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得意絶頂のときこそ隙ができることをしれ 徳川家康

あまりにものいい天気に海まで出かけた午後。
家にいられない若者達が、外ならばいいだろとばかりに砂浜をぷらぷら歩き回っていた。

来て良かったね~の声がそこかしこで響いていた。

学校の休みが原因なのか、集団で歩く若者を多く見かける。
砂浜であればウィルスも風で飛んでいくだろうとばかりに集団で遊んでいるが、
仲間とのふれあいには注意しなければならない。
卒業式もないままお別れをした仲間との
時間なのかもしれないな。3年間の濃厚接触。これからはもうできない。
人気のない堤防を選んで、おにぎりを食べることにする。
するととたんにトンビがやってきた。
もう間近でホバリングのように、空中に静止している。
こちらも人間様なので、彼らに食料を奪われぬよう、十分に注意しおにぎりを頬張る。
きょろきょろ頭上を見る様はまるで、ミーアキャットのようではないか。
強固な我々のディフェンスに恐れをなしたのか、彼らはやがて遠くの山まで離れて行った。一説に寄ると猛禽類は1キロ先の獲物がわかるという。
そんな情報まで手に入れているディフェンス力なので、遠くにいても、気を抜くこと無く、おにぎりを頬張る。
もはや景色どころではない。こんないい天気なのに。
やがておにぎりをあとふたかじりのところまで来たときに、突然何かが私の頭と手をはたき、おにぎりをたたき落とした。地面には得意顔のトンビが
「なんだ!文句あんのか!おにぎり!」と言わんばかりのメンチ切りでにらんでいた。
その横に、カラスも2羽やってきた。
彼らは首尾良くおにぎりをかっさらい、悠々と空に舞い上がる。
生まれて初めて、トンビに油揚げ・・・いやおにぎりをとられた。
ほんの数十秒前確認したときは空には一羽もいなかったはずなのに、後ふたかじりだと気を抜いた、ほんの少しの隙を彼らは見逃さなかったのだ。
そして無いよりすごいのは、そんなトンビのアタックを見逃さずにおこぼれを拾おうと狙っていたカラスだろう。
すごいやつらだ。どんな隙も見逃さないびりびりした世界が、果てしなく穏やかな風の吹いているさわやかな午後に漂っていたことに驚いた。
もし僕が小さな野ねずみなどだったら、ものすごい注意していたのに、完全に持ってかれている。
しまった!と思う間もなく、空高く運ばれているのだ。
彼らはそんな動物における心の隙を見つける力がある。
大きさの比率からすれば、空を飛んでいる僕が、マンモスの食べているリンゴを狙うようなものだろう。
こんな小さな隙も見逃さなかった彼らトンビとそしてカラスの軍団に思わず拍手を送りたくなる。おにぎりくらいくれてやるさ。
残念なことに、辛子明太子のおにぎりだったが・・・。

そんな隙の無い人間同士の戦いを乗り越えてきた、偉人、吉田茂の銅像も見てきた。
大磯の豪邸の丘の上に立っている。サンフランシスコを見ているのだそうな。
サンフランシスコ講和条約のつながりだろうが、国会議事堂を見ていてほしかったなとちょっと思った。
色々守ってください。