S 死体埋めるの手伝って欲しいんだけど
R は? …何言ってんの?
S 死体、埋めるのを手伝って欲しいの
R ……なんの死体?
S 人の死体
R ……殺したの?
S うん
R どうして
S ストーカーだったの。 仕事終わりに毎日毎日家まで着いてくるから、うざったくなって
R …そんだけ?
S そんで、いい加減にしろって言ったら口論になって、突き飛ばしたら当たり所が悪かったみたい
R …それって正当防衛にならないの? 隠す前に通報しなよ
S じゃあ手伝ってくれないってこと?
R 手伝うも何も、正当防衛が立証されればアンタは無罪なんだよ。 隠す必要もなくなる
S 無理だよ、だって周りに人なんていなかった。 深夜近い時間だったから誰にも見られてなかったもん
R だからって、隠すの…
S 手伝ってくれないの?
R ……そうは言ってないじゃん
S じゃあ、今から言う住所に来てくれる?
R ……ほんとに行くとは限らないよ。 私じゃなく警察が行くかも
S 君を信じるよ。 えっと、横浜市池崎町川島116-5
住所読み上げる声、フェードアウトする。
次の日。横浜市の山奥。
S やっぱり来てくれると思ってた
R ……そいつ? 今から埋めるの
S そう
R ……分かった。 ちゃっちゃとやっちゃおう
S 何も聞かないんだね
R 昨日聞いたでしょ、ストーカーされててうざかったから殺したって
S 私が嘘ついてたら?
R そんなの、立証しようがないでしょ。 アンタが正当防衛だった証拠がないように
S ……そっか
SE 土を掘る音
S ……よし、これくらいでいいでしょ
R ……
S ねえ、そっち持って。 せーので穴に落とすよ
R ……分かった
S いくよ、せーの
SE ドサッという重い音
SE 土をかぶせていく音
R ……随分と躊躇いが無いんだね
S え? …そりゃそうでしょ。 だって、私をストーカーしてた男だよ? 躊躇う理由がないじゃん
R そうかもしんないけど… 人を殺してるんだよ?
S ……
R なんか、なんていうか… なんとも思わないの?
S ……邪魔だったんだもん
R え?
S 邪魔だったんだもん、しょうがないよね。 私の人生に不必要な存在だった。 だから抗った、そしたら死んだ。 ただそれだけ
R っ… (言い知れぬ恐怖を感じる)
S それだけだよ。 他に理由がいる?
R ……わかった
SE 土をかぶせる音
最後の土をかぶせ終わる。
S よし、こんなもんかな
R ……私達、いつか大きな罰(ばち)が当たるかもね
S (Rの手を握って) …いいよ、君と一緒ならどんな罰(ばつ)だって受け入れるよ
R ……私は御免なんだけど
S そこはさ、私もだよ〜って言うところじゃない?
R 生憎、嘘がつけない性質(たち)なもんで
S あはは、そういうところが好きなんだけどね
R ……じゃあ、帰ろっか
S うん、帰ろ。 帰って、一緒に美味しいもの食べよ
R ……うん
SE スコップが二本倒れる音
SE 山の中を歩いていく足音
END