「夏休みだからといって、遊びすぎないようにねっ」
月並みの注意事項を適当なトーンで言い放つ担任はそそくさと教室をでていった。
私もふくめ下校の生徒たちはうだる暑さの中でも、明日からの休みに何かしらの期待をもったほころぶ顔で帰路は足取りが軽そうにみえる。
「リコちゃー・・ん」
テンションの低い声が聞こえてきた。後ろから追いかけてきたのかな・・・と思いきや真横に声の主。
声の主はマルコ、マルと呼んでる隣のクラスだけど幼馴染みで帰りによく会う。
「マルも終わったの?」
「うん、リコちゃんのクラス早かったから急いできたよ。」
「え?なんで」
と切り返した私の表情を伺うマルコは、言いずらそうにきりだした。
「私さー原チャの免許取りに行こうと思ってるんだけどー・・・一緒にいかない?」
「なにそれ?」と私。
「原動機付自転車?ようは50CCの免許だよぉ、しらない?」
なぜか嬉しそうに得意げな表情のマル。
「へー・・・」
まったく興味無い関心もない聞き流す姿勢の私にマルは間髪入れずに続ける・・・。
「原チャリ免許はね、16歳でとれるんだよ。私は6月に16になったから免許取り行こうと思っててさー、ふとリコちゃんもうすぐ誕生日じゃんと・・・誘ってみよかなって。」
「あ・・・そうなのね」
まったく興味無い関心もない聞き流したい私のとりあえずの返答にマルはなぜかテンションが上がった・・。
「免許とれば自転車にたよらずで、いろいろなとこに行けるよ!絶対便利だし楽しいと思うよ。それにスクーターとかのバイクはいろいろ種類あるし欲しくなるはず!あ・・それと免許証は身分証明書代わりになるよ!」
思いつくメリットを連ねたマルを横目に私は最後の身分証明書のところだけ気になったので・・・
「レンタルビデオ屋さんとか、ショップの会員的なものに便利だねー。」
一生懸命のマルに哀れみの同調として返した感想。
「でしょ!絶対便利だし将来車の免許とか取るときに何かしらの恩恵的なものがあるはずよ!」
すでに何らかの勧誘になってるマル・・・引く気はないようだ。
「難しいんじゃないの?そういうのって試験とか・・・」
ネガティブ返しであきらめてもらおうと私。
「ふふふ、それがね裏講習というものを受ければほぼ受かるらしいよ!」
マルコは絶対に私を勧誘するための準備をしてきてる・・・がんばるなぁ
「裏講習って・・・なんかすごいね・・・すごくお金かかりそう・・。」
私のネガティブ返し!
「大丈夫・・・計算してきたら1万円あればオツリくるよ!!」
マルコと私は同じ場所でバイトもしている・・・1万円は計算の内なのね。
「ようするにマルが一人じゃ心細いから一緒に行こうって感じで誘ってるのね?」
熱いマルコに打ち水的な一言・・・ちょっといじわるかな。
「・・・うん。持ってても損するものじゃないし・・・。」
テンション下がって目が泳ぐマル。
「わかったよぉ、行こう!とりあえず取ってみよう!ソレ」
「え!やったー嬉しい!さすがリコちゃん!」
まさに満面の笑みのマル、口下手の幼馴染が必死に頑張って勝ち取った私の同意・・・。
とりあえず取ってみよう・・・身分証明書的なソレ。
それは1990年の高校一年、夏休み前の幼馴染みとのやりとりから始まった・・・・。
