フレーザー島のマグロ釣り | シドニー日本人会釣り部2012-16

シドニー日本人会釣り部2012-16

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マグロ釣りと一口に言っても様々な釣り方があります。
以前、私の勤めている会社が運営していたサイトに掲載したものを転載します。私が初めてフレーザー島のマグロ釣りに行ったのは2009年の12月でした。フレーザー島釣行のご参考になれば幸いです。


昨年12月の上旬、クィーンズランド州のフレーザー島周辺までマグロを釣りに行ってきました。
対象となるマグロは2種類で、サザンブルーフィンツナの亜種であるロングテールツナ(腰長マグロ)とマッカレルツナ、通称マックツナである。
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本命は腰長マグロで、最大30キロくらいまで成長するらしい。
腰長マグロについて自分は全くの無知で、釣りの対象としてはクィーンズランドのサンシャインコーストあたりからフレーザー島周辺で、水温が高い時期に接岸することくらいしかわからない。
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マックツナは日本ではスマガツオと呼ばれており、背中にサバと同様の縞模様がある。オーストラリアでは10キロ前後のものが釣れるのだが、日本でそんなサイズのスマが釣れると聞いたことはない。肉質はすこぶる美味である。

この釣りに誘っていただいたのは、シーズン中、月に一度はフレーザー島まで足を運ぶという宮原さんである。
氏によれば、釣期は11月から6月まで、シーズン初期は数こそ少ないが大型が望めるものの、この時期はエサとなる魚のサイズが小さく、シルエットの小さなルアーを遠投しなければならないため難しい釣りになるとのこと。
盛期になるにつれて、サイズの大きなエサを追うようになり、ルアーも比較的大きなものが使えるようになるので釣りやすくはなるが、全体的にマグロのサイズは小さくなるとの話だった。

今回はエサのサイズが小さいことが予想され、ルアーも必然的に小さく軽くなる。よってキャスト時に抵抗の大きな太いラインは使えない。ゆえにタックルはマグロを釣るとは思えないほど華奢である。
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そんな道具で30キロにもなるマグロが釣れるのかと思ってしまうだろう。
リールには「ドラグ」という機能がついており、強い力で引かれると糸の巻いてあるスプール部分が逆転する仕組みになっている。その強さはつまみやレバーで調整できるようになっている。
さらにいうとラインの強さ、リールの糸巻き量、竿の強度のバランスがとれていることが絶対条件で、どこかが弱いとその弱い部分にトラブルがおこる。
今回使用するラインはブレイデッドラインの強度22ポンド(10kg)でリールには400m巻いてある。

釣り方はマグロがエサの小魚を水面に追い上げ、捕食しているところにルアーをキャストする方法である。
上空ではエサのおこぼれを頂戴しようと多数の海鳥が飛び交っている。マグロやカツオにより表層に追い立てられた小魚が逃げ場を失い団子状になったところで上空からは海鳥が急降下し、水面下ではマグロ、カツオが小魚の群れに弾丸のように突っ込んで捕食を行なう。この状態を「ナブラ」や「鳥山」と呼んでいる
「土佐の1本釣り」でおなじみのカツオ一本釣りで船から海面にシャワーのように散水するのはエサの小魚が水面に追われた様子を人為的に作り出したものだ。カツオ漁では散水しながらさらに生きたイワシエサを撒くので捕食が長く続く。
だがそうでない場合、魚はすぐに沈んでしまう。よってルアーキャスティングでは最初の1投目が勝負で、3投目、4投目までナブラが続くことは殆どないと思ったほうがよい。


待ちに待ったマグロ釣りの初日である。
ガイドのポールは口数の少ない頑固者といった風情である。宮原さんによれば操船の腕は確かとのことだ。
港を早朝5時過ぎに出船し、船をフレーザー島に向けて進める。こんなに風のない日は5年間通っていても珍しいと宮原さんが言う。釣りやすいのは確かだが、魚の活性が低くならないかが気懸かりだ。風が吹くと表層近くの水面がかき混ぜられ、酸素量が多くなり、魚が水面に出やすいと言われる。

1時間ほど船を進めたところで港付近では見ることがなかった海鳥をちらほら見かけるようになる。遠目にところどころ水飛沫が白く立ち上っている。マグロがエサを喰い上げているのだ。中には半身を露わにして捕食しているものもいる。
だが思っていたよりもナブラが小さく散発である。ボートをそっと近づけてもキャストする間もなくマグロの捕食が止まってしまう。しばらくすると絶対にキャストが届かない距離で再び水柱が上がり始める。
本日のマグロはかなり頭が良いらしい。

