【感度、特異度 尤度比のまとめ】
検査陽性 検査陽性 計
疾患あり a b a+b
疾患なし c d c+d
計 a+c b+d a+b+c+d
感度(sensitivity)= a/(a+c) 疾患のある患者の中で検査が陽性である確率
特異度(specificity)= d/b+d 疾患のない患者の中で検査が陰性である確率
陽性適中率(positive predictive value)= a/(a+b) 検査が陽性ででた人の中で病気のある確率
陰性適中率(negative predictive value)= d/(c+d) 検査が陰性ででた人の中で病気のない確率
陽性尤度比=sensitivity/(1-specificity) 病気のある人が検査陽性となる確率を病気のない人が検査陽性となる確率でわったもの
陰性尤度比=(1-sensitivity)/specificity 病気のある人が検査陰性となる確率を病気のない人が検査陰性となる確率でわったもの
★感度、特異度は疾患のある人から出発しているので臨床推論とは逆である。
★感度の高い検査は陰性のときに疾患除外に有用であり、また特異度の高い検査は疾患を診断するのに用いる。
★陽性尤度比は、感度、特異度から計算される値で、疾患の頻度や有病率とは関係しない。 陽性尤度比の高い検査ほど検査前後のオッズを大きく変化させることができるので診断価値が高い検査ということになる。
★適中率は検査の結果から疾患の有無を診断するので臨床推論と同じだが、その値は、有病率に依存する。有病率が低い疾患の集団で検査すると陽性的中率は下がってしまう。
【LR+の実際の診断】
「マクギー推薦のことば」より転記
1981年であるからずいぶん前のことになってしまったが,日本の病院で内科研修を終えた私は,米国ボストンのケンブリッジ病院で内科クリニカルフェローとしての研修を意気揚々と始めた。その年の冬,現在でも私の記憶にまざまざと残っている,次のような衝撃的なエピソードに出会った。狭心症の疑いで入院した男性患者の検査結果に関する,レジデント(研修医)とアテンディング・ドクター(指導医)のベッドサイドでの会話である。
研修医:昨日行ったトレッドミル運動負荷テストは陽性でした。
指導医:これまでの研究結果では,トレッドミルテストの感度はどれくらいだろう?
研修医:ST低下の程度を考えると,約80%でしょうか。
指導医:特異度は?
研修医:90%程度と思います。
指導医:運動負荷テストをする直前までに得られていた臨床情報に基づいて,冠状動脈疾患が存在する可能性はどのくらいと考えていたのか?
研修医:フィフティ・フィフティと思っていました。
指導医:それでは,運動負荷テストが陽性という新たな情報を加えると,冠状動脈疾患の可能性はどれくらいと考えるのか?
研修医:検査を行う前の確率が0.5ですので,確率を(1-確率)で割ったオッヅに変換すると1.0となります。感度を(1-特異度)で割った陽性尤度比は0.8/(1-0.9)=8になりますので,検査前オッヅに陽性尤度比を掛け合わせた検査後オッヅは1.0×8で8。オッヅを(1+オッヅ)で割って確率に変換すると0.87ですので,検査後確率は約90%になります。
実際のところは,このようにスムーズな会話ではなく,後日再現するとこのような会話であったことがわかったのであり,感度や特異度,尤度比,検査前確率,検査後確率などといった臨床疫学用語自体,当時,私はまったく知らなかった。しかしながら,内容を理解すればするほど,それまでに受けてきた臨床トレーニングとの違いに愕然とし,新たな学問領域への興味がかきたてられることとなった。
上記のような臨床疫学的手法を用いてベッドサイドで教えたり研究したりする同僚の多くがMDに加えてMPH(Master of Public Health)という肩書を有するのを知り,公衆衛生大学院で疫学や統計学を学ぶことの必要性を痛感し,その後今日までに至る私のキャリアが決定的なものとなった。
1990年代には,検査の感度・特異度といったいわゆる検査性能に加え,身体所見の感度・特異度が多くの研究論文で扱われていて,それら身体所見の感度・特異度についてのエビデンスをまとめた教科書が早晩出版されるであろうとのうわさが流れていた。それがDr. Steven McGeeによる本書であり,今般第3版となり,多くの工夫が重ねられ,より臨床現場で使いやすい内容となっている。柴田寿彦先生の素晴らしい翻訳により,わが国の臨床現場において,多くの医師がエビデンスに基づく定量的な思考過程を身につけることのできる環境が整備されたことになる。柴田先生のご苦労に深甚なる敬意を表するとともに,本書が多くの医師の座右の書となることを祈るものである。
2014年2月18日
聖路加国際病院院長
