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ロディアやモレスキンばかりじゃつまらない、「自分専用のツバメノート」を目指したTPN
ツバメノートの別製「Thinking Power Notebook」
 ツバメノートというノートをご存じだろうか。浅草の職人さんが1947年(昭和22年)からほぼ変わらない製法で作り続けているノートで、1冊150円からの大学ノートなどが有名だ。販売店での個別売りのほか、3000冊からの別製(オリジナル製作)を請け負っており(既存ノートにロゴ入れるのみの場合は100冊からも可能)過去にはフランスのファッションブランド「アニエス・ベー」のノートなども手掛けている。

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 ツバメノートの魅力は、主材料である紙にとことんこだわっている点。「ツバメ中性紙フールス」と呼ぶ独自開発した筆記用紙を使用しており、表面がデコボコしていない、インクがにじまないなど、とにかく書きやすさを追求している。

 そんなツバメノートに惹かれて作られた別製ノートが国内にも幾つかある。その1つが今回紹介する「Thinking Power Notebook」だ。このノートは、国立大学法人富山大学芸術文化学部の竹村譲教授、アスキー総研の遠藤諭所長、リュウドの長澤社長が中心となって立ち上げ、その後イラストレーターとデザイナーを加えた5人で2008年に発足したプロジェクト「Thinking Power Project」がプロデュースしているもので、これまでに10以上のノートや関連グッズを販売している(販売は発起人の1人が代表と務めるリュウドが担当)。

 そんなThinking Power Projectも誕生3周年。記念イベント&作品展「Thinking Power Factory」を10下旬に開催したので、筆者も行ってみた。

 イベントは大きく4部構成で成り、文房具に関することを紹介するWebサイト「ステーショナリープログラム」の主宰などを務める和田哲哉さんが司会を務めた。和田さんは2003年の著作「文房具を楽しく使う」でツバメノートを取材しており、本イベントの企画者の1人でもある。

●「Thinking Power Factory」オープニングイベントのプログラム

・第1部:今なお受け継がれるツバメノート創業者の精神(同社 渡邉常務)
・第2部:ツバメノートの職人さんと商品化にまつわるエピソード(リュウド長澤社長)
・第3、4部:Thinking Power Projectが誕生するまで(発起人3人とデザイナーYOUCHANによるコメント)

●コクヨ、ぺんてるとツバメノートの違い

 トップバッターは、ツバメノートの渡邉常務による「今なお受け継がれるツバメノート創業者の精神」に関する話。同社は昭和11年に創業した老舗の企業で、ツバメノートの販売を開始した昭和22年までは文房具の卸業を行っていた。同時期に文房具を扱っていた企業としては、コクヨやぺんてるなどがある。

画像:昭和30年代、商品を自動車で運ぶときに脇に付けた旗、ほか
(http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1111/10/news051.html)

 創業者・渡邉初三郎さんの孫に当たる渡邉常務は、創業当時のエピソードについて次のように語った。

 「今でこそ高品質といわれる日本のノートだが、当時(終戦後)の日本にはそうしたいいノートがなかった。中でも悪かったのが紙の質。創業者は世界に誇れる、日本の文化を担う最高級のノートを作りたいという思いがあった。だからツバメノートは専用の紙(ツバメ中性紙フールス)を作るところから始めた。とにかく高品質のノートを作りたい。その心意気は現在のツバメノートも受け継いでいる」

 紙の見栄えをよくするには、蛍光染料を混ぜて白くするという方法もあった。しかし創業者は光が乱反射して目によくないとして却下。厚さにもこだわり、表面を平らにするために最終調整まで何度も何度も改良を重ねた。「同時期に起業したコクヨが後に大企業に成長した企業家だとすれば、ツバメノートは匠だった」と渡邉常務は言う。

 本社を東京・浅草橋に置くツバメノート。ノートを作る過程では地域の職人さん複数人の手が加わっており、その人でなければ作れないものなど、まさに職人技といえる製造方法を取っている。

 ツバメノートという社名は、創業当時に走っていた列車「特急つばめ」にちなみ、「特急列車のように日本を駆け巡ってくれたら」という願いを込めて創業者夫婦が命名した。ロゴマークは、創業者が浅草を散歩している時に目に入ったアサヒビールのマークを参考にしている。当初は波の絵も入っていたが、シンプルにするため現在では省略している。

 別製のノートを引き受ける条件は、ツバメノートの良さを残すノートであること。1、2年で終わるのではなく、数年にわたってロングラン商品となるものを心掛けているという。今年3周年を迎えたThinking Power Notebookもその1つだ。

●ツバメノートの職人に支えられて

 ツバメノートの渡邉常務に続いて登場したのは、Thinking Power Notebookの販売を担当するリュウドの長澤久吉社長。長澤社長は、Thinking Power Project発起人の1人でもある。

 リュウドはもともと、PC向けのパーツなどを扱う企業だ。長澤社長も実は根っからの文房具好きというわけではなく、社会人になってからノートなどにこだわりを持つようになったのだという。

 「ノートを使い始めたのは個人情報保護法がきっかけだった。外出先でむやみにノートPCを開けなくなり、打ち合わせなどのメモ書きでノートを活用し始めた。そうして気が付いたら文具マニアになっていた」

 Thinking Power Noteをプロデュースする上で長澤社長がこだわったのが、切り取りができることだった。これまで発売したThinking Power Noteは全シリーズが1ページごとに切り取りできる。