ボートを近づける。魚が沈む。また遠くで魚が水しぶきを上げる。近づく、また沈む。この繰り返しである。
時折見かける小魚の群れは直径1メートルほどの小さなものばかりであった。

宮原さんによると、今日の状況は目視できるマグロの数は今までの中でも群を抜いているそうである。
しかしノーフィッシュのまま3時間、4時間と時間が経っていく。

午前10時半頃、規模の大きなナブラに遭遇する。飛び交う鳥の数が明らかに多い。2人ともロッドを手にし、いつでもキャストができる体制を整える。ナブラに向けて進めていた船が止まったとき射程内で水飛沫が上がる。

2人同時にキャスト。宮原さんにヒット!ラインがすごいスピードで吐き出され甲高いラインの放出音が響く。
自分にはアタらない。
焦りながらルアーを回収中、船の真横すぐの場所で3,4発同時に水飛沫が上がる。
何とか気持ちを落ち着けてナブラの向こう側にキャスト、ルアーを巻き上げながら竿先を弾くようにアクションを加えると、ぐっと手元に重みが伝わり瞬時にリールからラインが吐き出される。ダブルヒットだ。

魚の奔走は止まらない。200m近くはラインを引き出されただろうか。
ラインを巻き取ろうとしても魚はすぐに走り出し、なかなか寄ってくる気配がない。
魚を掛けてから緊張で視野が狭くなってしまったようだ。魚がバレてしまわないよう、やり取りするのが精一杯だ。
落ち着こうと深呼吸を繰り返す。

ボートを走らせていたときは感じなかったが、陽射しで焼付くような暑さだ。背中からたちまち汗が噴きだしてくる。
宮原さんが経過時間を伝えてくれる。時間の経つのが驚くほど早い。

伸びのないブレイデッドラインを使っているので魚の挙動がじかに手元に伝わる。時折魚が口にかかったルアーを嫌がるかのように強烈に首を振る。これにはルアーが外れてしまうのではないかとドキリとさせられる。

マグロの口は思ったよりも弱く、テンションが強すぎると口が切れてサヨウナラ、となる。かといってラインを緩めると口からルアーがポロリと外れる。ロッドのテンションが一定になるように気をつけるといつの間にか片膝をついてしまう。

突然ラインが緩みバレてしまったのかと思ったら、自分の方に向かって魚が走っているのだった。あわててラインを巻き取りにかかる。再びロッドにテンションを取り戻したが、ボートの底にラインが擦れると一発で切れてしまうため、魚の動きに最大限の注意をはらう。二人のラインが交差しないよう声をかけあいながら、ボートの前後を行ったり来たりを繰り返す。

魚が走るたびに冷や汗をかき、手に汗を握る。ルアーのサイズは小さく、したがってフックも小さいため非常に心許ない。
それなりの経験を積んで、プロのガイドに案内をしてもらっても実際の釣行でマグロを手に出来るのは3割を切るという。
今日の状況だと1匹とゼロの差はまさしく天国と地獄である。
「絶対にバラさない」何度も心の中で唱えた。

30分以上経って魚の動きが鈍くなってきたところでポールの手がリールのドラグノブに伸び、少々テンションを強めた。
魚を寄せにかかれというのだ。

だんだんと魚が近くに寄ってくる。深いところで魚体が見えた。魚体が横向きになったとき、ギラリと鈍く光る。
時計回りで円を描きながら、だんだんと魚が浮いてくる。これが北半球では反時計回りになるのだ。
オーストラリアで釣りをしていることを実感する。

ついに魚が水面に躍り出たところで間髪いれずにネットイン。
約50分のファイトで釣り上げたのは推定15kgのロングテールツナだった。
宮原さんと握手を交わす。この方のアドバイスがなければ魚を手にすることはできなかっただろう。感謝感激である。
他の人に釣れたことのほうが自分に釣れるよりも嬉しいのだ、という言葉がなにより嬉しかった。


夜、宿に戻ったところで魚をさばく。自分は包丁下手なので宮原さんにお任せである。
骨についた中落ちと脳天の部分を刺身で食べる。中落ちは口の中でとろけた。文句なしにうまい。
調味料をロクに持ってこなかったのでキッチン備え付けの塩コショウで味付けをして、
レンジでマグロの頭をチンしてみたところこれもじつにうまかった。
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(マックツナのお刺身)

2日間の釣りで自分はこの他に2匹のマックツナとスポテッドマッカレルを1匹釣ったのだが、
最初のロングテールツナで今回の釣りは半ば完結してしまった気分だった。
2月、3月は仕事の繁忙期なのだが、今シーズンが終わるまでに何とかもう一度足を運んでみたいものである。

ガイドのポールのホームページ
http://www.frasercoastsportfishing.com





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