、大腸の内腔が狭くなって便の通りが悪くなることで、結果として便秘になるものです。
別名を症候性便秘ともいいます。
「器質性便秘」=「症候性便秘」
器質性便秘は疾患による便秘ですので、今回の内容は機能性便秘(習慣性便秘)について書いていきます。
第3章 便秘になりやすい生活習慣のチェックリスト
便秘には便秘になるような生活習慣というものがあります。
便秘になるような生活をしていないかどうか、下記のチェックリストでチェックしてみましょう。
- 肉類が大好きでいつも肉類を食べている
- 消化のよいものや柔らかなものを好んで食べている
- 野菜はあまり食べない、もしくは全然食べない
- インスタント食品を好んでよく食べている
- 美味しいものばかり食べるグルメ志向である
- 水気の多いものをあまり食べていない
- ワーカーホリック(仕事人間)である
- 朝は時間ギリギリまで寝ていることが多い
- 仕事、もしくは仕事以外の日常生活でストレスを抱えることが多い
- 不規則な生活をしている Q11 あまり運動をしていない
- 太っている、もしくは太り気味である
- 普段からトイレを我慢することが多い
- 痔を患っている
以上でチェックは終了です。
チェックがついた項目はいくつありましたか?
これらの項目に一つでも当てはまるものがあれば、機能性便秘(習慣性便秘)の疑いがあり、便秘予備軍と言えるでしょう。
第4章 便秘の程度はどれぐらい?
次はあなたの便秘の程度を調べてみましょう。
当てはまる項目があればチェックを入れて下さい。
- 下剤などの薬を使わないと3~4日に1回しか便が出ない
- 日常的に便が固い
- 便が出ないことでお腹が張ることがある
- 歩いたり体を動かしたりすることが少ない
- 1日に3食という規則正しい生活ではなく、1~2食を抜くことがある
- トイレを我慢することがある
- 下剤などの薬を使いだしてから1年以内である
- 自然な便意が起きない
- 下剤などの薬を使わないと排便ができない
- 下剤などの薬を使うのは週に1回程度である
- 下剤などの薬を使いだしてから1~5年程度である
- 以前に比べておならが異常に臭うようになった
- 下剤などの薬を毎日使っている
- 下剤などの薬を使うときは用量を超えることがある
- 下剤などの薬を用量の2倍以上使うことがある
- 体重がMAX時期よりも10㎏以上減った
- 下剤などの薬を5年以上使っている
いかがでしたか? それでは、あなたの便秘の程度の判定です。
■1~6のいくつかに当てはまる場合
軽い便秘です。
毎日とまでは言わなくても定期的に排便はありますが、腸の働きが低下しているので、排便する力が弱まっている状態です。
下剤などの薬に頼るほどひどくはありませんが、今後悪化していく恐れがあります。
しかし、間違いなく改善できるレベルです。
■7~10のいくつかに当てはまる場合
中程度の便秘です。
腸の働きが弱まり、自分の力では排便することが難しく、どうしても出ない時は下剤などの薬に頼るレベルです。
このまま放置しておくと、数年以内に下剤などの薬が手放せなくなり、薬の副反応が出る恐れがあります。
■11~14のいくつかに当てはまる場合
重症の便秘です。
腸の働きが弱りきっていて、下剤などの薬なしでは便意が起きず、放置しておくと1~2週間ほど排便がなくなる状態です。
自力で排便するためには時間も根気も薬の力も必要となります。
■15~17のいくつかに当てはまる場合
腸が完全に弱っているか動いていないので、自力で排便する力が全然なくなっている状態です。
すでに病院に行かれてるかと思いますが、信頼のおける医師の指導のもとで下剤などの薬の減量治療、もしくは根本的な治療を受けることをおすすめします。
第5章 便が出なくなった10の理由とは
普段の生活で便意を感じたらまずトイレに行き、さほどいきまなくてもスルッと排便される、これが本来の健康的な排便です。
しかし、実際には便意すら感じないこともあります。
便意のセンサーや胃腸の働きが鈍くなることが原因ですが、それには下記のような理由があります。
①便意をもよおしてもトイレを我慢する
- 朝、ベッドから起きることができない
- トイレに行く時間がない
- トイレに行けるタイミングがない
- トイレが見つからない
- トイレに行ける雰囲気ではない
- 仕事が忙しすぎてトイレに行けない
など、日常生活のあらゆるシチュエーションで便意をもよおしても、ついつい我慢をしてしまうこともあるでしょう。
便意が起きてもトイレを我慢してしまうと、便意のセンサーの働きが鈍くなり、麻痺してしまいます。
そして遂には腸の中はいっぱいになっているのに便意を感じなくなってしまうのです。
