*シューマンの歌曲 (23) - 詩人の恋 ≪素晴らしく美しい五月に≫ ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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≪ドレスデン時代④≫

今日はシューマンの誕生日ですね。1810年生まれですから今年は生誕102年
にあたります。

さて「交響曲第二番ハ長調」が完成すると、高揚感に満たされたシューマン
夫妻は11月24日からウィーン、プラハ、ブルノに演奏旅行に出かけます。
ウィーンには1846年11月27日から1847年1月21日まで滞在し、演奏会を4回
開きますが、経済的には成功とは言えなかったようです。ウィーンの音楽界
の反応も冷ややかなものでした。

3月25日、ドレスデンに帰宅すると、シューマンはフリードリヒ・へッペル
の戯曲「ゲノフェーファ」を基にオペラの作曲に取り組みます。
そこで、1847年の創作活動は「ゲノフェーファ」が中心となりますが、その
傍ら優れたピアノ三重奏曲を2曲作曲しています。

「ピアノ三重奏曲第一番ニ短調 Op.63」は、深い憂いとパトスを漂わせ、ブラ
ームスを先取りしたような作品に仕上がります。
それとは対照的に「ピアノ三重奏曲第二番ヘ長調 Op.80」は、リーダークライ
スOp.39の第二曲「インテルメッゾ」が引用され、軽やかな飛翔感がみなぎる
作品になっています。
妻クララは、第二番を自分が最も愛する作品の一つに挙げていました。
そこで、今日はピアノ三重奏曲第二番の第二楽章をボザール・トリオの演奏
で聴いてみたいと思います。




ところで、1847年は残念ながら訃報の年でもありました。

6月22日には、長男エミールが生後16箇月で死去。

11月4日には、盟友メンデルスゾーンが11月4日にその短すぎる生涯を終えます。
シューマンは「フェリクス・メンデルスゾーンの思い出」を書き、そこに畏友
を失った深い悲しみを記します。
また、「少年のためのアルバム Op.68」の第28曲「思い出」は亡きメンデルス
ゾーンへのオマージュでした。




≪今日の1曲≫

歌の方は今日から、歌曲集「詩人の恋 Dichterliebe Op.48」を聴いてみます。
1840年5月24日から6月1日までの、わずか9日間で書かれ、詩はハインリッヒ・
ハイネ
の「歌の本」の中の「抒情間奏曲」から16篇を選んでいます。

第1曲から第3曲までは恋の喜びと憧れを歌い、第4曲から第7曲でその憧れは
内面化し、次第に心の痛みへと変容していきます。
さらに第8曲から第14曲で心の痛みは苦いアイロニーとなり、幻想的に心の振幅
を広げていきます。
そして第15曲と第16曲で、音楽は交響的な音響へと展開し愛の終焉が語られ
ます。

今日は第1曲

「Im wunderschönen Monat Mai 素晴らしく美しい五月に」

を、フィッシャー=ディースカウ(Bar.)とイアン・ボスとリッジ(Ten.)の歌唱
で聴いてみますが、DFD版は第6曲迄、ボスとリッジ版は第4曲まで入っています。

第1曲は夢見るようなピアノの序奏に導かれ、詩人の心に芽生えた恋を美しく歌い
上げます。



1. Im wunderschönen Monat Mai 素晴らしく美しい五月に
Im wunderschönen Monat Mai,
素晴らしく美しい五月に、
Als alle Knospen sprangen,
あらゆるつぼみが開き、
Da ist in meinem Herzen     
僕の心の中にも
Die Liebe aufgegangen.Die Liebe aufgegangen.
愛が花咲いた。

Im wunderschönen Monat Mai,
素晴らしく美しい五月に、
Als alle Vögel sangen,     
あらゆる鳥が歌い出し、
Da hab’ ich ihr gestanden
僕は彼女に打ち明けた
Mein Sehnen und Verlangen.
僕の憧れ、僕の望みを。





フィシャー=ディースカウ(Bar.)(ピアノ:ジェラルド・ムーア)


イアン・ボストリッジ(Ten.)