*ジュリエット・グレコ(9)ー街角ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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1975年、グレコは再びレコード会社を変え、バークレー社を去り、RCAヴィクターに移りますが、そこで2枚のアルバムを出します。1975年の「生きる(Vivre)」と1977年の「グレコ、ジャック・ブレル、アンリ・グゴー、ピエール・セゲールを歌う(Gréco chante Jacques Brel, Henri Gougaud, Pierre Seghers )」の2枚です。グレコが作詞に手を染めたのは1969年ですが、この2枚のアルバムを出すにあたってグレコは再び作詞家としての筆を執ります。1975年のアルバムでは、「オレンジの花(Fleur d'orange)」、「時代の悪(Le Mal du temps)」、「子供(L'Enfant)」を作詞。他の曲はアンリ・グゴーが作詞をします。また、1977年のアルバムでは「狂気の国(Pays de déraison)」、「愛は死の裏をかく(L'amour trompe la mort)」を作詞します。この5曲の作詞をもって、グレコは作詞家としての筆を折ります。


さて、今日の曲ですが前回に引き続き、シャルル・トレネ作詞・作曲による

「街角(Coin de rue)」

1954年にグレコがカヴァーしています。以前のブログでも書きましたが、この曲にはこんなエピソードがあります。

トレネはある日ジュリエット・グレコと出会うのですが、そのとき彼女から「何かいい歌はないかしら?」と相談されます。するとトレネはナプキンにそのとき頭に浮かんだ歌を書きつけ、グレコに渡しますが、それがこの「街角」だったということです。
いかにも才人トレネらしいですね(笑)

この曲はトレネ自身も歌っていますが、グレコがオランピア劇場で初めて歌い大成功をおさめました。


今日は、グレコの他にミシュリーヌ・ダクス(Micheline Dax )のヴァージョンもご紹介しておきます。


Coin De Rue
Je me souviens d'un coin de rue
Aujourd'hui disparu.
Mon enfance jouait par là.
Je me souviens de cela.
Il y avait une palissade,
Un taillis d'embuscades.
Les voyous de mon quartier
Venaient s'y batailler.


ある街角が心に浮かぶ
今はもうないけれど
子供の頃はそこで遊んでいたっけ
その頃のことが心に浮かぶ
囲いがあったなあ
待ち伏せをする茂みもあった
街のチンピラたちが
ここに来ては喧嘩をしていた


A présent, il y a un café,
Un comptoir tout neuf qui fait de l'effet,
Une fleuriste qui vend ses fleurs aux amants
Et même aux enterrements.


今は、カフェが一軒
真新しいカウンターはなかなかお洒落だ
花売り娘がいて恋人達に花を売っている
おやおや、葬式に来る人たちにも


Je me souviens d'un coin de rue
Aujourd'hui disparu.
Je me souviens d'un triste soir
Où, le coeur sans espoir,
Je pleurais en attendant
Un amour de quinze ans,
Un amour qui fut perdu
Juste à ce coin de rue


ある街角が心に浮かぶ
今はもうないけれど
悲しい夜のことが心に浮かぶ
その夜 すっかり希望を失い
むなしく待ちながら泣いていたっけ
15のときの恋だった
振られちまった恋だった
ちょうどこの街角で


Et depuis, j'ai beaucoup voyagé,
Trop souvent en pays étrangers.
Mondes neufs, constructions et démolitions,
Vous me donnez des visions
.

それから随分旅をした
外国にも嫌というほど出かけたさ
新しい世界が現れ、建設と破壊が繰り返される
まるで幻を見るようだ


Je crois voir mon coin de rue
Et, soudain apparus,
Je retrouve ma palissade,
Mes copains, mes glissades,
Mes deux sous de muguet de printemps,
Mes quinze ans... mes vingt ans,
Tout ce qui fut et qui n'est plus,
Tout mon vieux coin de rue.


あの街角が目に浮かぶようだ
そして、不意に姿を見せるのさ
昔のあの囲いが
昔の仲間たちが、氷の上を滑りまわって遊んだことが
あのささやかな春のスズランの花が
僕の15の年月が…僕の20歳(はたち)の年月が
昔あった全てのことが、今はもう無い全てのことが
僕の懐かしいあの全ての街角が


(私訳)


ジュリエット・グレコ


ミシュリーヌ・ダクス