②食生活が偏っている
- ダイエットのため
- 食欲がない
- 忙しくて時間が取れない
- 寝坊して時間がない
などの理由で朝食を抜く場合があります。
しかし、胃腸の蠕動運動は朝食後が最も活発になり「大蠕動運動」とも呼ばれるほどの働きをするのです。
朝食を抜くことは胃腸に大蠕動運動を起こさせないことになり、胃腸の活動を低下させることになります。
胃腸の活動が低下すれば、中の消化物は運ばれなくなり便秘はますます悪化します。
③生活が不規則
大蠕動運動は朝以外にも昼や夜、または就寝時にも起こることがあり、胃腸の働きを活発にしてくれます。
就寝中には消化のためのホルモンも分泌されるので、寝ていても胃腸は活発に動いて消化を行ってくれていいるのです。
このように肛門に向かって便を送り出す胃腸の働きには、セカンドブレイン(第2の脳)と呼ばれる腸管神経と、生命維持をつかさどる自律神経が大きく関わっています。
通常、人間の体の中にある無数の神経は脳からの指令を受けて働きますが、腸管神経は脳からの指令を受けなくても独自の神経回路で機能しており、生命機能の維持に欠かせない腸管の運動や分泌、血流を制御しています。
自律神経には、心と体を活発にする交感神経と、心と脳を休ませる副交感神経があり、両方のバランスを取りながら人間は生きているのです。
ちなみに食べたものの消化や吸収をする働きというのは、副交感神経が制御しています。
副交感神経が優位になっている間に胃腸の蠕動運動が起こり、消化を促進しますが、生活のリズムが不規則になると、自律神経はバランスを崩し、働きを乱してしまいます。
そして自律神経によって制御されている胃腸の蠕動運動は抑えられ、活発に動くことができません。
その結果、胃腸の働きは低下し、肛門まで便を運ぶ力が弱まり、消化が悪くなり排便が難しくなるのです。
④大きなストレスを抱えている
便秘の原因にはストレスも挙げられることがあります。
ストレスが大きいと、自律神経の交感神経が優位になることで興奮状態になり、副交感神経とのバランスを崩してしまいます。
食べたものの消化には副交感神経が大いに関わっているので、交感神経が優位になっている間は、消化が促進されることはありません。
その結果、胃腸の蠕動運動が抑制されてしまい、胃腸の働きが悪くなり一方で、便秘は悪化の一途をたどります。
⑤運動不足
胃腸の働きには筋肉と筋力も大きく関係しています。
これは女性のほうが男性よりも便秘になりやすいと言われる所以ですが、男女を問わず筋力の維持というのは、胃腸の働きには不可欠と言われています。
胃腸を動かすには内蔵の壁にある筋肉の平滑筋、排便には腹筋と背筋が必要です。
特に腹筋や背筋などの筋肉は、胃腸の働きだけでなく、排便時の腹圧を加えるのにも直接関わっており、この筋肉が弱まるということは、排便を難しくするということです。
ちなみに平滑筋は自分の意思では動かすことのできない不随意筋と呼ばれ、意識して鍛えることはできません。
対して腹筋や背筋は、自分の意思で動かすことのできる随意筋なので、鍛えることが可能です。
そのことから、運動することで便秘が改善される人も少なくなく、逆にケガや病気で長期間ベッドなどに寝込んでいると便秘になりやすくなります。
運動不足は排便に関わる筋力を弱め、胃腸の働きを低下させてしまうのです。
⑥開腹手術後
ケガや病気などで開腹手術を受けた人も、便秘になることが往々にしてあります。
開腹手術はお腹を開けるために傷をつけるので、そのために腸や腹膜が炎症を起こします。
するとお腹の傷まわりや腸管が癒着を起こし、胃腸の蠕動運動を阻害することがあるのです。
また、術後の安静期間の間には運動不足に陥ることになるので、腹筋や背筋の筋力が衰え、胃腸の蠕動運動が弱まることにもなります。
⑦月経前症候群
排卵から月経開始までイライラしたり、だるかったり、体や心が不調になる女性は少なくはないでしょう。
このような不快な症状を月経前症候群と言いますが、便秘もまた、月経前症候群の症状の一つで、若い女性に多く見られます。
月経前後の時期には黄体ホルモンの分泌が活発になりますが、この黄体ホルモンには腸管の平滑筋の感受性を低下させ、便のもとである大腸の内容物の水分を吸収する働きがあります。
そのため月経前には大腸の蠕動運動が抑制されて、便が固くなる傾向があります。
便が固くなると、排便時に必要な力が増えるので、その分筋力を必要とするのです。
女性はただでさえ筋力が弱いので、排便に使う力が弱く、固い便を排出することが難しくなります。
⑧薬の副反応や病気の影響
抗うつ剤の副反応の中に便秘傾向になるということが含まれていることは有名な話です。
