いつまでも予約席
俺が通う店には、いつも同じ台を打つおじさんがいる。おじさんは、いつも帽子をかぶって店に来るんで、いつしか常連からは「帽子のおっちゃん」と呼ばれ親しまれていた。
「まいっちゃうよな~・・・もう1週間も入れっぱなしだよ。」
それでもおっちゃんは楽しそう。どんなに他の台のイベントが熱くても、どんなに話題性のある新機種が導入されても、帽子のおっちゃんは毎日1台のジャグだけを打ってるんだ。
出ていなくても楽しいみたい。出たときは満面の笑み。おっちゃんと接すると、こっちまで心が和む。勝ち負けの、斬った張ったのタマのやり取りを続ける俺も、このおっちゃんを見ると「ひとりの純粋なスロットファン」に戻れる・・・そんな安らぎを与えてくれるおっちゃんだ。
713番台・・・この台だけは、常連なら絶対に座ることがない台。なぜなら、帽子のおっちゃんが毎日決まってその台に座るから。
いつしか、その台には完全な一見さん以外、間違っても誰も座ることはなかった。
ある日、俺は大抵毎朝来る「帽子のおっちゃん」がいないことに気が付く。
この日の店は「末尾3は設定6確定」と言うイベント。俺は迷った。
(おっちゃん、あとから来るのかな・・・。でも朝来ない日はまず1日来ないし、今日は座っちゃってもいいかな。)
開店時間となり、俺は迷った挙句713番台に向かった。
(今日はもう来ないだろ・・・。)
朝から順調にペカペカ光る713番台。あっという間にコインはドル箱を埋め尽くし、もう2箱目も埋め尽くされようとしていた。
時間も夜に差し掛かり、ボーナスを消化している俺の肩を、誰かがポンポンと叩く。振り返ると、ニコニコと笑顔の帽子のおっちゃんが立っていた。
「いや、あの・・・今日もう来ないと思ってたから。ごめんねおっちゃん・・・。」
おっちゃんはニコニコ笑顔のまま、「いいんだよ、そんなこと。」と言ってるような手振りを見せ、早く打つように俺を手で促した。
次に振り返ったときには、おっちゃんはもうそこにはいなかった。
翌朝、いつものように店に行く俺。いつもの常連たちが、何やら神妙な顔で駐車場で輪になっている。
「おはよー!」
いつものように常連仲間に声を掛ける俺。でも、なんだかみんなの顔に笑顔がない。
「どうしたん?何かあった??」
ひとりが重い口を開いた。
「・・・亡くなったらしいよ。」
「誰が?」
「・・・帽子のおっちゃん。昨日の夜だって。朝から具合悪くなって、夕方には集中治療室入ったらしいけど、夜8時ごろ亡くなったらしいよ。」
「そんな・・・そんなはずないよ!だっておっちゃん、夕べ店に・・・。」
言いかけて俺はやめた。おっちゃんが来たのは確か夜8時ごろ。天国へ行く途中、大好きだった713番台を見に来たに違いない・・・。
「最後に打たせてあげたかったな、あの台・・・。」
俺は空を見上げ、声にならない声で呟いた。
空からは、暑い真夏の日差しが燦々と差し込んでいた。
もちろん713番台は、いまでも俺たち常連は誰も座らない。空き台の時は、おっちゃんが好きだったジョージアの缶コーヒーを台横に置き、おっちゃんにゆっくりとその台を打ってもらってるんだ。
なんとなく、いつも楽しそうにジャグを打ってるおっちゃんがそこに座ってる・・・そんな気がして、俺はならなかった。
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いやいやいや・・・、MHにいるんですよね、毎日同じ台打つおっちゃん。
皆さんの店にもいません?パチでもスロでも、毎日必ず同じ台打つ人。なんとなく、誰もその台には座らなくなるんですよねー^^
てなわけで、ノンフィクションを脚色した読み物なんぞ書いてみましたw
てか、勝手に殺してごめんよおっちゃん(笑)