*フィッシャー・ディスカウとシューベルト歌曲(31) -海辺でー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

《シューベルティアーデ③》
シューベルティアーデはウィーン以外でも開かれていて、
特にショーバーの伯父が管財人をつとめていたアッツェ
ンブルク城は、1820年頃から毎年夏に避暑をかねて多く
の友人たちが集うようになったことで知られており、こ
の城は現在「シューベルティアーデ博物館」として公開
されています。

シューベルティアーデでは、読書会が開かれることもあ
りました。1828年2月にショーバー家で開かれた読書会
ではハイネの「旅の絵」が取り上げられ、それがきっかけ
でシューベルトはハイネの詩を知ることになります。
こうして、歌曲集「白鳥の歌」の後半6曲を形作る「ハイ
ネ歌曲集『帰郷』」が作曲されることになります。

ミスター・ビーンのお気楽ブログ-シューベルティアーデ(4)

また、ジェスチャー・ゲームもよく行われていたようで、出席
者が二組に分かれ、一方が演ずる無言劇の意味をもう一方
が当てるという趣向でした。


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シューベルティアーデのジェスチャー・ゲーム


《今日の1曲》
今日は、ハイネ歌曲集の第5曲(「白鳥の歌」第12曲)


「海辺で(Am Meer》」

です。

シューベルト歌曲の中で、最高傑作の1つと言っても
過言ではない比類なく美しい歌です。

特に第2節の

Der Nebel stieg, das Wasser schwoll,
Die Möwe flog hin und wieder;

霧が立ち上り、潮が満ち、
カモメがあちこちを飛び回っていた。


および、第4節の

Seit jener Stunde verzehrt sich mein Leib,
Die Seele stirbt vor Sehnen;

その時から 僕のからだはやつれ、
魂は憧れの為に死にそうだ。


の部分では、ppのピアノのトレモロが情景の変化と、心
の変化を巧みに表し、この曲に深い陰翳を与えています。

今日もDFDとギューラの歌唱で聴いてみましょう。



Am Meer 海辺で
Das Meer erglänzte weit hinaus
Im letzten Abendscheine;
Wir saßen am einsamen Fischerhaus,
Wir saßen stumm und alleine.


海は広く輝いていた
夕日の 最後の輝きの中で。
僕らは二人っきりで漁師の家にいた
僕らは黙りこんでひっそりと座っていた。


Der Nebel stieg, das Wasser schwoll,
Die Möwe flog hin und wieder;
Aus deinen Auge liebevoll
Fielen die Tränen nieder.


霧が立ち上り、潮が満ち、
カモメがあちこちを飛び回っていた。
君の眼から愛が溢れて
涙が零れ落ちた。


Ich sah sie fallen auf deine Hand,
Und bin aufs Knie gesunken;
Ich hab' von deiner weißen Hand
Die Tränen fortgetrunken.


僕はその涙が君の手に落ちるのを見て
ひざを落とした。
僕は君の真っ白な手から
その涙をすすったんだ。


Seit jener Stunde verzehrt sich mein Leib,
Die Seele stirbt vor Sehnen;
Mich hat das unglücksel'ge Weib
Vergiftet mit ihren Tränen.


その時から 僕のからだはやつれ、
魂は憧れの為に死にそうだ。
僕にこの不幸な女性は
その涙で毒を飲ませたんだ。



フィッシャー=ディスカウ


ギューラ