狭心症や高血圧患者に対して、末梢血管を拡張して血流を確保するために使用されるCa拮抗薬と呼ばれる薬も、平滑筋の筋力を低下させる効能があり、便秘傾向になるという副反応があることが知られています。
このように、服用する薬によっては副反応として便秘になったり、便秘傾向になったりすることがあるのです。
また、下記のような病気は、ホルモンの分泌異常により、内分泌便秘と言われる便秘になることがわかっています。
【甲状腺機能低下症】
甲状腺ホルモンの不足から新陳代謝が低下することにより、胃腸の蠕動運動が抑制されるので便秘になる
【副腎クリーゼ(急性副腎不全)】
初期症状が発熱、腹痛、便秘、下痢など
【高カリウム血症(原発性副甲状腺機能亢進症)】
神経細胞のナトリウムチャンネルが阻害され信号を伝えにくくなり、胃腸を動かす神経の活動が低下するため、胃腸の収縮が抑制されることで便秘になる
【低カリウム血症】
消化管の平滑筋の筋力が低下するので蠕動運動が弱まることで便秘になる
【褐色細胞腫】
腫瘍が分泌するアドレナリンによって交感神経が刺激され優位になるので、胃腸の蠕動運動を抑制することになり便秘になる
【パーキンソン病】
腸管の自律神経障害などが原因で難治性便秘になるが、パーキンソン病の治療薬であるレボドパは消化管の動きを抑制するので便秘をさらに悪化させることがある
⑨加齢の影響
加齢によって筋力や筋肉の弾力性が落ちていき、高齢になると胃腸の働きが低下してしまいます。
それによって排便力が落ちることが少なくありません。
大腸の壁の粘膜や筋肉層は、年をとるとともに萎縮していき、壁の弾力性は20歳代を境に低下していきます。
そのため排便に関わる直腸の平滑筋の弾力性もまた20歳代以降には徐々に弱くなっていく傾向です。
高齢者の体内での便の移動時間を調べた研究では、便が貯留しやすいとされるS状結腸や直腸での滞留時間が長くなる傾向がある、という結果が出ています。
また、高齢になれば高血圧や糖尿病、狭心症などの持病が増え、薬の服用量が増えることもあるでしょう。
服用する薬の副反応によっては平滑筋の筋力を低下させたり、消化管の働きを抑制したりする効能があるものもあり、便秘を引き起こしたり悪化させたりすることもあります。
⑩季節の変わり目による気温の変化
便秘の悪化には季節の変わり目による気温の変化とも関わりがあると言われています。
1〜2月の冬季は気温の低下で手足や全身の体温が下がり、冷えを招くことで、末梢血管などの血流が悪くなります。
また、気温が下がると水分を取らなくなるので便が固くなり、外出を控えることで運動不足にもなりがちです。
冷えによる血流悪化と運動不足から、体内での血液の流れが悪くなり、胃腸への血流も低下することで、胃腸の働きが抑制されます。
また、末梢血管が収縮することで交感神経が優位になると、胃腸の蠕動運動が抑制されることも起こりがちです。
これらの原因が重なることで、冬場には便秘が悪化することがあります。
逆に真夏の8月ごろの便秘の原因は、水分不足によるものが大多数です。
大量の汗をかいたにも関わらず、水分を補給しなかった場合、体内の水分の絶対量が減り、それに合わせて大腸の水分量も減少します。
大腸での水分の吸収は位置的な問題から胃や小腸よりも後になるので、口から1,000ccの水分を補給したとしても、小腸までの間に900cc吸収されると、大腸での吸収は100ccになってしまうというわけです。
その上さらに汗をかくことで体内の水分はどんどん減少し、大腸に関しては0になりかねません。
また、クーラーによる冷えは、冬と同様に末梢神経の収縮を招くことになり、交感神経が優位になるだけでなく、涼しいと水分を摂る量が減ることがあります。
たとえ涼しくて汗の量が減ったとしても、人間は多少なりとも汗をかく生き物なので、少なくとも出ていく水分量だけは補給しなければならないのです。
さらに、クーラーが効いている室内と暑い外気との温度差が大きなストレスとなり緊張することで、ここでもまた交感神経が優位になります。
交感神経が優位になると、緊張状態になり、蠕動運動が抑制され、胃腸の働きが低下するわけです。
第5章のまとめ
いかがでしょうか? 以上が便秘になる10の理由です。
つまりは便秘の原因は胃腸の働きが悪くなることにあります。
胃腸の働きが悪くなるにはいくつか理由があり、その理由が重なることで重度の便秘を引き起こすこともあるのです。
便秘を防ぐためには、便ができるまでのメカニズムを理解し、便秘を引き起こす要因を排除する必要があります。
ここまでで述べた10の理由を参考に日常の生活を見直してみましょう。
第6章 便秘に悩む人にお肌のトラブルが多い理由とは
①活性酸素
「活性酸素」という言葉を聞いたことはありますか?
