《シューベルティアーデ③》
シューベルティアーデはウィーン以外でも開かれていて、
特にショーバーの伯父が管財人をつとめていたアッツェ
ンブルク城は、1820年頃から毎年夏に避暑をかねて多く
の友人たちが集うようになったことで知られており、こ
の城は現在「シューベルティアーデ博物館」として公開
されています。
シューベルティアーデでは、読書会が開かれることもあ
りました。1828年2月にショーバー家で開かれた読書会
ではハイネの「旅の絵」が取り上げられ、それがきっかけ
でシューベルトはハイネの詩を知ることになります。
こうして、歌曲集「白鳥の歌」の後半6曲を形作る「ハイ
ネ歌曲集『帰郷』」が作曲されることになります。
また、ジェスチャー・ゲームもよく行われていたようで、出席
者が二組に分かれ、一方が演ずる無言劇の意味をもう一方
が当てるという趣向でした。
シューベルティアーデのジェスチャー・ゲーム
《今日の1曲》
今日は、ハイネ歌曲集の第5曲(「白鳥の歌」第12曲)
「海辺で(Am Meer》」
です。
シューベルト歌曲の中で、最高傑作の1つと言っても
過言ではない比類なく美しい歌です。
特に第2節の
Der Nebel stieg, das Wasser schwoll,
Die Möwe flog hin und wieder;
霧が立ち上り、潮が満ち、
カモメがあちこちを飛び回っていた。
および、第4節の
Seit jener Stunde verzehrt sich mein Leib,
Die Seele stirbt vor Sehnen;
その時から 僕のからだはやつれ、
魂は憧れの為に死にそうだ。
の部分では、ppのピアノのトレモロが情景の変化と、心
の変化を巧みに表し、この曲に深い陰翳を与えています。
今日もDFDとギューラの歌唱で聴いてみましょう。
Am Meer 海辺で
Das Meer erglänzte weit hinaus
Im letzten Abendscheine;
Wir saßen am einsamen Fischerhaus,
Wir saßen stumm und alleine.
海は広く輝いていた
夕日の 最後の輝きの中で。
僕らは二人っきりで漁師の家にいた
僕らは黙りこんでひっそりと座っていた。
Der Nebel stieg, das Wasser schwoll,
Die Möwe flog hin und wieder;
Aus deinen Auge liebevoll
Fielen die Tränen nieder.
霧が立ち上り、潮が満ち、
カモメがあちこちを飛び回っていた。
君の眼から愛が溢れて
涙が零れ落ちた。
Ich sah sie fallen auf deine Hand,
Und bin aufs Knie gesunken;
Ich hab' von deiner weißen Hand
Die Tränen fortgetrunken.
僕はその涙が君の手に落ちるのを見て
ひざを落とした。
僕は君の真っ白な手から
その涙をすすったんだ。
Seit jener Stunde verzehrt sich mein Leib,
Die Seele stirbt vor Sehnen;
Mich hat das unglücksel'ge Weib
Vergiftet mit ihren Tränen.
その時から 僕のからだはやつれ、
魂は憧れの為に死にそうだ。
僕にこの不幸な女性は
その涙で毒を飲ませたんだ。
フィッシャー=ディスカウ
ギューラ