漆黒の闇夜、屋敷の中の駐車場で、悠々と太らせた男の体が、
ドッと倒れ込んだ…。
両目が飛び出さんばかりに見開き、その身体はやがて無機物な
物体へ姿を変えていった………。

その熱を失った物体ができあがったころ、俺は闇に体を染め、
ブラックイーグル(HONDA・シャドゥ750㏄)にまたがり、
キーを回した。

“今日は満月だったのか”

俺はシゴトを終え、ハンドルを自宅の方角へ向けた……。








   ---------- 三年後 ----------


ジリリリリリ…!!

パチッ

「…。」  「……。」   「………。」

「やばっ!今日は朝一から会議があるんだった!」

ガバッと飛び起き、トースターにスイッチを入れながら着替える。
慌ただしく手にワックスをつけ、適当に髪を揉みながらまだ焼け
きっていない食パンを口にくわえ、玄関の鍵を閉めた。

 満員電車に揉まれながらようやく会社の最寄駅に辿り着くと、
先輩の荻原(オギワラ)さんとバッタリ会った。

「大神(オオガミ)、今日も遅刻か?」

「荻原さんこそいつもこのタイミングで会うじゃないですか」

二人とも駆け足での会話だった。

「オレはおめぇ、ギリギリでセーフってのが好きなんだよっ」

「今日はさすがにギリギリでアウトっじゃあないっすかねぇ」

「それはおめぇ、脚力次第だ」

その時-----

「!」

キキー!!!   ガシャーン!!! 

突然バイクが避けきれず何かに衝突した------。

「大神--!!」

「荻原さんこっちこっち!早く行かなきゃ遅刻しますよ!」

「えっ!? お前、今ぶつかったんじゃ…?」

「危ないところでしたが当たりませんでしたよっ」

「いや、あれはどう見たってぶつかってたぞ!? 
お前瞬間移動でもしたのかよ!?」

「何バカなこと言ってんすか、たまたまダッシュしたからですよ、
んなことより早く行きますよ!」

「お、おぅ…」

電信柱に衝突し、ひしゃげたバイクを尻目に、
二人は会社のビルへ駆け込んだ。

「荻原!大神!お前らまた遅刻か!!
もう会議は始ってるぞ、早く会議室へ行け!」

「は、はい!」

主人公『大神 世月(オオガミ ヨツキ)』は
大手テレビゲームメーカーで勤務していた。
所属部署はソフト開発部であり、フレックスタイム制だ。

「えー、 今日の議題は“今までにない、新しいゲーム”だ。
色んなジャンルのゲームが溢れてる中、皆が一度はしたく
なるような新しいゲームを考えてもらいたい。
どん な突拍子もないものでもいい。各自、一週間以内に計画書を
まとめてこい。内容、客層ターゲット、セールスポイント、
構成を書いて来週14日までに提出する 事」

“んぁ~、それが一番ムズイっての!
だいたいオレが提出したやつが採用されたためしがねぇや”

「大神!どうだ、何かあるか?」

「えっ、は、はい!えーと……、
急に言われても何も思い浮かばないですよ…」

「ばかもんっ 直感とゆうものは言われて真っ先に
ピンと浮かぶものなんだ。
その直感こそが後にいいアイデアへと結びつくものだ。
お前も入社してもう3年だ。そろそろデカイのを一発当ててくれ。
どうだ、なんか浮かんだか?」

「そう…ですね…。たとえば、…“宝探しゲーム”とかどうでしょう!」

「……。何だそれは…?」

「ある部屋の中にプレイヤーが宝物を隠して、
それを見てない友達とか家族の人に時間内に見つけてもらうとか!」

「一人しかいないプレイヤーはどうする?」

「……。後で友達が来た時に探してもらうとか…、
自分が忘れた頃に自分で見つけるとか!」

「それがPS3でする容量のゲームか!」

「…そう…ですよね…。」

“ったくどんなものでもいいって言ったじゃんか”

「いいか皆、容量は十分にある。どんな複雑なゲームでも可能だ。
せっかくの容量を無駄にするなよ。じゃあ会議はこれで終わる。
各自、14日までに提出する事!いいな」

“ふぅ~、やっと終わったよ。村本課長め、
みんなの前で恥かかせやがって”

「大神、“宝探しゲーム”は笑えたよ。
自分で隠して後で自分で探すってか?」

「また荻原さんオレのことバカにしてー」

「ハハッ いやー、お前みたいなキャラもこの会社には必要さ」

“どんなフォローだいったい”

「じゃオレ早速メシ行ってからデスクに戻るけどよ、
お前どうする?」

「メシってまだ10時半ですよ、
ぼくはちょっと一人で考えたいんで先に帰ります」

「そっか、じゃお前のアイデア期待してっからよ、またな!」

“違う意味の期待だろ、完全に”


会社を後にし、帰りがけに行きつけのクレープ屋に行くことにした。

「マスター、いつもの!」

「あいよー!」

「あれ?ちょっとマスター、あんな子いたっけ?」

「あぁ、昨日からうちで働いてくれるようになった
弥生ちゃんだ。かわいいだろ」

「かわいいっすねぇ…!」

「紹介してやろーか、おーい弥…」

「ちょっ、ちょっとマスター!いいっすよ、いいっすよまた今度で!
オレは今日は一番奥に座ります」

「ははっ 世月くんは照れ屋だなぁ」

弥生ちゃんにはバレないように、
そそくさと一番奥のテーブルに腰かけた。

“今日は髪型も適当だし、早く食べて店を出よう”


ブー、ブー、ブー  ブー、ブー、ブー 

その時、
世月の携帯に低く、太い声の主から一本の電話がかかってきた。

ピッ

「はい、大神です」



「久し振りだな、またシゴトを頼みたい……」



                      


                             to be continued....