活性酸素とは人間の細胞を酸化させる力が強い酸素のことで、呼吸によって取り込まれた酸素の一部が体内の様々な成分と反応することによって、通常よりも活性化された状態になった酸素のことです。
この活性酸素は過剰に存在すると細胞を傷つけ、動脈硬化やがん、心血管疾患ならびに生活習慣病などの疾患をもたらす原因になると言われています。
人間が呼吸で取り入れた酸素は血液によって運ばれ、全身にまわることで、生きるためのエネルギーを作り出しています。
その過程でほかの分子と結合したり反応したりする酸素が生まれることがありますが、それが活性酸素と呼ばれるものです。
鉄で出来ているクギが水に触れるとサビますよね。
これはクギの表面が水中の酸素と結びつくことで起こる酸化現象というものです。
そのまま放置すると酸化現象がどんどん進み、サビがクギの内部まで侵食していき、最後にはボロボロになってしまいます。
それと同じ現象が人間の体内でも起こりうるのが、体内の酸化現象で、その原因が活性酸素というものなのです。
例えば、脂肪酸です。 活性酸素が体内で脂肪と結合して酸化させると、連続してほかの脂肪とも結合します。
そうして脂肪を酸化させることでできるのが脂肪酸です。
脂肪酸は脂質の主要な構成要素で、脂肪酸がほかの様々な形態の物質と結びつくことで脂質を形成します。
脂質は体内でエネルギー源となるなど、人間の健康にとって欠かせない存在であると言えます。
しかし、脂肪酸は過剰にあり過ぎると害にも毒にもなりえます。
脂肪酸が血管内に入り、血管の壁を傷つけることによって引き起こされる疾患が動脈硬化です。
しかし、脂肪酸のように、活性酸素そのものがすべて悪役というわけではありません。
②活性酸素の役割
体内に細菌やウイルスなどの病原体が侵入すると、病原体を追い出したり、消滅させたりする生体防御のために免疫反応を引き起こします。
「顆粒球」や「マクロファージ」といった細胞は、体内に侵入した異物を排除するために、自分から活性酸素を作り出すことがあります。
※顆粒球とは細胞の中に殺菌作用がある成分を含んだ顆粒を持つ白血球
※マクロファージとは体内に侵入した細菌などの異物を食べる能力に優れた比較的大きな細胞
作り出された活性酸素のスーパーオキサイド、ハイドロキシラジカル、過酸化水素水などは、体内に侵入した感染症の病原菌などを攻撃します。
なぜなら、活性酸素自体は強い病害抵抗性を有し、体内に侵入した病原菌を退治する働きがあるからです。
しかし、体内で活性酸素が増えすぎると、正常な細胞までもを酸化させることで傷つけてしまいます。
それこそ鉄のクギがサビてボロボロになってしまうのと同じです。
③抗酸化物質(酵素)の働き
では、これら活性酸素の害から逃れるには、どのようなことに気をつければよろしいのでしょうか?