福井次矢
検査陽性 検査陽性 計
疾患あり a b a+b
疾患なし c d c+d
計 a+c b+d a+b+c+d
感度(sensitivity)= a/(a+c) 疾患のある患者の中で検査が陽性である確率
特異度(specificity)= d/b+d 疾患のない患者の中で検査が陰性である確率
陽性適中率(positive predictive value)= a/(a+b) 検査が陽性ででた人の中で病気のある確率
陰性適中率(negative predictive value)= d/(c+d) 検査が陰性ででた人の中で病気のない確率
陽性尤度比=sensitivity/(1-specificity) 病気のある人が検査陽性となる確率を病気のない人が検査陽性となる確率でわったもの
陰性尤度比=(1-sensitivity)/specificity 病気のある人が検査陰性となる確率を病気のない人が検査陰性となる確率でわったもの
★感度、特異度は疾患のある人から出発しているので臨床推論とは逆である。
★感度の高い検査は陰性のときに疾患除外に有用であり、また特異度の高い検査は疾患を診断するのに用いる。
★陽性尤度比は、感度、特異度から計算される値で、疾患の頻度や有病率とは関係しない。 陽性尤度比の高い検査ほど検査前後のオッズを大きく変化させることができるので診断価値が高い検査ということになる。
★適中率は検査の結果から疾患の有無を診断するので臨床推論と同じだが、その値は、有病率に依存する。有病率が低い疾患の集団で検査すると陽性的中率は下がってしまう。
【LR+の実際の診断】
「マクギー推薦のことば」より転記
1981年であるからずいぶん前のことになってしまったが,日本の病院で内科研修を終えた私は,米国ボストンのケンブリッジ病院で内科クリニカルフェローとしての研修を意気揚々と始めた。その年の冬,現在でも私の記憶にまざまざと残っている,次のような衝撃的なエピソードに出会った。狭心症の疑いで入院した男性患者の検査結果に関する,レジデント(研修医)とアテンディング・ドクター(指導医)のベッドサイドでの会話である。
研修医:昨日行ったトレッドミル運動負荷テストは陽性でした。
指導医:これまでの研究結果では,トレッドミルテストの感度はどれくらいだろう?
研修医:ST低下の程度を考えると,約80%でしょうか。
指導医:特異度は?
研修医:90%程度と思います。
指導医:運動負荷テストをする直前までに得られていた臨床情報に基づいて,冠状動脈疾患が存在する可能性はどのくらいと考えていたのか?
研修医:フィフティ・フィフティと思っていました。
指導医:それでは,運動負荷テストが陽性という新たな情報を加えると,冠状動脈疾患の可能性はどれくらいと考えるのか?
研修医:検査を行う前の確率が0.5ですので,確率を(1-確率)で割ったオッヅに変換すると1.0となります。感度を(1-特異度)で割った陽性尤度比は0.8/(1-0.9)=8になりますので,検査前オッヅに陽性尤度比を掛け合わせた検査後オッヅは1.0×8で8。オッヅを(1+オッヅ)で割って確率に変換すると0.87ですので,検査後確率は約90%になります。
実際のところは,このようにスムーズな会話ではなく,後日再現するとこのような会話であったことがわかったのであり,感度や特異度,尤度比,検査前確率,検査後確率などといった臨床疫学用語自体,当時,私はまったく知らなかった。しかしながら,内容を理解すればするほど,それまでに受けてきた臨床トレーニングとの違いに愕然とし,新たな学問領域への興味がかきたてられることとなった。
上記のような臨床疫学的手法を用いてベッドサイドで教えたり研究したりする同僚の多くがMDに加えてMPH(Master of Public Health)という肩書を有するのを知り,公衆衛生大学院で疫学や統計学を学ぶことの必要性を痛感し,その後今日までに至る私のキャリアが決定的なものとなった。
1990年代には,検査の感度・特異度といったいわゆる検査性能に加え,身体所見の感度・特異度が多くの研究論文で扱われていて,それら身体所見の感度・特異度についてのエビデンスをまとめた教科書が早晩出版されるであろうとのうわさが流れていた。それがDr. Steven McGeeによる本書であり,今般第3版となり,多くの工夫が重ねられ,より臨床現場で使いやすい内容となっている。柴田寿彦先生の素晴らしい翻訳により,わが国の臨床現場において,多くの医師がエビデンスに基づく定量的な思考過程を身につけることのできる環境が整備されたことになる。柴田先生のご苦労に深甚なる敬意を表するとともに,本書が多くの医師の座右の書となることを祈るものである。
2014年2月18日
聖路加国際病院院長
福井次矢
