*フィッシャー・ディスカウとシューベルト歌曲(24) -小川の子守歌ー | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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歌曲集「美しい水車屋の娘」もいよいよ最後の曲となりました。

第20曲


「小川の子守歌(Des Baches Wiegenlied)」

です。

緩やかな小川の流れを表すようなゆっくりとしたリズムで、
若者の亡骸を小川の奏でる優しい子守歌の旋律が広い海へ
と運んで行きます。

若者の恋は破れ、一人前の水車職人になるという夢も破れ
ました。
しかし小川に象徴される自然は、あくまで優しく若者に
微笑みかけています。この終曲に見られる優しさと穏や
かさは「冬の旅」の終曲とはまさに対照的です。

思うに、この歌曲集は誰もが経験する青春の終焉を歌った
ものなのです。
小川が若者の亡骸を広く果てしない海に運んで行くとき、
希望と憧れと同時に、にがく苦しい試練にも満ちていた
青春が終わるわけですが、人生はそこで終わるのではな
く、その先に新しく広い世界が広がっていることをこの
終曲は暗示しているように思われます。

確かに青春というものは誰にとっても掛替えのないもの
であり、それが終わることは悲しいことです。
ボクはこの連作歌曲集を通して聴くとき、恥ずかしい話
ですが、この終曲のところで必ず涙が溢れてしまうので
す…


今日は、ボスとリッジの他に、オーストリアのテノール
ヴェルナー・ギューラの歌唱もお聴きください。


Des Baches Wiegenlied 小川の子守歌
Gute Ruh', gute Ruh'!
Tu' die Augen zu!
Wandrer, du müder, du bist zu Haus.
Die Treu' ist hier,
Sollst liegen bei mir,
Bis das Meer will trinken die Bächlein aus.


おやすみ、おやすみ!
目を閉じて!
旅人よ、あなたは疲れ、家に帰って来ました。
誠実がここにはあります。
わたしのもとで横たわりなさい、
海が小川を飲み尽くすまで。


Will betten dich kühl,
Auf weichem Pfühl,
In dem blauen kristallenen Kämmerlein.
Heran, heran,
Was wiegen kann,
Woget und wieget den Knaben mir ein.


あなたを涼しく寝かせましょう、
柔らかい寝床の上で、
青い澄み切った小部屋の中で。
こちらへ、こちらへ、
揺れるものよ、
わたしのもとでこの子を揺らして眠らしておくれ。


Wenn ein Jagdhorn schallt
Aus dem grünen Wald,
Will ich sausen und brausen wohl um dich her,
Blickt nicht hinein,
Blaue Blümelein!
Ihr macht meinem Schläfer die Traume so schwer.


狩りの角笛が
緑の森から鳴り響いたら、
わたしはあなたの周りでざわめき、うなりを上げましょう。
覗き込まないで、
青い花々よ!
わたしのもとで眠る者の夢を重苦しくしてまうから。


Hinweg, hinweg
Von dem Mühlensteg,
Böses Mägdelein, daß ihn dein Schatten nicht weckt!
Wirf mir herein
Dein Tüchlein fein,
Daß ich die Augen ihm halte bedeckt!


去りなさい、去りなさい、
水車小屋の小橋から、
悪い娘よ、この子をおまえの影が起こさないように!
わたしに投げ込むのです、
おまえのハンカチをそっと、
わたしがこの子の眼をしっかりと覆えるように!


Gute Nacht, gute Nacht!
Bis alles wacht,
Schlaf' aus deine Freude, schlaf' aus dein Leid!
Der Vollmond steigt,
Der Nebel weicht,
Und der Himmel da droben, wie ist er so weit!


おやすみなさい、おやすみなさい!
すべてが目覚めるその時まで、
喜びから眠りについて、苦しみから眠りについて!
満月が昇り、
霧が晴れると、
上には空が、何て広々としてることでしょう!


ボストリッジ(ピアノ:内田光子)


ヴェルナー・ギューラ(ピアノ:ヤン・シュルツ)