*フィッシャー・ディスカウのシューベルト歌曲(14) ー朝の挨拶、涙の雨ー* | ミスター・ビーンのお気楽ブログ

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好きな音楽の話題を中心に、気の向くままに書いていきます。

寒い日が続きますねガーン 今年はどうやら厳冬のようです。
皆様、体調など崩さぬようお気をつけ下さい。

さて、このブログ、だんだん「看板に偽りありっ」って感じに
なってきて申し訳ありません_(_^_)_

というのは、ディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウ
(DFD)の「水車屋」をyoutubeで懸命に探してるんですが、
全盛時代の名唱がなかなか見つからないのです!

そこで、「水車屋」に限っては、主に今注目のテノール、
ボストリッジの歌唱をアップすることにしました。
内田光子さんの伴奏で歌うボストリッジの歌唱、なかなか
聴きごたえがありますね!
天性の美声に加えて、その若々しく情熱的な歌いぶりには
思わず引き込まれてしまいます。youtubeには全曲アップさ
れていますので、興味の有る方は是非ご覧下さい。

今日は2曲アップしますが、最初は「水車屋」の第8曲、


「朝の挨拶(Morgengruß)」

です。
4節の単純素朴な有節歌曲ですが、なかなか心を開かない
娘への若者の不安と戸惑いがよく表れていると思います。


Morgengruß 朝の挨拶
Guten Morgen, schöne Müllerin,
Wo steckst du gleich das Köpfchen hin,
Als wär dir was geschehen?
Verdrießt dich denn mein Gruß so schwer?
Verstört dich denn mein Blick so sehr?
So muß ich wieder gehen.


おはよう、美しい水車小屋のお嬢さん。
すぐさま、どこへ顔を向けてしまうの?
まるで何か起こったように。
僕の挨拶が君にはそんなに嫌なの?
僕の視線が君にはそんなにわずらわしいの?
それなら僕はまた旅立たなければならない。


O laß mich nur von ferne stehn,
Nach deinem lieben Fenster sehn,
Von ferne, ganz von ferne!
Du blondes Köpfchen komm hervor,
Hervor aus eurem runden Tor
Ihr blauen Morgensterne!


どうか僕が遠い所から
君のかわいい窓を覗くのを許しておくれ。
遠くから、本当に遠くからだから!
ブロンドの頭よ、そこから出ておいで、
真ん丸な瞳から出ておいで、
青い朝の星よ!


Ihr schlummertrunknen Äugelein,
Ihr taubetrübten Blümelein,
Was scheuet ihr die Sonne?
Hat es die Nacht so gut gemeint,
Daß ihr euch schließt und bückt und weint
Nach ihrer stillen Wonne?


ねぼけた、かわいい眼よ
露にぬれた小さい花よ
どうして陽の光を避けるの?
夜がとても気持ち良かったから
目を閉じて、かがみ込んで泣いているの?
夜のひそかな楽しみを懐かしんで。


Nun schüttelt ab der Traume Flor
Und hebt euch frisch und frei empor
In Gottes hellen Morgen!
Die Lerche wirbelt in der Luft,
Und aus dem tiefen Herzen ruft
Die Liebe Leid und Sorgen.


さあ、夢のベールを払い落として
爽やかに、のびのびと身を起こそう!
神様のおられる明るい朝に。
雲雀は空を舞い、
心の奥底からは
愛が苦悩と不安をうったえている。


朝の挨拶


そして、次は第10曲の

「涙の雨(Tränenregen)」

です。

これも4節の有節歌曲で、全曲で最も美しい歌の
1つですね。

「そして、小川の底に沈んで
天全体が輝いていた。
それは僕も一緒に
小川の底へと引きずり込もうとしているようだった。」

「雲と星の上では
小川が明るくサラサラと流れていて、
歌とせせらぎの音で呼んでいた、
「友よ、友よ、こっちにおいで」と。」

ここに、若者の悲しい運命がそれとなく暗示され
若者は思わず涙を流します(この部分は短調になります)。
その涙が小川の水面を乱しますが、薄情な娘はただ
の雨と思い、若者を置いてさっさと家に帰ってしまい
ます。


Tränenregen 涙の雨
Wir saßen so traulich beisammen
Im kühlen Erlendach,
Wir schauten so traulich zusammen
Hinab in den rieselnden Bach.


僕たちは仲良く座っていた
涼しいはんの木の木陰に。
僕たちは仲良く眺めていた
下をせせらぎ流れる小川を。


Der Mond war auch gekommen,
Die Sternlein hinterdrein,
Und schauten so traulich zusammen
In den silbernen Spiegel hinein.


月ももう昇って、
星たちもつられて出てきて、
そして仲良く眺めていた
銀色の水面を。


Ich sah nach keinem Monde,
Nach keinem Sternenschein,
Ich schaute nach ihrem Bilde,
Nach ihrem Auge allein.


僕は月を見ず、
星たちも見なかった。
僕はただ君だけを見ていたんだ、
ただ君の瞳だけを。


Und sahe sie nicken und blicken
Herauf aus dem seligen Bach,
Die Blümlein am Ufer, die blauen,
Sie nickten und blickten ihr nach.


そして清らかな小川の中の彼女が、
ウトウトと揺れ、また空を見上げるのを見ていた。
岸辺の青い花々も
彼女をまねるように、風に揺れ、空を見上げていた。


Und in den Bach versunken
Der ganze Himmel schien
Und wollte mich mit hinunter
In seine Tiefe ziehn.


そして、小川の底に沈んで
天全体が輝いていた。
それは僕も一緒に
小川の底へと引きずり込もうとしているようだった。


Und über den Wolken und Sternen
Da rieselte munter der Bach
Und rief mit Singen und Klingen:
Geselle, Geselle, mir nach!


雲と星の上では
小川が明るくサラサラと流れていて、
歌とせせらぎの音で呼んでいた、
「友よ、友よ、こっちにおいで」と。


Da gingen die Augen mir über,
Da ward es im Spiegel so kraus,
Sie sprach : es kommt ein Regen,
Ade, ich geh nach Haus.


その時僕の目から涙があふれ、
水面に波が立った。
彼女は言ったんだ。「雨が降ってきたわね。
さよなら、わたし家に帰るわ。」


涙の雨