 数あるシリーズの中でも苦労したのは、フリスクサイズのノート「Night&Day Dimple」だった。ツバメノートの設備で作れる最小のノートは名刺サイズまで(幅5センチほど)。そこで、Night&Day Dimpleは横約10×縦約7センチの大きさで作ったノートを5つに断裁するという方法を取っている。だが実はこのやり方は最初、サイズが小さい故に断裁の際に窪みができたり斜めに切れてしまうなどの理由から、無理があると職人さんに却下されていた。長澤社長は実現するまでに10回ほど工場に通い、その間、職人さんの職人技による改善もあり、何とか今の製法で了解を得たという。

 Night&Day Dimpleの件に限らず、長澤社長は製品開発の過程で何度も職人さんとやり取りを交わしてきた。中でも印象に残っているエピソードとして、長澤社長は次のように述べている。

 「ツバメノートの下請けの社長さんに、以前渡邉専務と一緒に伺った時のこと。次回のThinking Power Noteの構想案を見た社長さんに『こんなのできないといっただろー!』と怒鳴られたことがあった。しかし次回また伺うと、既に試作を幾つか作っていて見せてくれた。最初は下請けの人が親会社の件に怒鳴りつけるなんてと思ったが、いろいろ親身になって考えてくれていた。もしあの時私が20代で無職だったら『弟子にしてください!』といいたくなるほど感動した」

 和田さんによると、永田さんの場合は最初は断られるが次に打ち合わせに行くと必ず職人さんがサンプルを作っているパターンが多いという。

●「自分専用のオリジナル・ツバメノートがほしい」から始まったプロジェクト

 Thinking Power Project誕生秘話を紹介する前に、イベント会場で発表された新製品について紹介したい。

 今回の新製品は、ツバメノート史上最大サイズとなるA3の大学ノート。製品名は「ガリバー(Gulliver)」と名付けられ、気軽に持ち歩いて、外出先やオフィスで広げながら複数人で書きこみができるノートとして使ってほしいという意図が込められている。

 早速専用のアクセサリーも用意しており、イベントでは、ガリバーを丸めて両端に付けられるホルダーカバーが紹介された。他のThinking Power Noteと同様に1枚1枚切り離して利用できるので、スケッチブックやプロジェクトのアイデア出しノートとしても活用できる。

 新製品発表の後は、Thinking Power Projectの発足人である竹村教授、遠藤所長、長澤社長による対談が行われた。ここでは、後のデザイナーYOUCHANのコメントも含めながら、Thinking Power Note誕生までのエピソードを紹介する。

——始まりは一通のメールから。

 2007年5月、遠藤所長の元に一通にメールが届いた。送り主は古くから付き合いのある竹村教授。中を開くと以下のような文面があった。

 「7年前(2000年)にImpress Watch(IT系ニュースサイト)で紹介したステーショナリーがはやっているらしい。でも何だか面白くない。右を見ても左を見ても、ロディアとモレスキンばかり」

 続く内容を見ると、どうやら自分が気に入るノートを作りたいようだった(コンセプトは「モノを考える大人のための上質なノート」)。実はこのメールをもらった時、遠藤所長はあまり本気にしていなかったという。しかしメールには「今度、ツバメノートに行ってくる。市販していない5ミリ方眼の100枚A5サイズ大学ノートを作ってもうための打ち合わせに」とあり、その後話が進んだ。

 何だかんだで2007年12月には800冊のノートが完成。このころ、ノートの保管場所を提供するということで、文房具好きの長澤社長が加わった。

 長澤社長のリュウドの協力もあり、本格的に量産を開始した。最初の構想は、横型A5、B5サイズ(100ページ)とした。重要な表示のデザインは、竹村教授の知り合いだったデザイナーのYOUCHANが担当することに。

 YOUCHANによると、当時竹村教授からもらった要望は以下3点のイラストを入れることだったという。

・ゼロハリバートンのアタッシュケース
・カレーもしくはラプテスター
・折り畳みキーボード。無理そうなら普通のキーボード

 このオーダー内容とThinking Power Notebookのコンセプトである「大学ノートの良さを継承しつつ、大学ノートの固定概念から脱却したノート」をイメージして、YOUCHANはデザインを開始した。

 そうして完成したのが、B5横60ページの「メトロポリタン」とA5横60ページの「ネイチャー」だった。

 この2つのノートの主な特徴は、書き心地の良さに定評のあるツバメノート謹製であること。そして、いつでもどこでも使いやすい小振りなサイズであること。イメージを邪魔しないうす色5ミリ方眼に仕上げ、全ページに切り取りのためのミシン目を入れた。

写真でみる、イベント会場に展示されていたThinking Power Notebook
(http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1111/10/news051.html)

 Thinking Power Notebookは、リュウドのオンラインショップのほか、東京・銀座の文房具店(五十音)をはじめとした各取り扱い店舗にて購入できる。

 参加者には、本イベント開催に合わせて作成したというネイバーのデザインの特性トートバッグが配布された。バッグには、ツバメノート特性のピンバッチが付いており、ツバメノートファンにはたまらないレアアイテムとなりそうだ。

 この後、新製品ガリバーのプレゼントクイズをするなど盛況のうちにイベントは閉幕。イベント会場となった「すずめや」のどらやきをお土産にもらい、家路を急ぐ筆者であった。

[上口翔子,Business Media 誠]


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