脂質異常症(高脂血症)の治療薬であるスタチンには横紋筋融解症という副作用がよく知られています。では、実際にどれくらいの割合で発症するのでしょうか。
少し古い文献ですが、横紋筋融解症の発症率を調査したコホート研究があったので、ここに紹介します。
結論は、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンの単独療法で0.44/10,000人年と、非常に低い結果でした。スタチンとフィブラートの併用は、添付文書上は原則併用禁忌であり、併用した場合、発症は5.98/10,000人年と、単独療法に比して10倍の発症率でした。特に高齢の糖尿病患者でリスクが高かったとしています。ACCORD Lipidと言う臨床研究を元に、糖尿病患者でのスタチンとフィブラートの併用を支持する立場もあると思いますが、原則禁忌であり、特に腎機能の低下している高齢者において、併用には注意が必要と思われます。
ACCORD Lipid試験(PMID: 22432114)の補足です。
治療効果について:2型DM患者を対象としたACCORD Lipid試験において、主解析ではプラセボに比較して有意差を示すことは出来ませんでした。事前登録されたサブグループ解析(TG:204mg/dL以上かつHDL-C:35mg/dL未満)において、併用療法の有効性が示唆されていますが、ランダム化の割付が壊れている可能性はあるので、あくまで「有効かも知れないと言う仮説」と解釈した方が良いでしょう。一次エンドポイントは主要CVD初発(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合エンドポイント)でした。
安全性について:横紋筋融解症の診断基準である、クレアチニンキナーゼ(CK)値が正常上限の10倍となったのはフィブラート群0.4%、プラセボ群0.3%でした。統計的有意差はありませんでしたが、リスク上昇傾向が示唆されました。ランダム化試験の性質上症例数が少なく、検出力不足だったのかも知れません。CK値の上昇は可逆的で、フィブラート休薬後にベースラインまで回復したとされています。
ここでしたように、論文を批判的吟味するために参考になる図書がありますので、2冊紹介します。
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いかがでしたでしょうか。最後に、冒頭に紹介したコホート研究論文のアブストラクトと機械翻訳を掲載しておきます。
JAMA. 2004 Dec 1;292(21):2585-90. Epub 2004 Nov 22.
Incidence of hospitalized rhabdomyolysis in patients treated with lipid-lowering drugs.
Graham DJ1, Staffa JA, Shatin D, Andrade SE, Schech SD, La Grenade L, Gurwitz JH, Chan KA, Goodman MJ, Platt R.
Author information
- 1
- Office of of Drug Safety, Center for Drug Evaluation and Research, Food and Drug Administration, Rockville, Md 20857, USA. grahamd@cder.fda.gov
Abstract
CONTEXT:
Lipid-lowering agents are widely prescribed in the United States. Reliable estimates of rhabdomyolysis risk with various lipid-lowering agents are not available.
OBJECTIVE:
To estimate the incidence of rhabdomyolysis in patients treated with different statins and fibrates, alone and in combination, in the ambulatory setting.
DESIGN, SETTING, AND PATIENTS:
Drug-specific inception cohorts of statin and fibrate users were established using claims data from 11 managed care health plans across the United States. Patients with at least 180 days of prior health plan enrollment were entered into the cohorts between January 1, 1998, and June 30, 2001. Person-time was classified as monotherapy or combined statin-fibrate therapy.
MAIN OUTCOME MEASURE:
Incidence rates of rhabdomyolysis per 10,000 person-years of treatment, number needed to treat, and relative risk of rhabdomyolysis.
RESULTS:
In 252,460 patients treated with lipid-lowering agents, 24 cases of hospitalized rhabdomyolysis occurred during treatment. Average incidence per 10,000 person-years for monotherapy with atorvastatin, pravastatin, or simvastatin was 0.44 (95% confidence interval [CI], 0.20-0.84); for cerivastatin, 5.34 (95% CI, 1.46-13.68); and for fibrate, 2.82 (95% CI, 0.58-8.24). By comparison, the incidence during unexposed person-time was 0 (95% CI, 0-0.48; P = .056). The incidence increased to 5.98 (95% CI, 0.72-216.0) for combined therapy of atorvastatin, pravastatin, or simvastatin with a fibrate, and to 1035 (95% CI, 389-2117) for combined cerivastatin-fibrate use. Per year of therapy, the number needed to treat to observe 1 case of rhabdomyolysis was 22,727 for statin monotherapy, 484 for older patients with diabetes mellitus who were treated with both a statin and fibrate, and ranged from 9.7 to 12.7 for patients who were treated with cerivastatin plus fibrate.
CONCLUSIONS:
Rhabdomyolysis risk was similar and low for monotherapy with atorvastatin, pravastatin, and simvastatin; combined statin-fibrate use increased risk, especially in older patients with diabetes mellitus. Cerivastatin combined with fibrate conferred a risk of approximately 1 in 10 treated patients per year.
Comment in
- Postmarketing surveillance--lack of vigilance, lack of trust. [JAMA. 2004]
- Rhabdomyolysis and lipid-lowering drugs. [JAMA. 2005]
- PMID:15572716
以下、Google翻訳です。
コンテキスト:
脂質低下剤は、米国で広く処方されている。様々な脂質低下剤による横紋筋融解のリスクの信頼できる推定値は入手できません。
目的:
異なるスタチンおよびフィブラートで単独または組み合わせて治療された患者における横紋筋融解の発生率を推定する。
デザイン、設定、患者:
スタチンとフィブラート使用者の薬物特有の開始コホートは、米国全土の11のマネージドケア健康計画からの主張データを用いて確立された。少なくとも180日前の保健計画の登録患者は、1998年1月1日から2001年6月30日の間にコホートに登録された。人時は、単独療法または併用スタチン - フィブラート療法として分類された。
主な結果の測定:
治療1万人年あたりの横紋筋融解の発生率、治療に必要な数、および横紋筋融解の相対リスク。
結果:
脂質低下剤で治療された252,460例の患者において、治療中に入院した横紋筋融解症の24例が発生した。アトルバスタチン、プラバスタチン、またはシンバスタチン単剤療法の10,000人年当たりの平均発生率は0.44(95%信頼区間[CI]、0.20-0.84)であった。セリバスタチンについては、5.34(95%CI、1.46-13.68)。フィブラートについては、2.82(95%CI、0.58-8.24)であった。これと比較すると、非曝露人時の発生率は0(95%CI、0-0.48; P = .056)であった。アトルバスタチン、プラバスタチン、またはシンバスタチンとフィブラートとの併用療法では5.98(95%CI、0.72-216.0)、併用セリバスタチン・フィブラート使用では1035(95%CI、389-2117)に増加しました。 1年間の治療では、横紋筋融解症1例の治療に必要な患者数は、スタチン単剤治療では22,727人、糖尿病患者ではスタチンとフィブラート併用治療を受けた患者では484人、治療を受けた患者では9.7人から12.7人セリバスタチンにフィブラートを加えたもの。
結論:
横紋筋融解症のリスクは、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンの単独療法でも同様で低かった。スタチンフィブラートを併用すると、特に高齢の糖尿病患者でリスクが増加する。フィブラートと組み合わせたセリバスタチンは、年間約10人の治療患者のリスクをもたらした。
PMID:15572716 DOI:10.1001 / jama.292.21.2585

