*シューマンの歌曲 (34)-詩人の恋 第16曲 昔の、いまわしい歌をー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

ミスター・ビーンのお気楽ブログ

好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

≪エンデニヒ療養所③≫

クララには夫の症状について危機的な情報は知らされていなかったようです。
そこで、クララは不安を打ち消すように1856年1月~3月半ばにかけてプラハ
とウィーン方面に、4月からはイギリスで演奏旅行を行なっています。

しかし6月には、ブラームスからシューマンはあと数週間の命だと知らされ、
7月23日にはエンデニヒ療養所からシューマン危篤の電報が届きます。
クララはブラームスと共に療養所を訪れますが、面会は許されません。
シューマンは一旦は危機を脱し、ブラームスは「生前のシューマンに会いたけ
ればすぐ来るように」とヨアヒムに電報を打ちます。

そして、1856年7月27日、クララはヨアヒムと共に療養所を再訪し、2年半
振りに夫ロベルトと再会します。
シューマンは肺炎で朦朧としていましたが、力を振り絞ってクララを抱きしめ
二言三言、意識のある言葉を呟きました。

7月29日午後4時頃、シューマンは一人で静かに息を引き取ります。
クララはちょうどヨアヒムに会うため駅に出かけていたので、夫の遺骸と対面
したのは死後30分後のことでした。
30日には遺体が解剖され、7月31日午後7時から簡素な埋葬式が始まりました。

シューマンの棺はエンデニヒからコブレンツ門を通って運ばれ、ブラームス、ヨ
アヒム、ディートリヒが月桂冠を持って棺の後に続きます。
シューマンの死を聞きつけたボン市民が加わり、葬列はしだいに長くなり、瞬く
間にマルクト広場は人で埋めつくされました。

棺はそのままボンのシュテルネントーアにある墓地に運ばれ、ベートーベンの
男性合唱曲「死はすみやかに訪れ」が歌われ、連隊のバンドが讃美歌を奏する
中で棺が降ろされます。
そして、埋葬は多くのボン市民が参加する中で行われました。

翌1857年6月8日、シューマンの誕生日に簡素な墓碑がブラームスによって建て
られ、1880年5月2日には彫刻家ドンドルフの手になる新しい墓碑が完成。
上にシューマンの横顔のレリーフが彫られ、足元で月桂冠を捧げているのがク
ララです。


$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-ドンドロフによるシューマンの墓碑

シューマンの入院していたエンデリヒ療養所は、現在町立図書館となり、シュ
ーマンが療養していた二階部分が「シューマン記念館」になっています。
2006年7月29日、シューマン没後150年を記念して新しいシューマン像が建物
正面に建てられました。


$ミスター・ビーンのお気楽ブログ-エンデニヒのシューマン銅像

今日はドレスデン時代の最後、1850年8月5日にレーナウの詩に作曲された歌曲集
「6つの詩とレクイエムOp.90」の第7曲

「レクイエム」

フィッシャー=ディースカウの独唱で聴いてみます。




≪今日の1曲≫

歌曲集「詩人の恋」もいよいよ終曲

「Die alten, bösen Lieder 昔の、いまわしい歌を」

詩人は半ば怒りと半ば自暴自棄の気持ちをこめ、愛の終焉を激しい調子
で歌い上げます。しかし、すべてを歌い上げた後、まるで回想するかのよ
うにピアノによる第12曲「輝く夏の朝に」が静かな佇まいで続き、詩人
の憧れと痛みが昇華され全曲が終了します。


16. Die alten, bösen Lieder 昔の、いまわしい歌を
Die alten, bösen Lieder,
昔の、いまわしい歌を、
Die Träume bös’ und arg,
嫌な、悪い夢を、
Die laßt uns jetzt begraben,
それらを今こそ葬ろう、
Holt einen großen Sarg.
大きな棺桶を持ってこい。

Hinein leg’ ich gar manches,
その中に僕は本当にたくさんのものを入れる、
Doch sag’ ich noch nicht, was;
だがそれが何かはまだ言わない。
Der Sarg muß sein noch größer,
棺桶はハイデルベルクの酒樽より
Wie’s Heidelberger Faß.
もっと大きくなくてはならない。

Und holt eine Totenbahre,
棺桶を載せる台を持ってこい、
Und Bretter fest und dick;
それと丈夫で厚い板を。
Auch muß sie sein noch länger,
それらはマインツの橋より
Als wie zu Mainz die Brück’.
もっと長くなくてはならない。

Und holt mir auch zwölf Riesen,
それから12人の大男を連れてこい、
Die müssen noch stärker sein
彼らはライン川沿いのケルンの大聖堂にいる
Als wie der starke Christoph
クリストフよりも
Im Dom zu Köln am Rhein.
もっと力持ちでなければならない。

Die sollen den Sarg forttragen,
彼らに棺桶を担いでもらい、
Und senken ins Meer hinab;
海へと沈めよう。
Denn solchem großen Sarge
これほど大きな棺桶には
Gebührt ein großes Grab.
大きな墓が相応しいのだから。

Wißt ihr, warum der Sarg wohl
わかるかい?どうしてこの棺桶が
So groß und schwer mag sein?
こんなに大きくて重いのか。
Ich senkt auch meine Liebe
僕はこの中に 一緒に沈めたんだ。
Und meinen Schmerz hinein.
僕の愛と 僕の痛みを。


フィッシャー=ディースカウ(Bar.) 2分48秒から


ペーター・シュライアー(Ten.)