私たち人間は空気中から酸素を吸って生きているため、活性酸素から完全に逃れることは不可能です。
また体内に侵入したり体内で発生した有害物質との戦いには、活性酸素の存在が不可欠で、すべてを防ぐことは害になりかねません。
そのため私たちの体内では、増えすぎた活性酸素を抑制したり排除したりする抗酸化物質というものが備わっています。
その代表例が、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)やカタラーゼと呼ばれる酵素です。
SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)とは、強力な抗酸化作用を持つ酵素の一種で、人間の体内に備わっている防御システムとして活躍します。
この酵素は活性酸素を除去することで健康維持に役立ってくれる酵素なのですが、体内には少なく、食物やサプリメントから摂取することが望ましいとされています。
次にカタラーゼとは、生物の体内で働くタンパク質で、活性酸素である過酸化水素水を、すみやかに分解する反応を触媒する酵素であり、特に肝臓や赤血球に多く含まれています。
しかし、これらの酵素は加齢とともに減少してしまいます。
また、若年者であっても、体内に大量の活性酸素が発生してしまったら、たとえ多くの抗酸化物質や酵素が存在したとしても対抗できないこともあります。
つまり、活性酸素を多く発生させないために、発生の要因となるものを避けることが大切となるのです。
④便秘による活性酸素の大量発生
活性酸素を大量に発生させる要因はいくつかあります。
紫外線・電磁波・食品添加物・喫煙・偏食・睡眠不足など、これらは生活習慣によるものが多く、近年では便秘も要因の一つとなってきてます。
肉類や加工食品ばかりの食生活、無理なダイエット、過度のストレスなどで蠕動運動が抑制されると、胃腸の働きが衰えることになります。
胃腸の働きが衰えると老廃物が腸内に滞留し、便通を妨げるので、便秘を引き起こすのです。
便秘になるとさらに胃腸の蠕動運動が抑制され、消化活動がスムーズにいかなくなり、食べ物のカスなどの老廃物が腸内に残り、積み重なっていきます。
そうすると、腸内に長時間滞留した老廃物は、腸内に棲みつく腸内細菌によって腐敗が促進されることになり、その際に生まれるのが有害物質です。
その結果、腸内の老廃物の腐敗で発生したインドールやアミン、アンモニア、硫化水素といった有害物質から体を守るために、大量の活性酸素が放出されます。
※インドール、アミン、アンモニアとは血液の汚れや内臓のダメージ、体臭や口臭につながる有害物質で発がん性物質
つまり、慢性の便秘になってしまうと、腸内には有害物質が常に発生する状態となり、その有害物質と戦うための活性酸素もまた常に大量に発生するということになります。
⑤お肌のトラブル
体内で増えすぎた活性酸素は正常な細胞を傷つけ、内臓の働きを阻害するだけでなく、お肌にまで害を及ぼします。
太陽光の中に含まれる紫外線を浴びると、肌が黒くなるというのは知られていることですが、これは紫外線によって大量に発生した活性酸素からの攻撃を受けてしまうためです。
大量の活性酸素から攻撃を受けて傷ついた肌は、表面のメラノサイトという色素細胞から、黒褐色のメラニン色素を生み出します。
この黒褐色のメラニン色素が日焼けのもとになり、皮膚の奥で沈着すれば、シミやくすみ、そばかすの原因となるのです。
便秘によって発生した有害物質の退治のために活性酸素が大量に発生したときもまた、肌の表面にあるメラノサイトが攻撃を受け、メラニン色素を大量に生み出します。
そして、大量に生み出されたメラニン色素が皮膚の奥で沈着することで、シミやくすみ、そばかすの原因となり、肌の色が悪くなると考えられています。
さらに、活性酸素の攻撃によって傷つけられた肌では、新陳代謝の働きが衰えると言われており、新しい肌が作られにくくなり、そのため肌は全体的に薄くシワやたるみを招くことになるのです。
肌の新陳代謝が活発であれば、メラニン色素の沈着も、シワもたるみも、そしてくすみも起こりにくくなります。
年齢とともに誰しも肌の新陳代謝は衰えるのですが、腸内環境が悪く、胃腸の働きが悪いと、便秘により大量に発生した活性酸素が、肌の老化を実年齢よりも早く進めることになります。
若々しいお肌を保つためには、紫外線への注意だけでなく、腸内環境を整え、胃腸の働きを促進させ、便秘を避けることも大切なのです。
第7章 腸が衰える3大原因
①肉類の多食
②ダイエットによる食事制限
③運動不足
①肉類の多食
人間の腸の中には「腸内細菌」と呼ばれる細菌が棲みついていると言われており、その数は約100種類、100兆個とも言われています。
腸内細菌は大きく分類すると「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類があります。
善玉菌・・・腸内で悪玉菌が棲みつくことや増殖による感染を予防する働きがある (乳酸菌やビフィズス菌など)
悪玉菌・・・腐敗物質や発がん性の生成、免疫力を弱めるなどの悪い働きがある (ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌など)
日和見菌・・・健康な時はおとなしいが、体が弱まると腸内で悪い働きをする (バクテロイデス、無毒株の大腸菌、連鎖球菌など)
胃腸の働きが低下すると、3種類に分かれている腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増えると、下痢や便秘を発症させることになるのです。
つまり、腸の働きには良くも悪くも腸内細菌が大きく関わっており、善玉菌と悪玉菌の勢力図が多大なる影響を及ぼします。
人間の腸の中では、善玉菌と悪玉菌が絶えず自陣を広げようとせめぎ合い、壮絶な勢力争いを繰り広げています。
この争いの中で、悪玉菌が優勢になると腸内環境は劣悪になり腸が衰えることになるのです。
だからと言って善玉菌が増えすぎると、腸内環境のバランスが崩れ自律神経の乱れにつながります。
腸内環境は「悪玉菌10%、善玉菌20%、その他(日和見菌)70%」が理想と言われていて、どれかが増えすぎても体のバランスを崩すので良くありません。
特に悪玉菌が増えると腸の働きは低下して、胃腸の蠕動運動を弱めることになり、腸の内容物の消化や流れを妨げ、腐敗を促進させます。
その結果、おならや便が臭くなり、便秘へとつながり、お肌のトラブルや、体調不良へとつながっていきます。
それではどのような生活をしたら悪玉菌は増えて、善玉菌との勢力争いを優位にするのでしょう。
人間の体内に入った食物は胃や小腸で消化・吸収され、大腸へと送られますが、その過程で消化しきれなかった食物の残りカスは腸内細菌の餌になります。
悪玉菌と善玉菌では餌の好みが異なり、悪玉菌は肉やタンパク質、脂肪を多く含む食品を好みますが、逆に善玉菌は食物繊維を豊富に含む野菜や果物、穀類を好みます。
日本人は元来野菜や果物、穀類を中心とした食生活を送っていました。
また、昔はよく食べられていた魚も肉類より脂肪分が少なく、不飽和脂肪酸などのサラサラ成分が含まれているので、胃腸の働きには良いとされています。
しかし近年、日本人の食生活は欧米化の一途をたどり、肉の摂取量が爆発的に増加していますが、代わりに野菜や果物、穀類の接種が減少しているのが実情です。
特に若い人たちの間では、ハンバーガーやフライドチキンに代表されるファーストフードが人気で、欧米化食生活の典型とも言えます。
こうした肉類中心の食生活こそが悪玉菌は好み、格好の餌となり、増殖の手助けとなります。
腸の衰えを防ぐための第一歩は、悪しき生活習慣である悪玉菌を増やす肉類中心の食生活を見直し、善玉菌を増やす野菜中心の生活にシフトすることなのです。
②ダイエットによる食事制限
若い女性に良く見られるダイエットもまた、悪玉菌を増やすことにもつながっているのです。
食事制限による食事量の減少は、善玉菌が餌とする野菜や穀類の摂取量を減らし、吸収できる栄養も偏りやすくなることで、悪玉菌を増やす引き金となります。
便秘の要因としても挙げられている、ダイエットや食事を抜くなどの生活習慣の乱れは、悪玉菌を増殖させる環境を整えることになります。
また、無理なダイエットは、精神的にもストレスとなり、腸内細菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増加することになるのです。
③運動不足
運動不足になると全体的な筋肉が衰えるのはもちろんですが、特に腹筋と背筋が衰えると、腹部の血流が悪くなり蠕動運動を弱めることになりかねません。
蠕動運動が弱くなれば老廃物が腸で滞留し、便通が滞り、悪玉菌が増殖、さらに腸内環境を悪くして便秘へとつながるという悪循環になります。
また、現代人はエスカレーターやエレベーター、車などの普及から、歩いたり、階段を使ったりする機会が減ってきているので、このことが足の衰えにつながり、しいては運動不足に陥っていくことになります。
第8章 まとめ
いかがでしたでしょうか?
程度や頻度は違えど便秘で辛い思いをしてる人は少なくないでしょう。
便秘は体調もさることながらお肌にも悪影響を及ぼし、日常生活から潤いを奪いかねない大いなる敵です。
便秘を防ぐには便ができるまでの過程を把握し、便通の妨げになるような習慣を改め、規則正しいと言われる生活をする必要があります。
その新しい生活習慣が、体の健康すべてにいい影響を与え、精神的にも落ち着かせ、しいては明るい日常を取り戻せることでしょう。